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「ねえ、どうしてお話ししてくれないの? まだ、お眠なの?」と小さな女の子は言った。そして相も変わらずぼくの体を左右にゆさゆさと揺さぶった。
「起きてるよ」とぼくは言った。「もうそんなには眠くはない」その言葉は嘘ではない。
ぼくの意識は太陽の光に当てられたことで、……いや、小さな女の子の声を聞くことで急速に覚醒していった。一度寝覚めると、不思議と眠気はすぐになくなった。本当によく寝たな、という気持ちの良い目覚めの感覚だけがぼくの中に残っていた。ぼくは寝ることが好きなほうだし、寝起きもあんまりよくないほうだったので、自分の寝起きの体調の良さに少し驚いていたくらいだった。
「本当?」と小さな女の子は言った。「本当」とぼくは小さな女の子に返事をした。すると「よかった」と小さな女の子は言った。(本当によかった、と言ったような顔をしていた)
なにがよかったのか、ぼくには理解できなかったけど、小さな女の子は木々を揺らす四月の風の中で嬉しそうに笑っていた。だからぼくはきっとぼくの知らないところで、とてもいいことが起こったのだろうと思った。
ぼくはとても澄んだ青い空を一度見上げて、それから視線を下げて周囲に永遠と広がる緑色の大地を見渡した。
ここはとても不思議な場所だった。どこか遠いところにある、とても広大な自然公園の中のように思える。あのテレビや動画や映画などでよく見かける小さな子供のいる家族連れや仲の良い学生たちがお花見をしたり、ピクニックの真似事をしたりする大きな自然公園の中だ。(森や湖がそのままの形であるような大きな自然公園だ)そこそこ立派な(お城みたいな)遊具があって、そこで子供たちが全力で遊んだり駆け回ったりすることができるくらいの大きさのある自然公園のどこか隅っこのほう。その敷地はとても広くて、緑色に終わりが見えなかった。