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ホラー短編シリーズ

人を呪わば

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2023/09/09




 俺は、世界を呪っている。


 転落人生の真っただ中だからだ。


 世の中は糞だ。


 社会はゴミだ。


 世界中が不幸になればいいのに。


 自分一人が不幸で居続ける事が我慢ならない。


 他の人間が幸福で居続ける事が我慢ならない。


 だから、毎日呪いをかける事にした。


「世界中に、不幸な出来事があふれますように」


 どうせここから立ち上がれないんだ。


 だったら、道連れにしてやろうと思った。


 世界のありとあらゆる物に呪いをかける。


 人に、空気に、道具に、心に。


 不思議な事にそうすると、少しだけ荒れていた心が穏やかになった。


 だから、呪って、呪って、呪い続けた。


 けれどある日、気づいた。


 分かりやすい不幸はダメだと。


 対策されてしまう、用心されてしまう。


 たとえば俺の呪いが形になったとして。


 事故、事件とかが起きたとする。


 けれど人間は、危機的状況に瀕すると賢く、しぶとくなる事がある。


 だから、裏をかかなければならない。


 分かりやすい不幸が訪れるんじゃなくて、ぱっと見で分からない不幸が訪れますように、と。




 世界のどこかで誰かが俺の呪いで不幸になっている。


 かもしれない、という思い込みは俺の精神安定に一定の効果があったようだ。


 長い間、眠れなかったが、その日はひさしぶりに熟睡する事ができた。


 だからだろう。


 気分転換にと、普段は行かない場所へ散歩しに行ったのだ。


 そのさなか、のどが乾いた俺は、街路樹のそばにある一台の自販機を利用する。


 するとその自販機のお釣りが、七十円分残されていることに気がついた。


 誰かがとり忘れたのだろうか。


 ラッキーだ、しかも七だし縁起がいい。いいことあるぞ。


 間抜けにもそう思ってしまった。


 手を伸ばした俺は、忘れていたのだ。


 自分が世界にかけた呪いの事を。


 まっすぐそのままには作用しない呪いの事を。


 七十円分の小銭を見つめてにやけていた俺に、街路樹が倒れこんでくる。


 衝撃が襲う。


 俺は忘れていた。


 この世界には、人を呪わば穴二つ、という言葉があることを。



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