今日もまた今日が始まる
甲高いトラックのブレーキ音がなった。
大宮 8945
永遠にも感じられたその一瞬は、迫るその文字列を最後にかっ消える。
小学四年生のとき、周りとズレていた俺を皆が避ける中一人見捨てずに構ってくれたエリちゃんの笑顔。
中学二年生のとき、俺と隣の席になっただけで泣いたチエちゃんの鼻水。
高校のときはキャンプファイヤーをやった、男女ペアでの強制参加、何故か早退したユイちゃんの後姿。
宙に投げ出された俺の身体は、ボール。
トラックはバット。
回転しながら地に叩き付けられる瞬間のことだった。
「また転生者か……」
内容の薄い走馬灯の中、老若男女のいずれとも判断付かない声が脳裏に響いた気がした。
ジリリリリリリリ!!!
「……うっさ」
枕元のタイマーを苛立ち気味に叩き付ける、時計の針は午前の七時を指していた。
どうも今日は水曜日らしい、まあニートに曜日を認識する必要なんかありはしないが。
いつなんどきなんのため付けたタイマーなのかも覚えちゃいない、変なぶっ壊れ方でもしたのか消し方すら分からない。
コイツは俺がどんな人生を送っていようがお構いなしに俺に現実を叩き付ける悪魔の器具なのだ。
布団を剥ぐと埃が掃ける。
このせいで最近鼻の通りがよろしくない。
「……またあの夢か」
あの忌々しい事件に見舞われたのは、高校卒業直前ぐらいだったか。
あんな人生サヨナラライト前ヒットみたいな飛ばされ方をしていたものの身体に致命傷はなく、ただの怪我程度で済んだ。
医者が言うには奇跡らしい。
卒業式にも出席した。
初めてのギブスを自慢げに見せびらかしながら。
「へっきし」
この部屋は相変わらず埃が酷い。
見渡せば本、ゲーム、フィギュア、ペットボトルの群れ。
目を覆いたくなるような始末。
片付け。
……ま、いいか。
さあ、今日は朝ごはんに何を食べようかな。
糞みたいな今までを称え、糞であろうこれからを弔おう。
今日はいい日だ。
最高の人類滅亡日和じゃないか。