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……歩こう。
その瞬間、確かにぼくはそう思った。
どんなに時間がかかってもいいから、歩いて、歩いて、そして、あの不思議な星の下まで行こう。ぼくはそう決心をした。それは道無き道を歩く孤独な宇宙への旅だった。ぼくの足元に道路はない。橙色の煉瓦造りの道も、みんなで歩いた土色の道も、大きな青色のバスが走るための道もなかった。あるのは緑色の芝生だけ。ぼくはその緑色の芝生の上を歩いて、(歩くたびに、小さな草の音がした)一直線に自分の星に向かって歩み続けた。
一歩、二歩、三歩。
そうやって足を交互に出すたびにぼくは確実に星に近づいていった。……ぼくは感動で、歩きながら自分の体が震えていることが理解できた。今にも、歩きながらなにかの幸せな歌を歌い出したいくらいだった。(そんな歌がすぐに思い出せないことがとても残念だった)
……、風は、ちゃんとお父さんとお母さんに会えたかな?
小さな鉢植えから顔を出す小さな緑色の芽を見ながら、ぼくはそんなことを思った。
お父さんとお母さんにちゃんと会えて、家族みんなで楽しそうに笑ったりしているのかな? さっきみたいに元気にあったかい家の中を走り回っているのかな? そして今頃は、この明るい奇跡のような満天の星空の下で、ぐっすりとした、優しい、安心のできる眠りの中にいるのかな?
……風は今、幸せなのかな?
ぼくはそんなことを思いながら歩き続けた。