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黒猫の子猫は病院の外に出た。
ぼくは階段のところから移動して、病院の待合室を抜けて、さっきまで黒猫の子猫がいた玄関の前のところまで移動した。
そして、開いているドアを抜けて、病院の外に黒猫の子猫を追って出て行こうとした。
すると開いているドアのところから、……びゅーと、とても冷たくて強い風が吹いた。
……ぼくはその風のあまりの冷たさに、その透明な風の中に、『死というものの存在』を強く感じた。
白い雪が、その風の中で、まるで散るたくさんの花びらのように舞っていた。
ぼくは凍えるような冬の寒さで一瞬、体を動かすことができなくなった。
でも、ぼくはその風に負けずに、開いているドアを通って病院の外に出た。
病院の外は真っ暗だった。
雪の降る闇の中に光る二つの緑色の瞳が、遠くからぼくのことをじっと見つめていた。
ぼくは雪の中を歩き始めた。
この寒さの中を黒猫の子猫のいるところまで歩いていけるか心配だったけど、病院の外を歩き始めると、なんだかもう寒すぎて体の感覚はほとんど麻痺してしまったようで、あまり寒さなどは感じないようになっていた。だから四本の足の裏も、もう冷たいとは感じなかった。




