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 四十歳になったころ、愛に教師をやってみないかというお話がきた。

 少し迷ったのだけど、創のご両親がさとを見てくれるというし、愛の両親も協力してくれるみたいだし、創も(このころにはもう夢を叶えて一人前の研究者になっていた)やってみたらいいよ、といってくれたので、愛はもう一度、本当に久しぶりに教師の仕事をすることにした。(さとも喜んでくれた。お母さんがんばってと言ってくれた。思わず泣いちゃった)

 今度の学校は名門の女子高だった。それは別に愛が女子高を選んだわけではなくて、愛に教師をしないかとお話をくれた人というのがその名門女子高の校長先生だったからだ。(愛が教師をしていたときに教え子の生徒と結婚をしたから、という理由でないのだ。その校長先生は素敵な女性の先生で愛の恩師でもあった人だ)

 最初は緊張したけど、すぐになれた。

 教師の仕事は学生時代からの夢だったし、実際にやってもいたから、あらためて生徒たちの前に立って授業をするのはすごく楽しかった。

 それから一年くらいたったころ。

 いつものように愛が教師の仕事をしていると、一人の女子生徒が愛のところにやってきた。なにやらとても大切な相談があるらしい。

 それでその大人しそうで真面目なかわいい女子生徒の話を聞いてみると、(なんとなく雰囲気が出会ったころの創ににているような気がした)それはまあ、簡単に言うと恋愛の相談だった。(たぶんそうかなとは思った)

 その女子生徒は恋をしているらしい。

 それも、この女子高で教師をしている男性に恋をしているというのだった。(つまり、愛の同僚の先生だった)その話を聞いて、愛はいつの時代もこういうことはよくあるのものなのだなと思った。(ちょっとだけその女子生徒に隠れて、くすくすと笑ってしまった)

 その女子生徒は愛がずっと前に違う学校で教師をしていたころにある生徒と恋人になって、結婚をしたから、この恋の相談を愛にしてくれた、というわけではなかった。女子生徒はそんな愛のことは知らずに普通のこの女子高で一番信頼をしている教師として、愛にこっそりと大切な相談をしにきてくれたのだった。(そのことは素直にうれしかった)

「先生。生徒と教師が恋をしてはいけないのでしょうか?」

 と、とても真剣な顔をして、(まるでこのままだと世界が終わってしまいそうな感じだった)その女子生徒は愛に言った。

 そんな真面目な女子生徒の真剣な思いのこもった言葉を聞いて、愛は、さて、私はこの女子生徒になんて言ってあげるのが教師として、あるいは大人として正しいことなのかな? とゆっくりと時間をかけて、考え始めた。(別室で二人分のコーヒーも淹れていた)

 自分と創との今までの慌ただしくもあり、幸せでもあった人生をゆっくりと振り返るようにして思い出しながら。


 あなたに会えて本当によかった。


 そっと、ふれあうように 終わり

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