表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

さくら、古のルーンの主になる

王様は、漫画みたいなピンクブロンドを靡かせて、蕩けそうな蜂蜜色の瞳を輝かせた。

すごく美しい。すごく美しいけれどもっ。それ、ヒロインの配色だよね?

キラッキラだけど王様の威厳は大丈夫?王様っぽさゼロだけど大丈夫なの?


「古のルーンの主、なんとお美しい!会いたかった!」


「おうつくしい?」

私、すごく美しい人に美しいって言われてます。美しいってなんだっけ。


「吸い込まれそうな黒い瞳。あやしく艶めく漆黒の長い髪。全てが美しい」

よく聞くと黒いという事しか褒められてないけど、黒色が綺麗っていう解釈でいいのかな。造作は普通だしね。


「褒めたって駄目です。お断りします」


「お断り?え、カイ、どういう状況?」

王様が急にカジュアルな感じになった。


「もう主になっているから断れないとご説明している状況です」


「断りたいの?なんで?長生きできるよ?ずっと美しいままだよ?」


「マーゴさん普通のおばあさんでしたよ」


「マーゴ様は250才だぞ。250才にしては十分美しいだろう」


「リヒト様、マーゴ様は256才です」


「今はマーゴさんの実年齢はどうでもいいです。激重の役目なんて無理です。プレッシャーで死んでしまう」


「ルーン占い、好きなんだよね?趣味なんだよね?」王様はニヤリと笑う。

図星だ。さくらは、占いの勉強だけして暮らしたいと思ってた。


「ぐっ・・・!趣味は趣味だから楽しいんですぅ!仕事にしたら楽しくなくなるんですぅ!」


「本当か?ずっと占いの勉強をしながら、たまーに国の事をちょこっと占うだけだ。いい生活じゃないか?」

くそう、王様め、反論できない。さくらは頭を抱える。


「さくら様、選択肢が1つしかないと思うから、拒んでるのではないのですか?望んでないのに押し付けられると感じてるのでは?」


「まあ、そういう所はあると思います」


「大丈夫です。古のルーンは、向いてない人間を主には定めません。そのために厳しい条件があるのです」


「ちょっと待って、良い事言ってる風だけど、自力で家族を作ってなくて、重要じゃない人って言ってたじゃないですか」

危ない、納得しかけた。カイさん油断も隙もない。


「それは、残された人への影響を考えての事ですので、さくら様ご自身の評価とは無関係です。大切なのはマーゴ様のお姿が見えている事と、一定以上の魔力がある事。そして、ルーンに向き合った経験がありルーン占いの適性がある事です」


「さくら、夫や子供がいたら絶対に引き受けないだろ?」


「まあ、それは、そうかも知れません」


「さくらは、自分が重要人物だとは認識していないだろう?自分が重要人物だと思うような人間は、ルーンがそもそも選ばないんだ」


「何でですか?」

さくらは、自分が重要人物だと認識できるほど図々しくなれない。そもそも、重要人物になれるほど存在感のある人間ではない。


「社交的で、自己顕示欲が強くて、支配欲が強い。そういう人物が主になったら、その地位を利用していらん事をするんだよ」


「確かに。ありそうな話ですね」


「だから、社交的ではなく、目立とうとも思わず、変な上昇志向も無く、穏やかで人の良い人物が好ましいんだ」

嫌になるくらい、さくらにピッタリな人物像だ。


「例えば、例えばの話ですよ」


「うん、例えばの話だね。なに?」


「私が主になったとして、どんな感じの生活になるんですかね。人間関係とか面倒臭いの嫌なんですけど」


「さくらは、私と並ぶ地位になるよ。ただ、名誉職のようなもんだ。実権を握りたいというなら別だけど」


「実権って何の実権ですか。いりません重いです」


「それなら、使用人は好きに選んでいいし気の合う者を置いてもいい、交友関係も自由だ。のんびり占いの勉強を続けて、たまに国の為に占う生活。最高だろ?」


「なにそれ天国?あ、例えばの話ですけど、公務みたいなのは?」


「年に1度か2度くらいかな。まあ、カイも一緒だし、成功しようと失敗しようとさくらに責任は問わないよ」


「年に1度か2度か・・・本当にそれだけ?」


「うん、それだけ」


「結婚とかは?自由?」


「もちろん!」


「私が片時も離れず傍に居ますが、結婚は可能ですよ。片時も離れないので、2人には出来ませんが」


「片時も?」

カイさん、そんなに見つめないで。男前に慣れてないんです。誑かしにくるのやめて。


「カイ、やめろ。何故今その話をするのさ。せっかく、さくらがその気になったのに!」


「私はさくら様の護衛です。いつ何時であっても傍を離れません。もちろん結婚してもです」


「やめろカイ、さくらがどん引きしてるじゃないか」


「さくら様、私がさくら様をフォローします。さくら様は私と共にいて下さるだけで」

「ストップ、ストーップ!違うだろ、カイ、プロポーズじゃないんだからさ!さくら、大丈夫か顔が真っ赤だよ?」


「・・・話を、戻していいですか?」


「もちろんだよ。カイ、自重して」


「好きにお出かけしてもいいんですか?町でお買い物とか、旅行とか」


「もちろんだよ。さくらが行きたいのならどこでも行けるよ」


「私がさくら様をお守りしますので、安心してください」


「お給料は、占った時だけ?」


「さくらには年間の予算が組まれているから、占いの報酬や給料は特に無いけど、お金に困るような事はないよ」


「予算?」


「私と同額くらいだよ」

気楽な立場なのに王様と同額ってどういう事なの。それを責任を負わずに使えるってそんな事あるの?怖すぎる。


「さくら様は古のルーンの主です。欲望の薄いさくら様の叶えたい事など、ほぼ100%叶えられます」


「例えば、どんな?」


「幻想的な雑貨屋のモルフォ蝶グッズを爆買いしたり、ハンドメイド作家のアクセサリーを集めたりです」


「ちょ!何で知ってるの?!」


「マーゴ様から伺いました。さくら様の事は何でも知りたいので」


「カイ、ちょっと黙ろう。マーゴ様にそんな事を根掘り葉掘り聞くんじゃないよ(小声)」


「猫を飼ってもいいんですか?」

実家は父が嫌いで動物を飼えなかった。


「好きな動物を飼えばいいよ」


「私は、のんびり占いの勉強をしながら、猫を可愛がって、好きな使用人と楽しく暮らして、たまに占いをすればいいって事ですか?あと、年1・2回の責任が伴わない公務」


「そうだね、後は、民の幸せをルーンに願ってくれればいい。そこが結構大事かな」


「わかりました。王様が一筆書いてくれるなら」


「一筆?もちろん書くけど、私と同等の立場なんだよ?リヒトで良いよ」


「リヒト様?あ、呼び捨ては嫌です。慣れてないので」


「カイがカイさんなら、私はリヒトさんでしょ?」


「じゃあ、それで」


「私とリヒト様では立場が違います。同じで良い訳がありません。さくら様、それなら私はカイと呼び捨てでお願いします」

こわいこわい、カイさん圧がすごい。やめて男前がグイグイくるのやめて。


「わか、わかりましたっ。リヒト様で!」


「さくら、正式な書式で一筆書いて届けさせるよ!いやー、さくらが納得してくれて良かった!じゃ、私は帰るね。カイ、さくらを頼むね!」

リヒト様は、すごい勢いで帰って行った。言質は取ったと顔に書いてあった。




▽△▽△▽△▽△▽△




「さくら様、邸内を案内させていただきます。地下はご覧になったのですよね?あのお部屋はマーゴ様のご趣味のお部屋です」


「マーゴさんのご趣味って何?すごい枝が天井からぶら下がってたけど」


「マーゴ様のご趣味は、化粧品の研究と栄養ドリンクの研究です」


「栄養ドリンク?」


「詳しくは存じ上げないのですが、味はリアル〇ールドを目指していると伺っています」


「ああ、エナジードリンクの」


「大好物だそうで」


「そうなんですね。だから元気なのかな」

マーゴさん256才の大好物は、まさかのエナジードリンク。さくらは、学生時代からまるで変わらないおばあちゃんの顔を思い浮かべる。


「化粧品はビューティーMGというブランド名で販売されています」


「ビューティーMGの、MGはマーゴ?」


「MGは、マーガレットですね。マーゴ様のお名前です」


「マーゴさん、マーガレットさんなんだ」


「はい。マーゴ様ご自身がマーゴと名乗っていらしたので、皆マーゴ様と」


「カイさんは、マーゴさんの護衛だったの?」


「まさか!私の高祖父の親友が務めておりましたが、マーゴ様と共に先ほど引退いたしました。マーゴ様と同い年だと伺っております」


「え?まだご存命?」


「護衛は主様と同じように年を取りますので」


「カイさん、もしかして私も250年とか生きるの?」


「それは、次代の主がいつ現れるかによります。現れなければ、200年でも300年でも」


「イーヤァー!イヤ!100年目くらいまでなら喜べるかもしれないけど、200年とか300年とか無理!」

300年って人生何人分?転生ループするヒロインじゃないんだから。


「ならば、次代を早めに見つければ良いのです。100年以内は無理かもしれませんが、180年過ぎれば他の世界に探しに行けますし、200年くらいで現れるかもしれません」


「かもしれません?200年で?」


「マーゴ様は幸運でした」


「250年で幸運なの?」


「マーゴ様は256才ですが、主になられてからは200年くらいですよ」


「マーゴさん、50才代で主になったの?」


「そうですね。その時の姿をベースに10才くらい若返りますから、もう10年早かったらといつも悔し気におっしゃっていました」


「10才?!」


「鏡ならあちらに」

カイさんが右手で部屋の奥を指し示す。


さくらは猛ダッシュで走り寄り鏡を見る。


「若返ってるぅぅ!20才?うーん、23才くらい?・・・眉毛太っ!」

さくらは、眉毛を整えないとだいぶ太い。慌てて前髪で隠す。


「さくら様、凛々しい眉も素敵ですよ」


「カイさん、何でも褒めりゃいいってもんじゃないですよ。眉は後で整えます」

カイさん、なせ残念そうな顔をする。


「マーゴ様の化粧品で、眉の脱毛ができるセットがありましたよ」


「脱毛はちょっと。失敗すると取り返しがつかないんで」


「侍女に整えてもらえますよ」


「侍女さんって、どこに?」


「これから、さくら様がお好きな者を選んで下さい」


「え?いちから?噓でしょそんな面倒くさい」


「いちから選んで頂いても良いのですが、一応候補を何人か呼んであります」


「良かった、問題なければその人達紹介して」


「わかりました。ですが、その前に邸内のご案内を」


「そうだった」


さくらは、ここに現れて3時間以上経過して、やっと邸内の案内をしてもらう事になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ