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黒猫の子猫は再び移動を始めた。
ぼくはその黒猫の子猫を追いかけて雪の中を歩いた。
すると、ある地点で、黒猫の子猫は動きを止めて、後ろを振り返ってぼくを見た。
そして「にゃー」と一度鳴いたあとで、まるで最初からそこに『黒猫の子猫』なんていなかったかのように、だんだんとその姿が透明になり、やがて黒猫の子猫はこの世界から、吹く冷たい冬の風に溶けるようにして、消えていった。
すると、ずっと吹いていた冷たい冬の風は(なぜかきゅうに)吹かなくなった。
世界は無風になった。(神様からのほんの少しのごほうびなのだろうか)
ぼくが黒猫の子猫の消えた場所までたどり着くと、そこは一面が真っ白な世界だった。空を見上げると、宇宙のように真っ暗で、とっても、とっても高い場所から、ちらちらと綺麗な白い雪がたくさん、たくさん降っていた。
……疲れた。
と、ぼくは思った。
ぼくはその場所にゆっくりと、体を丸くして、座り込んだ。
ぼくは、ぼくが思っている以上に、とても疲れているようだった。
……そうか。ここがぼくの夢の終わりの場所か。
そんなことをぼくは思った。
ぼくは、ゆっくりと目を閉じた。




