117
橙色の煉瓦造りの道の先には土色の道路があった。ぼくたちはその土の香りのする道をゆっくりと散歩でもするように歩いて、(久しぶりの土の感触が楽しかった)それから何事もなくバス停まで到着した。小さな女の子の言った通り、大きな青色のバスはずっと走り出さずにバス停でぼくたちの到着を待っていた。三人の大人たちもそれが当然と言わんばかりに、全体的にゆっくりと行動していた。大きな青色のバスのほうがお客さんの到着を待つというその事実を不思議に思っているのはぼく一人だけだった。大きな青色のバスは、外側からだと、(大きくて)その内側がよく見えない。でも、どうやらその大きな青色のバスには運転手さん以外の人は誰も乗っていないようにぼくには観察できた。(もちろん、絶対ではないのだけど)大きな青色のバスの乗客は三人組の大人たちと小さな女の子と黒猫の子猫一匹だけのようだった。
バス停の横にある鮮やかな色の塗られた白い小屋の中には、(綺麗な小屋だった)小さな女の子たちの荷物が置きっぱなしになっていた。(不用心だなとぼくは思った)その荷物の量は、なぜかとても多かった。その大量の荷物をいろいろと整理したりして、出発の準備をしている三人組の大人たちの邪魔にならないように、ぼくと小さな女の子と黒猫の子猫は空いている木のベンチの端っこのほうに並んで腰を下ろした。二、三度の乗り降りを繰り返し、三人組の大人たちは大きな青色のバスに大量の荷物を乗せ終えた。木のベンチの上に残っているのはぼくたちを除けば、あとは小さな子供用の赤色のリュックサックが一つと白い手提げ袋が一つだけだった。小さな子供用の赤色のリュックサックは小さな女の子のものだろうと予測できた。……、でも白い手提げ袋のほうはなんだろう? と思い、ぼくはその白い袋の中身に興味をそそられた。
「さあ、風ちゃん。出発するよ」とお医者さんの年老いた先生が言った。
「はい! わかりました!」と風と呼ばれた小さな女の子が元気良く(まっすぐに片手をあげて、安全確認をするようにして)返事をした。