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129 ふとっちょな小鳥 ……、眠れないの?

 ふとっちょな小鳥


 ……、眠れないの?


 とんとんと初めて見るドアを叩いてから、「こんにちは」と小さな声で言った。

 でも、誰もその古い木のドアを開けてはくれなかった。どうしよう。そう思って、わたしはその開かないドアの前であたりをきょろきょろと見まわしたり、ドアの近くの地面の上を少しだけうろうろと歩いたりした。でも、その間もやっぱり古い木のドアは開かなかった。わたしはなんだかすごくお家に帰りたくなった。でも、帰る場所なんてもうないのだ。わたしはもう一度とんとんと古い木のドアをノックして、「こんにちは。誰かいますか?」とさっきよりは少しだけ大きな声で言った。でも、やっぱり、しばらくの間、そのまま待っていてもドアは開いたりはしなかった。物音も、話し声も聞こえない。この小さな家の中には誰も人がいないように思えた。もしかしたら、留守なのかもしれない。そう思って、わたしは大きな荷物を持ったままで、小さな家の周りを一度だけぐるっと歩いて見て回ることにした。なんだかとってもどきどきする。その小さな家は真っ白な壁の古い木の家で、屋根は青色だった。一階建ての四角い家。その小さな家を見て、わたしはまるでこの家は大きな鳥の巣箱みたいだと思った。(そう思ったのは、わたしが小学校で飼育委員になって、鳥の飼育を鳥の巣箱の中でしていたからかもしれない。わたしの飼っていた鳥は白い小鳩だった)

 小さな家の周りには小さな花壇があった。そこには綺麗な色をした数種類の花が、咲いていた。それはとても美しい風景だった。近くには水道があって、銀色の蛇口には水色のホースがついていた。壁のところには大きな窓があった。窓を開ければ、そこから花壇に咲いている花を見ることができるようになっていた。家の裏には大きな木があった。近くの森の木々から離れて、この場所に一本だけ生えている大きな木だった。その木の横には洗濯物を干すための物干し竿があった。わたしは大きな木の大きな木蔭を通って、家の反対側の壁まで歩いていった。そちら側の壁にはもう一つのドアがあった。たぶん、お勝手口なのかな? とわたしは思った。ドアの横には小さな窓があった。わたしは入り口の古い木のドアのところまで戻ってきた。すると、遠くから車のエンジンの音が聞こえた。みると黄色い小さな車がゆっくりとした速度でこちらに向かって走っているのが見えた。わたしは大きな荷物をもったままで、入り口のドアの前に立って、黄色い車が小さな家の前までやってくるのをじっと待った。黄色い車は小さな家の前に止まった。そして、ドアがゆっくりと開いて、そこから先生がおりてきた。先生はわたしをみてにっこりと笑った。

「ごめんなさい。まった? ちょっとだけ買い物にいっていておくれちゃった」と話しながら動いて、大きな買い物袋を車の助手席から出して、わたしに見せるようにして、先生はまたにっこりと笑ってそう言った。

(先生は大きな麦わら帽子をかぶっていて、ゆったりとした綺麗な白い花の咲いているようなワンピースをきていた。その服の中に咲き乱れる美しい白い色がとても眩しかった)

 それが、わたしと先生のはじめての出会いだった。

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