表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もうひとつの四魂物語  作者: yuzoku
ジンセンフの修行編
2/9

初のひとり旅(弍) 〜七種の朱門〜

風の抜ける音がする。


 目を開けると、天井には見慣れない木製の天井があった。そこで記憶が蘇り、昨日は湖畔の宿に泊まったのだと思い出す。風の音は、部屋の通気口の音だったようだ。


早めに寝たのもあり、なんとか日の出前に目が覚めた。少し眠いが、このまま外に出よう。



ひんやりとした空気が気持ちいい。軽く伸びをすると、歩き始めた。


まず、昨日宿探しの途中で見かけた鳥居を目指すことにする。


 今回じいちゃんに言われたクエストは、『ゲンソウコンの、7つの鳥居をくぐれ』。まずゲンソウコンってどこだよって調べるとこからスタートして、長い旅路だったと振り返る。まだ1つもくぐっていないのに、個人的な達成感は既に満タンになりそうである。


そうこうしているうちに、最初のチェックポイントに着いた。


それは街の中心にあった。

足元まで来ると、さすがにでかい。少し離れた所にある3階建ての建物の、さらに倍はありそうな大樹だった。

その横の道を跨ぐ鳥居が[樹の鳥居]だ。

それをくぐり、次の目的地を目指す。


2番目は、[門の鳥居]だ。

港町のゲンソウコン全体を守るように、山道の入り口に立っていた。恐らく山路からの旅人は街について最初にくぐるであろう鳥居を、遅ればせながらジンセンフも内側からくぐる。長く続く山への道を眺め、Uターンした。


 昨日宿屋の主人に街の地図と鳥居の目印を書いてもらったので、街中にあるモノはそれに従ってオリエンテーリングしていく。


少しずつ空が白み始めてきた。ヤバい! 次の鳥居は時間制限があるので先を急ぐ。


[太陽の鳥居]

街の1番東にある。これは日の出が差し、鳥居が朝日で照らされる10分間でないと効果がないそうだ。街の古い伝説に残っているらしいが、地元出身の宿屋の主人もそれは知らなかった。たまたま昨日宿屋に泊まっていた、歴史研究家のおじさんが教えてくれた。けっこう危ない橋であった。


絶え間なく寄せる波の音だけが、刻を知らせる。湖に目を移すと、陽光で波が立体的に浮かび上がる。

[波の鳥居]

湖のほとりに立てられており、くぐる時にはちょうど釣り人とすれ違った。


街の外れまで歩き、徐々に目の前が緑一色になっていく。

森の入り口の脇に佇む、鳥居とその中の小さなお堂。

それが、[祠の鳥居]



これで5個くぐったぞ、順調、順調。と言っても、かなりの広さがある街を、端から端まで移動していたので、太陽は既に真上を登っていた。


さて、ここから本題なのだ。そう、あと2つの目印は地図にない。わかっているのは、目の前の巨大な森の中にあるということだけ。


まずは、昨日船から見た光景を思い出す。記憶の中では鮮明に浮かぶ、湖と森を繋ぐように立つ鳥居。

もらった地図で湖との位置関係だけ確認し、森に足を踏み入れた。



 少し歩くと、樹木や茂みに完全に囲まれていた。昼間のはずなのに日の光は見えず、かろうじて木の形が分かるくらいの薄暗さだった。数分しか歩いていないはずだが、すでに入ってきた森の入り口もわからなかった。とにかく前に進むしかない。ジンセンフは腹を括り、なるべくまっすぐ進むのをを心がけて道なき道を歩き続けた。




何時間歩いただろうか。


完全に道に迷ってしまった。


というか日の光も通らないから方向感覚もわからない森の中では、方角を決めて歩くことは元々厳しかったのだ。


木と木の間に、かろうじて座れるスペースを見つけたので、腰を下ろして保存食と水に口をつける。改めて周りを見渡しても、どこから来て、どこへ向かえば見当もつかない。かと言って、諦めて帰ることさえできない。初めてのひとり旅で、少し浮かれていた道中が恨めしい。あのじいちゃんが、ただの景勝地を指定するはずがないことは、わかっていたはずなのに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ