悲しむ空編 プロローグ
とある一人の少女が妖怪探偵事務局を訪れていた。
「あのぉ・・・こんばんわ!噂を聞いてきたのだけど、ここが嘘松町妖怪探偵事務局であっているのでしょうか?」
愛理と言う名の少女は内臓に問いかけた。
「あぁー間違いないさぁー。こーこが嘘松7番地の妖怪探偵事務局さー」
妖怪収集用の小型妖怪収納ベルトに手をかけながら細身で長身の白髪交じりの男、内臓がそういった。
「不可解な出来事が立て続けにおきてて、困ってるんです。どうにか調査してもらえないでしょうか?」
愛理の願いを内蔵は快く引き受けた。
「こーこは嘘松7番地、嘘の様な本当の事が何度もおきる不思議な町さ、詳しくはなしゃんせー」
「空が泣いているようにみえるんです。そうみえるだけと言われればそうなのかもしれませんが、確かに空からきこえるんです」
「ほぅ・・・まぁない事もないわなぁ。最近ふりしきってる雨の原因がそれかもしれねえさー」
「空が悲しくって悲しくって涙が止まらない誰か助けてって話かけてくるんです」
「名前は?」
「あいり。あいにことわりとかいて愛理です」
「そりゃいい名前だ。愛理ちゃん。話を続けてくれさー」
「先日、洗濯物をしていると空から涙のようにしょっぱい雨がふってきたんです。洗濯物をしまうとやんだのですが」
歯をくいしばってから話しを続ける。
「かなしみに染まっているようにかんじたんです。なんていっていいかわからないけれど、ただ悲しくて」
「そうすると、空から声が聞こえてきて助けて悲しいよ助けてといってくるんです」
曇天の空からふりしきる雨は綺麗でどこか儚げで触るとぴちゃりと跳ねて消えていった。
窓から顔をひっこめると内臓はタバコに火をつけ帽子を深くかぶり椅子に背をもたれた。
「空が悲しんでるんじゃなくてあなたの心が悲しんでいるのではないのかなー」
「私最近親しい友人を亡くしているんです。その人の声によく似ていて幻聴かしら」
「いやっそうでもないさー」
「実際、しょっぱい雨がふりしきってるからねぇ最近ずっとさー」
ぱたりと新聞紙を閉じ机におくと内臓は愛理の頭に手をかざしてこういった。
「なんくるないさー。そのうちよくなるさー」
「はい・・・」
泣きだす愛理に内臓はいたたまれない気持ちになった。
「調べてみますかー」
「あいっSirー」
肩の後ろからテル坊主と言う名の妖怪が顔をだす。
テル坊主は内臓のパートナーであり宿敵でもあった。
「あいっSirーあいっさーあいさっさー」
なんどひっぺがそうとしても肩から離れないのだ。テル坊主は内臓の肩に宿った妖怪の一種だ。
時折力をかしてくれるのだが内臓がよわると食べようとしてくるのがたまに傷だ。
内臓は人の心を読み取れるので人の心の闇の深さをしりすぎてしまい猜疑心に悩まされ日々葛藤している。
人の身でありながら妖怪と仲がいいのは妖怪の心が読めないからであり、幼少の頃から物心がつくと必然的に人と接する機会が減り、妖怪と接する事が増えた。
悲しむ空の妖怪編始まり、始まり。