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 そこは冷たい廊下とは違いとても暖かい場所だった。赤々と燃える炎を入れた鉄製のストーブと、天井の裸電球の明かりが板張りのぼろぼろの部屋の中を照らしている。ところどころに人の顔のように見える木目の入った薄気味悪い天井に、歩くたびにぎいぎいと変な足音のする古びた板張りの床。吹く風によってかたかたと音を立てる古い造りの窓。床の上には四角い形をした古い木製の机が一つと、その脇に小さな木製の丸椅子が一つ置いてあった。

 ストーブ脇の壁には、ところどころに蜘蛛の巣のはった本棚があり、そこには一冊の古い本が置かれていた。本棚にある本はその一冊だけで、あとは全部空っぽだった。その本の背表紙は空白で、なにも題名が書かれていなかった。

 部屋の扉の横にはこの小さな部屋には似つかわしくない大きな古い柱時計が置いてあった。時計の針は十二の数字を少し回った辺りを指し示している。柱時計の隣には木製の棚があり、その脇の壁際には小さな流し台があって、その壁には曇った鏡が取り付けられていて、床の上には台座があり、そして流し台の上にはコップと歯ブラシが置いてあった。そしてぐるっと回って扉の反対側に瞳を向けると、そこには窓のある壁があって、その壁にぺったりとくっつくようにして、真っ白なベットが一つ置かれていた。それがこの部屋のすべてだった。

 誰もいない部屋の中。ぼくは一人で、暖かい炎の灯るストーブの前にいて、そこで冷たくなった体を一生懸命になって温めていた。

 すると背後でがらっという音がした。部屋の扉が開いて、そこから二人の人間が部屋の中に入ってきた。一人はぼくを拾ってくれた女の子。もう一人は白い服を着た大人の女性だった。

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