表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/400

41

 風は昨日と同じように慎重に開いた出入り口の扉から暗い廊下にその小さな顔だけを出して、きょろきょろとあたりを見渡して誰もいないことの確認をした。それが終わると冷たい廊下に出て、両手を使って慎重に病室の扉を閉めた。相変わらず、がちゃという音はしたが、その音が消えてしまうと、闇の中に残ったものは外に吹く風の音だけになった。廊下は冷たい空気で満たされていた。ぼくはいつの間にか、ぼくの指定席となった風の小さな子供用の真っ白なコートの中にいて、その胸元のあたりから顔だけを外に出していた。外の冷たい空気にぼくはぶるっとその体を震わせた。すると風はなにも言わずにコートの上からぼくの体を一度、両手でぎゅっと抱きしめてくれた。

 ぼくはその風の行動がとても嬉しかったのだけど、そのあとで「猫ちゃんはあったかいね」と風が言ったので、ぼくを抱きしめることは風にとっても意味のある行為だったようだ。

 暗い夜の中を病院の廊下の壁に手をつきながら、風はゆっくりとした足取りで進んでいった。病院の廊下は相変わらず完全に闇に閉ざされていた。そしてその廊下は、やはりとても長く、まるで永遠に闇の中に続いているかのように僕は感じた。

 ぎい……、ぎい……、という風の足音は、……びゅー、という風の音にすぐにかき消されていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ