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時折吹く暖かい春の桜色の四月の風が、ぼくを励ましてくれた。たくさんの美しい星の光は夜の中でもきちんとぼくを不思議な星の元まで導いてくれた。その星の光はまるで歩き続けるぼくに向かって、『頑張れ! あともうすこしだよ!』と言ってくれているみたいだった。だからぼくは頑張った。だからぼくは、こうして長い夜の時間の中でも迷子にならずにすんだ。真っ暗な真夜中の中でも、ぼくはちゃんとぼく(凪)のままでいられたんだ。それがとても嬉しかった。だからぼくは歩き続けた。……いつまでも、いつまでも、ぼくは自分の星を目指して歩き続けようと思った。
それがぼくの生きる目的になったんだ。
「おめでとう」と誰かがぼくの耳元で囁いた。
うん。ありがとう、とぼくは心の中で、その不思議な声に返事をした。
すると世界に変化が起こり始めた。
星々がちかちかと光り、夜空が歪み、天体が急速な運動を始めた。幾億、数十億の星々は、空の中でぐるぐると回転をし始めた。それはまるで宇宙にあるすべての星を詰め込んだ巨大な洗濯機の中でも覗いているような光景だった。いろんな星が高速で移動して星たちは自分の居場所を失い始めていた。普通ならぼくの見つけた不思議な星もその渦の中に飲み込まれ、居場所を見失ってしまっていただろう。でも、ぼくは自分の星を見失うことはなかった。なぜならぼくの星はそんな洗濯機の渦の中心に位置していて、動き続ける天体の中で、たった一つだけまったく動いていなかったからだ。
ぼくはその渦の中心に飛び込んでみることにした。
その渦の中にはいろんなものがあるような気がした。
ここがぼくの旅の終焉の場所だと思った。ここがぼくの約束の場所だと思った。ここがぼくのたどり着かなければならない場所なんだと思った。……そして、ぼくはそんな大切な場所にちゃんと自分の足でたどり着くことができたのだとぼくは思った。(嬉しかった)
……、だからここで、『ぼくの長い旅は終わり』だ。