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 その自分そっくりの黒猫の姿を見たとき、ぼくは、『自分が何者であって、そして、なぜ自分が風という女の子と出会ったのか』、その理由がわかった気がした。

 ……黒猫。

 それは不吉な存在。

 黒猫の子猫は緑色の二つの瞳でじっとぼくのことをドアの隙間のところから見つめていた。

 ぼくはその黒猫の子猫をじっと見つめ返した。

 すると黒猫の子猫はそのドアの隙間から、廊下の暗闇に、まるでその闇の中に溶けるようにして、移動した。

 ぼくにはその黒猫の子猫の行動がまるでぼくに向かって「ついてきなよ」と言っているように見えた。

 ぼくはその黒猫の子猫について行こうとした。

 ぼくは最後に眠っている風の顔を見つめた。

 死体のような顔ではなく、『生きている人間の顔』をしている風の顔。

 そんな風に向かってぼくは「……さようなら。ふう」と心の中でつぶやいた。

 ぼくは猫になって、人間の言葉を失ってしまったことをこのとき、少しだけ後悔した。

(……でも、人生に完璧はないのだ。これくらいの後悔はむしろ、幸いと捉えなければいけないだろう)

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