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28 誰にも言えないあなたの夢が、いつか必ず叶いますように。

 誰にも言えないあなたの夢が、いつか必ず叶いますように。


「やあ、こんにちは」

「こんにちは」

 ぼくは言った。

「ようやく、気がついてくれたんだね」気がついた? いったいなんのことを言っているのだろう? ぼくは疑問に思った。

「きみは意地っ張りだね」

「意地っ張り?」

「意地っ張りだよ。ずっと、ずっと我慢してきたんだからね」その声はどこか笑みを含んでいた。ぼくは馬鹿にされたような気がして、その声にむっとした。

「ぼくは我慢なんてしていない」そうだ。ぼくは我慢なんてしていない。

「ふふ、もしかして、怒った?」

「怒ってない」

「そうかな? ぼくには怒っているように見えるけどな?」

 ぼくはもう一度「怒ってない」と少し強い調子で声に言った。

「わかったよ。そういうことにしておくよ。君は怒っていない。今はそれでいいんだね」

 声は明らかにぼくをからかっていた。ぼくは声のことが少し嫌いになった。だから言葉をしゃべることをやめた。ぼくはずっと黙っていることにした。

「ぼくはきみとお話をしにきたんだよ」ぼくは言葉をしゃべらなかった。

「これはとても大切なお話なんだ。君にとっても、もちろん、ぼくにとってもね」ぼくは横目でちらっと声の様子を伺った。声はじっと、真剣な眼差しでぼくを見ていた。声の目はとても澄んでいて、綺麗で、どこか優しい感じがした。

「ぼくは君が大好きなんだ」ぼくは黙っている。

「きみはぼくのことが嫌いなの?」

「好きでも、嫌いでもないよ」とぼくは声に言った。声はぼくが会話をしたことで、とても嬉しそうな顔をした。

「世界を救ってみないかい?」

「世界?」

「そう。世界」と声は言った。

「救わない」とぼくは言った。

「どうして?」

「この世界が嫌いだから」それは本当のことだった。ぼくは世界が嫌いだった。

「きみはこの世界が本当に嫌いなのかい?」

「嫌いだ」とぼくは答えた。

「この世界のどこが嫌いなんだい?」

「全部」とぼくは答えた。

 すると声は優しく微笑んで、それからそっと空を見上げた。

「ほら、空を見てごらん」

「空?」ぼくは声の言う通りに空を見上げた。するとそこには、いつの間にか満天の星空が広がっていた。

「綺麗だね」と声は言った。

「うん」とぼくは答えた。

 その風景は本当に美しかった。たくさんの星と少しだけ青みがかった透明な夜がそこには広がっていた。それはきっと冬の夜だ。星座の位置と形で、ぼくにはそれがわかった。

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