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「この喫茶店はさ、なんだか少し変わった名前をしているよね」と笑顔で君は言った。
「うん。確かに少しだけ変わってる」と私は言った。
「恋する火星の家出か。もしかしたら、ずっと笑わない水星の気持ち、とかさ、あとはそうだな、真面目な木星の隠している君への思い、とかさ。金星が長い髪を切ったのはどうして? みたいな、そんな名前のお店がどこかにあるのかもしれないね」と楽しそうに笑って君は言った。
そう言う空想は私もしていたので、私はすこしだけ恥ずかしくなった。(子供っぽい月は迷子になった、とか、輪っかをなくした土星の涙はどこ? とか考えてた)
「お待たせしました」と言って店員さんがチョコレートパフェを持ってきてくれた。
「美味しそう」と嬉しそうな顔で君は言って、大盛りのチョコレートパフェを細長い銀色のスプーンで君は食べ始めた。痩せるために食事を我慢している私の目の前で。ぱくぱくと君はチョコレートパフェを美味しそうな顔で食べていた。(私のお腹は小さく、ぐーと鳴った。でもいいのだ。痩せるから)