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「うん。わかった」
と言ったときにはとことことファニーファニーは小さく子供みたいに海沿いの道を港に向かって走り始めていた。
ぼくは危ないので、少し急いでファニーファニーに追いつくと、走ることをやめさせて、二人でゆっくりと海を見ながら歩いて、貿易港のところまで移動をした。
貿易港の近くにいた船乗りの人に話を聞くと、(慌てていたから、さぼっていたのかもしれない)船に乗らなければ、(それから、お仕事の邪魔にならなければ)近くまで行って船を見ていいと言った。
ぼくはファニーファニーと一緒に大きな貿易船の隣にまで歩いて行った。
貿易船は巨大な帆を持っていて、たくさんの船乗りさんたちが忙しそうに荷物の積み下ろしのお仕事をしていた。(ロープがとっても太くて驚いた)
いろんなところから、大声で、罵声のような声も聞こえてくる。
ファニーファニーは口を大きく開けて、まるで空を見上げるようにして、貿易船の巨大な帆をじっと見つめていた。
そんなファニーファニーを見て、ぼくはくすくすとばれないように隠れて笑った。
それから少しして、どんなに邪魔にならないようにしていても、どうしても邪魔になってしまうので、(なんだも邪魔だと言われた)ぼくはファニーファニーと一緒に貿易港をあとにした。
そのとき一隻の貿易船が貿易港を出発するところだった。これからあの大きな船は大海を超えて、ぼくの知らない違う大陸まで行くのだろう。……、何ヶ月も時間をかけて。とても大きな危険に身を晒しながら。
「船にはなにをあんなにたくさん積んでいるのかな?」とファニーファニーはまだ港のほうを何度も振り返りながら、歩いている途中でぼくに言った。
「実際にはわからないけど、たぶん、海を渡ってきた香辛料じゃないかな? それと絹とか、絨毯とか、お茶とか、あとは、……、なんだろう? とにかくそんな貿易品だよ。それと食料と水かな? きっとね」とぼくは言った。
そんなぼくのあやしい貿易船の知識をふんふんと興味津々な顔でファニーファニーは聞いていた。
それから、ぼくはギルドに行ってみることにした。
(今の白い月兎の手配書がどうなっているかを見るためだった)
もちろん、手配書に書かれているファニーファニーには、少しの間、泊まっている宿の部屋で、待っていてもらうことにした。(ファニーファニーはぼくもいきたいとだだをこねたけど、流石にだめだときっぱりとぼくは言った。するとファニーファニーはへそを曲げてしまって、ぼくとしばらくの間、口を聞いてくれなくなった)