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兎は虎と一緒に自転車を押して帰った。(めんどくさかったから虎と同じように、兎は水着は着たままで、その上から制服を着ていた)久しぶりに海で思いっきり泳いですっきりした。あのあとの虎はずっといつもの明るくて元気な虎のままだった。だから兎は私もいつもの私になろうと思った。(そうしていることも、途中で楽しかったから忘れちゃったけど)
「ねえ、虎」と兎は言った。
真っ赤な夕焼けの空は、今はもう、日が沈んでしまって、だんだんと暗くなり始めている。
「うん。なに? 兎」と駄菓子屋さんで買ったソーダ味のアイスクリームを食べながら虎は言う。
「相談があるんだけどさ、今度、聞いてくれる?」と虎を見て兎は言った。
すると虎は「もちろん。いいよ。私たち友達じゃん」といつもの顔でそう言った。
「ありがとう。虎」とにっこりと笑って兎は言った。
それから、我慢していたのだけど、兎は虎の前で泣いてしまった。虎はそんな兎のことを「よしよし」と言って頭を優しく撫でながら、抱きしめてくれた。
虎に子供みたいに頭を撫でられながら、兎は虎と出会えて、虎と友達になれて、本当に良かったと思った。