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 ……、ゆっくりと、ゆっくりと、風は暗闇の中を動き始めた。最初は適当に進んでいるのかと思っていたのだけど、どうやら風は手で病院の壁に触れながら廊下を移動しているようだった。迷いも感じない。お散歩のコースもある程度決まっているのだろう。

 しばらく廊下を進むと、びゅー、という音がして、冷たい冬の風がぼくたちの横を再び通り過ぎていった。それは先程の風と同様にとても信じられないくらいに冷たい冬の風だった。ぼくはまた微かな死への恐怖を感じ、ぶるっと体を震わせてしまったのだけど、風は「うぅー、寒いね猫ちゃん」となぜかとても楽しそうにそう言った。

 風はゆっくりと、ゆっくりと真っ暗な廊下を進んで行く。

 しかし進んでも進んでも、その先には闇が広がっているだけだった。風の移動がゆっくりしているということもあるのだろうけど、病院の真っ暗な廊下が、ぼくにはやけに長いように感じられた。闇はまるで永遠に続いているかのようだった。

 しばらくすると次第に闇にぼくの目が慣れてきた。それでもぼくたちの周辺にはうっすらと廊下の壁が見えるだけだった。……ぼくは嫌な閉塞感を感じた。ここはとても不気味な場所だった。まるでこの道が『死者の国』にでも通じているかのようにすら、……ぼくには思えた。

「真っ暗だね猫ちゃん」

 ぎし……、ぎし……と、風の足音だけが闇の中に響いている。おんぼろなのは風の病室だけではないようで、真っ暗な廊下の床は歩くたびに、どうしても、ぎし……、という音が鳴ってしまうようだ。

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