約束と獲物の価値
軽く鑑別ウサギを一口分切って軽く塩を振ってから食べて咀嚼する。うんうん。食感はささみ。だけど結構うま味が強く、ウサギと思えないほど肉汁が出てくる。正直言って美味い。
他に使えるものを見て見ると、卵が大量にある、何の卵だろうか?それにニンジンのような野菜に大根、キャベツにレタス、それに葉物野菜などが複数。あと穀物として小麦粉のような粉が複数、あと白米があったこれは嬉しい!!あ!チーズ?かなこれ。
「さて、じゃあローストラビットにしようかな?これが一番美味そう」
「よし!分かりました。じゃあ用意しますね!火力を最大にして」
といって焚火を用意し始めたので慌てて止める。今回はグリルやオーブンで作れるタイプの物を作るから、必要ないといって止める。
そして俺は丁度いい大きさの両手鍋を持ち、そこに大麦と米を合計三合くらい入れて、お米を研ぐ。
そして次に少し少なめに水を入れて少しの間待って浸透させてから火にかけてご飯を炊く。
次に野菜をっとニンジンに玉ねぎに、サツマイモのような野菜を手に取って賽の目切りにしておく。そしてフライパンを熱して軽く油を引いて野菜たちを入れて軽く炒めて塩コショウで軽く味付けをする。
そうこうしているうちにご飯の方が吹いてきたので、火から離して蒸らしてから混ぜる。
ウサギの肉は腹の部分の骨を外してお腹を開いて野菜炒めとご飯を混ぜたチャーハンもどきのようなものを詰め込む。
次にその詰め込んだ肉の穴を閉じる様に塞いで縫ってから、オーブンの中に入れてしばらくの間焼く。
「さて、このまま後は焼くだけだ。その間にこの街とかちょっと聞きたいことがあるんだが良いか?」
と近くの椅子を引きずって座り、オーブンの中身を見ながら話しかけた。
「は、はい!」
「あぁ。ここから二日ほど歩いた場所にあるグレーの石で出来た建物ってなんだ?ちょっとこことは違う感じがしたからな」
「ここから?あーああの砦ですか?あそこは元々砦だったんですが、今はあんまり重要な砦じゃないから国の軍隊の鍛冶場に改造されているっていう噂です」
それっきり神妙なというか思い出したくないような表情をしているのでそれ以上聞けなかった。
「あ、そろそろじゃないですかね?」
ふとオーブンの中を見ると丁度いい焼き色が付いていた。ふたを開けるとむわっとした熱気と共に香ばしい良い匂いとすっきりとしたミントのような香りが頭を吹き抜けていき、頭がすっきりとした感じがする。
「うわぁああ良い匂いですねぇ。美味しそう!」
と取り出してナイフを取り出し、切り分けようとしていると食堂の中に先程の盗賊衛兵の上司が憔悴しきった表情でやって来た。
「あ”あ”疲れたーあれ?いい匂い」
と足を引きずりながらこちらに歩いてくる様はまるでゾンビのような表情だ。ここに銃でもあれば反射的に撃ってしまいそうなほどそっくりだ。
「あの。申し訳ないのですが、食べ物を分けてもらえませんか?特にそれが気になるんですが」
ちょっとだけ良心が痛むけど、盗賊衛兵に全部の保存食をやられたからな!部下の失態は上司にも係ってくるんだぞ!!
「無理だぞ。これは俺とマキさんの分だからな、それに俺はお前の部下たちに保存食の全てをダメにされたんだからな」
と突き放す!食い物の恨みは恐ろしいんだからな!
「そ、そんなぁああ」
あ、崩れ落ちた。だけどここは心を鬼にして我慢する。
「ところでトーリュオ衛兵長はどのような御用でこちらに?てっきり夕食は終わったものかと思っておりました」
マキさんがこんな時でも冷静に話し返しているのが笑える。
「あ!そうだった!俺は君を探しているんだった!」
「おれ?ですか?」
「ああ、リュース家の会頭がぜひお礼がしたいと言っているので、明後日本店のほうに来て欲しい。とのことだ」
そんなこと言われてもこの街には来たばかりだし、街のなかも知らないしなぁーあ!そうだ!いいこと考えた!
「なぁマキ。お願いがあるんだが良いか?」
マキは不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「俺ってさ、この街に来たばかりで何も知らないんだが案内してくれないか?これを報酬として渡そう」
と俺は鑑別ウサギの皮を取り出して手渡した。
「どうだ?もしかしたら売れるかもしれないと思ってきれいに剥ぎ取っておいたんだが、どうだ?」
とマキの表情を見ると嬉しくて破顔しそうな表情を必死で抑えているような顔をしていた。
「はい!分かりました!では明後日リュース本店に行った後で軽く街をご案内しますね」
遂に顔が崩れた滅茶苦茶笑顔だ。臨時収入なのか?
「俺は知らないんだが、このウサギは高いのか?」
と聞いてみるとはぁ?というような表情をされた。
「鑑別ウサギは別名知恵ウサギと呼ばれていてですね、こいつの肉を食べれば頭のなかがすっきりして考えが纏まると言われています。そしてこの皮はアクセサリーの革やベルトとしてもいい品なんですよね」
へぇーそんな利用方法があったんだー。俺は未だに皮を見つめてにやけ笑いを浮かべているマキと、それを羨ましそうに見つめているトーリュオ衛兵長を無視してローストウサギを切り分けてテーブルに持って行く
「さて、マキさん食べましょうか」
と促す。マキさんは少しトーリュオ衛兵長を見てからローストラビットの前に座った。
盗賊衛兵たちのせいでレトルトカレーが全部と、米が入っていた袋がすべて取調室にぶちまけられてしまったが、辛うじて水が入っているペットボトルと鑑別ウサギの目玉は無事でした。ここはご都合主義です。