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 高校三年生になっても松に恋人はいなかった。このころになると、みんな(笹も)松は高校生のときには恋人は欲しいと思っていないのだと思うようになった。実際にそうだったのかもしれない。松はみんなと一緒に勉強したり、遊んだり、文化祭とか体育祭とか行事を楽しんだり、それですごく幸せそうだった。

 笹は高校生の間、松と友達になってから、松にお願いをして、絵のモデルをしてもらっていた。そして笹は高校生の卒業制作の作品として『松 まつ』を描き上げた。その絵は本当にとてもいい絵だった。(笹がそう思っているだけではなくて、みんなの評判もよくて、賞もとることができた)

 笹が松のことを好きだということはけっこう二人の友達の間では有名な話だったので、その松 まつの絵からは笹の松への思いが溢れんばかりに込められていることがわかった。(そういう自分の感情を隠さずに、むしろ作品の個性にすることが笹の絵の作風だった。喜び、とか、悲しみ、とか、恋、とか、そういう感情をまっすぐにありったけ表現した。そうすることが『一番正しいこと』だと笹は思っていた)

 笹は絵の天才ではなかったけど、美術大学になんとか合格することができた。(それは松のおかげだと笹は思った)

 松は大学を受験して志望校に受かった。(とても有名な頭のいい大学だった)

 そして、二人は別々の大学に進むことになって、今までのようにずっと一緒にいることができなくなった。

 高校の卒業式の日。最後のお別れのときに、松はずっと泣いていた。笹は泣いている松は苦手だってので、なんとか松にいつものように明るい顔で(松 まつの絵の中のように)笑ってい欲しいと思ったのだけど、どんなことを言っても無理だった。

 だからしょうがなく最後に「結婚しない?」と言ってみた。すると松は泣きながら「……、別にいいよ」と笹に言った。

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