第弐魍魎 ペガサスと搾取園の所在
「牛車を利用して警察署までとりあえずいくさー」
牛車の化物。牛車は車輪と車軸に炎が立っており、車の中に化物が座っている。車を引く牛は舌を長く伸ばし、背の鞍に目玉鼻口がついている。
現代でいうタクシーのかわりとなる黄泉の世界を通行するうえで便利な乗り物妖怪の一つだ。
料金は妖力を注いだ小判、妖判とよばれる通貨だ。妖たちの間で最近になって作られた流通している貨幣の事である。
牛の長い舌に一枚小判をのせるとモーと鳴きながら台座を出現させた。
車体には鬼の業者マークがはいっており地獄と黄泉界隈を牛耳っている鬼瓦グループの家紋が刻まれている。
嘘松町は黄泉と現世の間にあるといわれる曖昧な空間にある一風変わった町だ。
そこには妖交番嘘松派出所があり、妖と人間の問題を重点的にあつかっている専門家の部署妖犯特捜隊がある。
内臓は元特捜隊のメンバーだったが、わけあって辞めて個人事業主である探偵を営んでいる。
愛理は怯えながら牛車に内臓のエスコートを受けて乗る。レディファーストだ。
内臓は愛理の心を読んでいたがあえて黙っていた。(この人ちょっといいかも・・・)
妖怪警察署につくと所長のぬらりひょんがおきまりの挨拶をしてくれた。
「なんぞ?なんぞ?こまりごとかいのぅなんぞ?」
妖怪警察はエクソシストと反発しあう相対する組織だ。敵対関係にあり秩序をたもつのと同時にエクソシストの管理をしようとしている。
「さー妖怪に関係してる事件の捜査協力をねがいたいのだがねー」
「なんぞ?そんなことかしっとるぞ!協力するぞぃ」
「ありがてぇこってす歌舞伎町のハヤト君が殺された件について情報を分けてほしいさー」
「なんぞ!いいぞぃ、その件は自殺扱いになっとるぞぃ!資料をもってくるからまってるがよいぞぃ」
「有難うございます。これいつもの品です」
「ほっほーなんぞこれ!なんぞ!」
「喜んで頂けたみたいでなによりです」
虹色ヤモリの姿焼きをぬらりひょんに渡すとなんぞこれと喜んでくれたみたいだ。
妖判一枚で牛舎一回なのだが虹色ヤモリの姿焼きは五枚する貴重な品だ。
ぬらりひょんの署長はヤモリが大好きなのだが、なかなか手に入らないため困っていた。
事件関係の資料をもってきてくれたので交換に近い形となったが、いつもの情報源だ。
軽く挨拶をかわしてぬらりひょんとわかれをすますと一通り事件の資料を読み終え、概要がわかった。
年齢をいつわり歌舞伎町でホストとしてつとめるハヤト君は客のツケを借金として肩代わりして苦悩していた所、金がまわらなくなって自ら命をたったと記されている。
「愛理ちゃん、ハヤト君はホストだったんだねー」
「そうです・・・私・・・ハヤト君が自殺するなんてありえないとおもうの」
ホストクラブ、Pegasusに勤めていたハヤト君の給料明細をみることにした。Pegasusの店主ペガ・サスオに協力してもらった。
一月から三月の売上で黒字になっているが四月の客が飛んだツケで一千万の借金をしていることがわかった。
しかし、五月中に一千万の借金は返済されている。
ペガ・サスオはペガサスと人の半妖である、足と胴体が人で頭がペガサスだ。
内臓は人の心は読み取れるが妖怪の心はよみとれない。
だが、半分妖で半分人間の場合は中途半端によみとれてしまうので気持ちが悪くなるのだ。
ペガ・サスオに事情を聞いたところ何やら怪しげな組織とのかかわりがあったということだ。
内臓は聞いた情報から分析を始める。
次にあたるべきは同僚のホストだ。
「ナイト君でいいかなー?」
騎士とは名にふさわしい金髪蒼眼で筋骨隆々なたくましい男の元を訪ねた。
内藤労奴君は百舌鳥の鳥人で金色の髪に青い瞳をもち鋭い眼光を放ち続け、槍の使い手であり、早贄をおこなうさいランスで突き刺して保存するという生態をもつ。
「なんすか?」
「ハヤト君が自殺したけんについて伺いたいのだー」
「なんもしらねっすよ」(やっべぇ~ハヤトの死因が・・・ってことがばれちまう)
内臓は肝心の部分をよみとれなくてもどかしさを感じたが手ごたえはあったと自覚した。
「君、ハヤト君の死因についてしってるよねー」
「なんすかなんすかわけわかんないすよ」(俺の頭突きが原因だったなんてしれたら・・・)
「しらをきるつもりだねー」
ペガサスオは角から火をだし煙草に着火すると一服しはじめた。
「しらねえもんはしらねえっすよ」(ふぅ~やっぱ妖屋の煙草にかぎるぜ)
「搾取園という施設に関してもきいていいかねー」
「なんにもしらねえっす」(搾取園は嘘町一丁目の天国渕際町にあるんだよなぁ)
「そうですかしらないならそれでいいさー」
嘘つきめと思いながらも顎髭をなでつつ内臓は事件の核心へと調査をすすめるのであった。