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落とせる。ハラの頭の中でなにかが弾けた。(それはなんだろう? わからないけど、確かになにかが弾けたのがわかった)ハラは弾丸を発射する。当たる。しかしその弾丸を赤い死神はかわした。その動きはハラの予測を凌駕している。ハラは驚く。そして笑った。
赤い死神は弾丸を撃たない。二機の飛行機は空の中ですれ違った。コクピットにいる相手の姿が目視できるくらい距離が近い。黒色の飛行機の中には赤いパイロット服をきた少女がいる。少女は確かに笑っていた。
どうして撃ってこないの? 弾が尽きたのか? そこまで考えたときにハラは自分が弾丸を消耗しすぎていることに気がついた。
燃料もかなり消費している。
ハラはようやく赤い死神の考えに気がついた。
弾切れと燃料切れを狙ってたんだ。あざといな。飛行機乗りの腕がいいんだから、まっすぐ正面からぶつかってくればいいのに。
上空で旋回した赤い死神は下降しながら今度は弾丸を発射した。
ハラは上昇せずに海面に向けて降下する。距離を取り、赤い死神の弾丸をかわす。
「援護します。白狐」
そんな通信が聞こえる。
「援護感謝する」
ハラは言う。
直後高速でハラの飛行機に接近してくる一機の飛行機が見えた。味方のエース機。その飛行機を確認すると赤い死神は深追いをせずに侵攻方向を変えて、戦場を脱出した。
……、もし味方のエース機の援護がなかったら、私は赤い死神に撃墜されていた、と味方のエース機を見ながら、ハラは思った。