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「きみはこの世界のことについて詳しいの?」とぼくは言った。「そうだね。たぶん、きみよりは詳しいね」と古代魚は言った。「いくつか質問をしてもいい?」とぼくは言った。「いいよ」と古代魚は言った。「こうしてきみと『また』出会えたんだからね、彗星までの道中、おしゃべりくらいしていたいよね」と古代魚は言った。「また?」とぼくは言った。その言葉には、古代魚は微笑むだけでなにも答えてはくれなかった。「ねえ古代魚。ここはいったいどこなんだろう? ぼくはどうしてこんな場所にいるんだろう?」とぼくは古代魚に質問をした。
「ここは暗い海の底さ。本来、この場所では人間はみんな魚になるんだ。いろんな形の魚にね。魚になって暗い海の中を泳ぎ、白色の彗星の元まで移動して、そのまま白色の彗星と一緒に遠い遠い場所にまで旅に出る。そんな始まりの場所がこの場所さ」
「始まりの場所?」
「うん。始まりと、終わりのすれ違う場所」と古代魚は言った。「終わりってなに?」とぼくは言った。
「終わりは終わりさ。世界が終わるってことだよ」と古代魚は言った。「でも、ぼくは『ここで世界を見つけたよ』」とぼくは言った。すると古代魚はきょとんというような表情をして、それから(本当に嬉しそうな顔で)にっこりと微笑んだ。




