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true177の短編小説詰め合わせ【5】

満月だったはずなのに……

作者: true177

冒頭部分だけで何となくオチが分かる方もいるかと思いますが……。

 2021年11月19日、とある街の外れ。


 「今日だな、満月は……」


 沈みゆく太陽を望みながら、男はそう呟いた。


 この男は、特殊な体質があった。満月の夜になると、狼男であるかのように獣化するのだ。銃弾を跳ね返す分厚い皮膚、一撃で鉄筋すら折ることのできるパワー、新幹線並みの速度で走ることが出来る健脚。月に一度だけ、彼は無敵状態に変身するのだ。


 弱点もある。月が雲で隠れてしまうと、変身が解かれてしまうのだ。そのため、曇りの日に活動することは断念しなくてはならない。


 男は、ポケットからスマホを取り出し、検索欄に『天気 今日』と打ち込んだ。


 「よし、快晴だな」


 快晴。暴れまわるには最高の天気である。意気揚々と男は街へと下って行った。


 街では、何故か多くの人々が空を見上げていた。天体観察がブームになっているわけではない。男は少々怪しんだが、たまたまだと無視した。


 男が満月の夜に何を企んでいるか。それは、街の破壊と殺戮である。男は、自分より弱いものがなぎ倒され、悲鳴を上げ、逃げ惑う姿が快感でたまらないのである。これまでにも、数多の都市を恐怖のどん底に陥れた。


 街頭テレビは、『今日は満月 獣男に襲撃されるのか?」とテロップを流していた。男は、ひっそりとほくそ笑んだ。『俺のことが話題になっているな』、と。


 警官が外に数名いるが、そんなことは関係ない。男は、肩にかけていたバッグから拳銃チャカを取り出し、警官の内の一人に照準を定め、引き金を引いた。発射音が鳴るとほぼ同時に、ヘッドショットを決められた警官は前に倒れこんだ。


 (よし、いつも通り変身するか)


 男の普段のルーティンは、誰かひとりを撃ち殺し、全員の注目を引き付けてから獣化するというものだ。


 男の変身の仕方は、かなり変わっている。頭にある程度の衝撃を与えることで、意図的に獣化するのだ。一日一回しかチャレンジできないが、今まで失敗した回数はゼロだ。


 男は、コンクリートの地面に頭を激しく打ち付けた。強烈な痛みが走った。


 そして、遅れること0.5秒、周りにいた警官たちが一斉に男に向かって拳銃を発射した。慌てて撃ったために外れたものも多かったが、二発が男へと到達した。


 (残念、遅かったな)


 二発の銃弾は、男の獣化した皮膚に虚しくも弾き返される……。それが、男が推測した未来だった。だが、


 「ヴッ!?」


 それらは何の抵抗もなく、男の胴体を貫通していった。


 その場に崩れ落ちた男。なおも銃口を男に向ける警官たち。そばのテレビ屋の街頭テレビの音声が、この世で男の聞いた最後の音になった。


 「今日は部分月食で、月の最大98%が欠けて見えると……」

初めてのショートショートです。ニュースで流れていた『部分月食』でこのネタを思いつきました。

感想などあれば、よろしくお願いします。(作者都合により返信できない場合があります)

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