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運命の忘れ物

夕方の駅のホームは、日常の疲れを感じさせる静けさに包まれていた。

どこか気怠そうな顔をした通勤客が次々と電車に乗り込んでいく中、椎名美咲しいな みさきは、そのホームの隅で小さなため息をついた。


「今日も遅くなっちゃったな…」


放課後の部活が長引き、すでに時刻は夕方を過ぎている。

周りにはほとんど学生の姿はなく、スーツ姿の大人たちばかりが目についた。

急ぎ足で改札を抜ける人々の姿をぼんやりと眺めながら、美咲はしばらく駅のベンチに腰掛けていた。


ふと、視線の先に何かが落ちているのに気づいた。


「ん?これ、誰かのスマホ…?」


美咲は少し考えた後、そっとそのスマホを拾い上げた。

電車に乗り遅れた誰かが忘れていったのだろうか。

画面にはロックがかかっており、持ち主の手がかりはない。しばらくの間、持ち主が戻ってくるかと待っていたが、誰も取りに戻る様子はなかった。


「駅員さんに届けるべきかな…?」


そう思い立った瞬間、スマホが突然振動し、画面が点灯した。着信通知が表示され、発信者は「佐藤」という名前だった。


「…え、どうしよう…」


迷いながらも、美咲はその場で電話に出ることにした。スマホの持ち主に繋がるかもしれない。

画面をスライドして通話を開始すると、すぐに声が聞こえてきた。


「すみません、スマホを拾ってくださった方でしょうか? もしかして駅で落としましたか?」


低く、優しい声が耳に響いた。

どうやら、発信者は持ち主と連絡が取れないため、代わりに電話をかけてきたのだろう。


「はい、駅で拾ったんですけど、どうすればいいですか?」


「ありがとうございます!僕の同僚のスマホなんですが、すぐに彼に伝えます。もしよければ、駅で待っていてもらえませんか?すぐに迎えに行かせますので…」


電話の相手の言葉に、美咲は少し驚きながらも同意した。話しぶりからすると、スマホの持ち主はきっと忙しい社会人なのだろう。

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