104 猫ちゃん、どこにいるの?
猫ちゃん、どこにいるの?
ぼくたちの前には橙色をした煉瓦造りの道があったので、その煉瓦造りの道の上をぼくたちは歩き始めた。
ぼくは始め、効率を考えて小さな女の子とは別々に分かれて、迷子の子猫を探すつもりでいた。しかし小さな女の子は当たり前のようにぼくの横にくっついて歩き始めた。そしてそのままぼくの許可も取らないで、勝手に、それがあまり前のことであるかのようにして、ずっと空いていたぼくの右の手のひらを自分の左の手のひらでぎゅっと捕まえた。ぼくは小さな女の子に手を掴まれたときに、しまった、と思った。ずっとズボンのポケットの中に手を入れておけばよかったと思ったのだ。でも、もうすべてが遅かった。(いまさら無理やり、ぼくから手を離すことはできなかった)
小さな女の子はとても楽しそうに笑いながらぼくの右手を、自分の左手と一緒にぶんぶんと大きく動かした。ぼくは小さな女の子の動きに逆らわないようにして、手の力をそっと抜いた。
ぼくは仕方ないので、小さな女の子と一緒に迷子の子猫を探すことにした。
後ろを振り返ると、そこにはさっきまでぼくたちが腰を下ろしていた白いベンチがあった。その後ろには大きな一本の緑の葉をたくさん生やしている木が立っていて、その木の影が、白いベンチの上に半分くらいの木陰を作り出していた。……そこはちょうど、ぼくが座っていた辺りの場所だった。
あの大きな緑色の木が目印になるから、迷子の子猫を探していても、自分たちの居場所がわからなくなるってことはないかな? とぼくは思った。
迷子の子猫を探しに行って自分たちまで迷子になってしまったら、笑えない。いくらなんでもそんなことはないとは思うけど、とても広い自然公園の中だし、一応、確認していおきたかった。しかも今日は自分一人ではなく、小さな女の子を連れているのだ。きっとこの小さな女の子の両親はあの大きな緑色の木のある白いベンチを目印として、この小さな女の子を一人にしているに違いないとぼくは考えていた。だからぼくたちは迷子の子猫を見つけたあとに必ずこの場所まで戻ってこなければならないのだ。