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 ぼくはこのときになって、ここがどこかの古びた病院の一室であることに気がついた。この部屋は風の部屋ではなくて、風の病室なのだ。大麦先生はお医者さんで、秋子さん、冬子さんは看護婦さん。そして風は入院患者で、ぼくはそんな名前も知らない病院に迷い込んだ迷子の猫、というわけだ。

 ……、なるほどな。なるほど、なるほど。

 ぼくは一人自分の考えに頷きながら人間たちの様子を観察していた。

 風の診察が終わると大麦先生と冬子さんは、風に優しく微笑みかけながらお別れの挨拶をして、それからゆっくりとした足取りで、風の病室を出て行った。病室を出て行く際、大麦先生はぼくの顔を一瞬だけど、とても厳しい目で睨みつけていった。その目には明らかに憎悪と呼ばれる感情がこもっており、大麦先生がぼくのことを嫌っていることは明らかだった。冬子さんもぼくに好意の視線はむけなかった。

 ぼくは多少むっとしたけど、ぼくも大麦先生のことはあまり好きではなかったので、それはお互い様と言えたし、冬子さんのことは顔がそっくりな秋子さんにミルクをもらった恩があったので、それでちゃらにすることにした。

「ふふ、よかったね、猫ちゃん。許可が出たよ。大麦先生が猫ちゃんと友達になってもいいって」と風はぼくの体を抱きかかえながら言った。ぼくはそんな風に「にゃー」とだけ鳴いて答えた。

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