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ドナが目を覚ますと、そこはとても不思議なところだった。
そこにはドナがずっと見たかった青色の空が広がっている。
大地にはちゃんと色があって、緑色の草原が永遠に続いていた。
世界には、優しい風が吹いている。
寒くもなくて、お昼寝がしたくなるくらい、あったかい。
「綺麗なところ」と思わずドナはそんなことを吹き抜ける風の中で言った。
ぐるる、と聞き慣れた声がした。
みるとそこにはドミノがいた。
「ドミノ!」
とドナが嬉しそうか声を出すと、ドミノはいつものようにドナに体をくっつけて、ぺろぺろと赤い舌でドナの白いほっぺたを舐めた。
「ドミノ。くすぐったいよ」と笑いながらドナは言った。
青色の空と、緑の大地と、優しい風。
ここはどこだろう?
ねえ、ドミノ。
ここはどこなの?
あなたが私をこんなに素敵なところに連れてきてくれたの?
とそんなことをドナは思った。
言葉を持たないドミノはなにも言ってくれない。
ただ優しい青色の空のような瞳で、ドナのことを見ているだけだった。
「ドミノ。これからずっと、ずっと一緒にいようね。二人だけで。ずっと一緒にいて、私たち、幸せになろうね」とドナはドミノを抱きしめながら、涙を流してそう言った。
すると、そのドナの涙がドミノの顔に落っこちて、そして、その涙の落っこちたところからだんだんとドミノの体の全部に広がっていくようにして、大きな白い光が輝き始めた。
ドナは驚いた。
そして、その眩しい白い光の中で、白い子供の狼だったドミノの体が『人間の子供』の姿に変わっていった。
ドナの目の前で、人間の子供になったドミノを見て、ドナはまた、とっても、とっても驚いた。
なぜならその姿は、『ドナのよく知っている子供の顔と形をしていた』からだった。
そんなドミノを見て、ドナは思わず、嬉しくて、嬉しくて、にっこりと本当に幸せそうな顔で笑った。
悠久の眠り ゆうきゅうのねむり 終わり