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「きみは、バスに乗りたくないの?」とぼくは言った。「ううん。乗りたくないわけじゃないの。でも、その前に猫ちゃんを見つけたいの。だって、猫ちゃんを見つける前にバスに乗っちゃったら、もう二度と猫ちゃんに会えなくなっちゃう」と小さな女の子は言った。

 小さな女の子の言葉を聞いてぼくはなるほど、と思った。どうやらこの小さな女の子は大きな青色のバスの待ち時間を利用していなくなった迷子の子猫を探していたようだ。きっと迷子の子猫がいなくなったのも、この広い大きな自然公園の中のどこかで、大きな青色のバスを待っている間だったのだろう。あの三人組はきっとこの小さな女の子の保護者で、いつの間にかいなくなってしまった小さな女の子を必死で探しているというわけだ。ぼくは頭の中でそんな物語を組み上げていった。もちろん全部当たっているというわけではないと思うけど、でも、だいぶ事実に近い推測だろうと思って、ぼくは一人納得した。

 小さな女の子はあの三人組のことを先生たちと呼んだ。先生とはつまり学校の先生だろうか?

「ねえ、逃げよう」と小さな女の子は言った。

 小さな女の子は目に涙をためて、ぼくの服を嫌々しながら強い力で引っ張っていた。ぼくは橙色の煉瓦造りの道に目を向けた。三人組は白いベンチのある大きな緑色の木の前を通り抜けて、こちらに向かってどんどんと小走りで、その歩みを止めずに凄い速度で向かってくる。このままこの場所にじっとしていたら、あっという間にぼくたちのところまでやってくることになるだろう。

「きみはここから逃げたいの?」とぼくは小さな女の子に聞いた。「うん。逃げたい」と(真面目な顔をして)小さな女の子はすぐに答えた。

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