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ふみきり

作者: 長尾 時子

私がこの街に引っ越してから1ヶ月程たった頃だったろうか。


妙な噂を耳にした。


『雨の日の真夜中に1人で踏切を渡ってはいけない。何故なら踏切がその人を呼ぶから』


というものだった。


近所にある踏切で何回か飛び込み自殺をする人が出て、そんな噂が広がったのだろう


馬鹿馬鹿しいと思ったが、なんとなく心に残り、雨の日は早く帰宅するようになった。



忘年会で帰宅するのが遅くなり、そろそろ深夜をまわる頃にぱらぱらと小雨が降ってきた。


近くのコンビニによりビニール傘を購入し、例の踏切にきた。急いで渡ろうとするといきなり『カンカンカン』という音と信号が赤く明滅しだした。


あれっおかしいな。終電はすぎているはずなのにと思って周りを見渡しても人っ子一人いない。


酔った勢いもあったろう。遮断機が下りる前に抜けてしまおうと小走りにその踏切を渡って後ろを振り返ったが、電車がくる様子も無い。


変だなと思いながらその日はそのまま帰宅した。


ただ妙にあの『カンカンカン』という音が耳について残っていた。



それから大分時が経って私はすっかりその事を忘れていた。


ある日私は仕事で大失敗をし、上司にこの問題が解決出来なければキミはクビだと脅された。

何とか手を打とうと走り回ったが問題が解決する目処は全く立たない。


途方に暮れて帰宅する私の前で、踏切が『カンカンカン』と鳴り、遮断機が下りてきた。


呆然とする私の前を、音をたてて電車が横切っていった。


家に帰った後も、あの『カンカンカン』と信号が赤く明滅する様子が頭から離れない。


次の日、私は会社を休んだ。その翌日も。会社からは何度も電話が来ていたが出る気になれない。


私はどうしてしまったのだろう。


踏切が私を呼んでいる。私が踏み切りを渡るのを待っている。





次の日の朝刊に小さく記事が出た。


xx会社のAさん、仕事を苦に飛び込み自殺か









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