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 しばらくすると、こんこん、という音がまた聞こえてきた。

 扉が開いて、そこからさっき病室を出て行ったばかりの冬子さんが顔を出した。

「おはよう、風ちゃん」

「おはようございます。秋子さん」

 風の言葉を聞いて、ぼくはその女性が冬子さんではなくて秋子さんだということがわかった。秋子さんは風だけでなく、ぼくにもとても優しい表情を向けてくれたので、確かにこの人は秋子さんなのだろう。秋子さんはその手におぼんを持っていた。秋子さんは病室の中に入ってくると、そのおぼんの上にのっていたお皿を机の上に丁寧な仕草で置いていった。

 丸いパンが二つ乗っているお皿。その丸いパンにつけるためのジャムとバターが一つずつ。白い湯気の出ている暖かい野菜のスープ。温野菜のサラダ。美味しそうなミートボール。そしてミルクの瓶が二つ(これは、一つはぼくの分だった)と透明なガラスのコップが一つ、そしてからっぽのお皿が一つ。

 それらはどうやら風とぼくの食事のようだった(その食事を見て、まるで小学校の給食のようだとぼくは思った)。秋子さんはそれらを机の上に並べ終わると床の上に置かれたままになっていたミルクの空き瓶と空っぽのお皿を手にとってそれをおぼんの上にのせた。

「大麦先生、猫ちゃんと友達になっていいって許可してくれた?」

「はい。許可してくれました」

「うん。よかったね、風ちゃん」

「はい。ありがとうございます。秋子さん」

 そんな会話を終えると、秋子さんは笑い、ぼくの頭を一度撫でてから、風の病室を出て行った。秋子さんがいなくなると、風はベットからスリッパの上に降りてそれを履いた。そして机の前まで移動して小さな丸椅子の上に腰を下ろした。ぼくは机の上の空いている空間目掛けてジャンプをした。多少、食器が揺れたが、問題なくぼくは机の上に飛び移ることができた。場所はちょうど風の反対側になる。風はぼくが落ち着くのを見て、ミルクの瓶を開け、それを空っぽのお皿の中に注いでくれた。

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