総合ギルドと自身のスキル
「で、では私は準備を始めてこよう!!君はここで待っていてくれたまえ!!」
といって息を切らしたまま後ろの扉にタックルして廊下の奥に消えていった。
「・・・申し訳ございません。医務長は珍しいものを見たら周りが見えなくなるのです」
と頭を抱えて恥ずかしそうに顔を覆って謝る眼鏡をかけた医務院。
「…お前、苦労してるんだな」
何だか同情をしたくなる、別の部署にいた俺の同僚の上司もあんな感じの変人だったからなぁ。あんときは飲みに連れて行って大分恨みつらみを吐かせまくってたなぁ。ちょっと前のことなのに懐かしく感じる。まぁでも珍獣扱いされるのは。俺ってそんなに珍獣なのかな?と思って聞いてみると、
「はい。はっきりと申し上げると、貴方は少々以上と言えます」
うーっわ、人のこと異常とかひっどい。
「何がそんなに異常なんですか?」
「まずあなたが今巻かれている包帯を浸している赤い薬ですが、あれはポーションと言って魔法役の一種です」
はぁ。それが?
「ポーションは普通の加工が出来ず、先程の貴方の様に普通の鍋に出して煮立たせるとあっと今に効果がなくなってしまうのです」
なるほどなるほど、・・・え?じゃあ
「更に包帯に浸しても特に効果は見られない。というのが過去の偉人たちが検証した結果。というか一般常識です」
嘘でしょ?マジで?と言う事は。
「そしてもう一つ。実はあなたを此方に運び込んだ際に治癒魔法を掛けさせていただきました」
ふむふう。ほうほう回復魔法なんてものがあるのか。魔法かー興味があるんだけど嫌な予感が。
「しかしあなたには効果がほとんど見受けられませんでした!!」
やっぱりかぁあああああ!!!!!
「本来であればあなたの骨折や、切り傷や青あざなどは直ぐに治るはずだったのですが、貴方の場合」
なんだ?なんだ?
「指先のさかむけが治りました」
え?あ、本当だ治ってる。
「当然ポーションによる点滴や治療も試みましたが、そちらも肌荒れが綺麗に治りました。
あらやだ?本当。お肌がツルツルね。
「ちなみに今回あなたに施したものは本来であれば過剰ともいえるほどの処置です」
などと話していると扉がバーン!!と開いて先程の医務長が髪を振り乱して息を切らして入って来た。
「お待たせ!!!連れて来たよ!!!!」
「はぁー医務長、入ってくるときは静かに入ってきてください。ここは医務室です」
うーっわすごい塩対応だ。目線が氷点下。
そしてその後ろから静かに入って来た物語で出てくるようなイケオジと、背が低くて横はアバが丸太の様に太くてごついドワーフさん?みたいな人と。なんだろ。失礼だけどすっごいモブ顔の漫画の背景でいくつも見るようなインパクトに欠ける様な男性がいた。
「あら?医務長、どうして総合ギルドのマスターたちを連れて来たのですか?別に登録だけなら受付を連れてくればよろしいのでは?」
「い、いやぁーははは」
と頭を掻きながら言葉を濁す。
「まぁまぁ。俺たちはこいつの慌てぶりを見て何に慌てているのか気になってね。其れで着いてきただけだからあまりこいつを責めないであげてよ」
イケオジはやはり声までカッコいい。
「っそうじゃそうじゃ。そんでこいつが件のこいつの興奮原因か」
と顎髭をさすりながら下から俺の体に巻いてある赤い包帯を見つめる。
「ごめんなさい。こんなに押しかけちゃって。僕はダメだと言ったんだけどね」
塩顔の男性がそう謝っている。さっき総合ギルドと言ってたから。おそらくこのイケオジが冒険者的な立ち位置の人たちで、こっちのひげのじいさんが生産職?そんっであっちの腰の低い男性が商人というわけかな?
「あのー医務長?この方々は?」
「おや?わたし、あなたに自己紹介したっけ?」
「いやさっきから話聞いてたらわかるぞ」
「ああ、それもそうだね。じゃあ自己紹介しよう。わたしはショテール領の専属医務官の医務長をしているエピプという。っこれからよろしくね」
「あん?お前自己紹介してなかったのか?まぁいいか俺は総合ギルドの傭兵部門の部門長をしているスティンク・デボラだよろしく頼む」
「なるほどのぉ。子の包帯は面白そうだ。過去の偉人に倣って再びワシも改造してみようかの。あああ、ワシはケイト・トワソンと申す。総合ギルドの生産部門の部門長だ」
「なるほど。もしこの包帯が量産できるのならより軽く沢山運べるな。ポーション瓶だと割れるからな。ああ、僕はヤーディア・シモンだ。総合ギルドの流通部門の部門長をしているよ。総合ギルドについては何か知っているかな?」
あ、よかったー説明してくれるんだ。首を横に振って知らないと否定すると。
「・・・そうか。あの人に聞いていた通りだね。うんじゃあ説明をしようか」
「ちょっと待ったあぁあああ!その前に彼にギルド章発行してあげてくれないか!僕はもう待ちきれないよ!」
と鼻息荒く叫ぶエピプに全員がドン引き。何言ってんの?こいつ。
「そ、そうか。じゃあ仕方がない。君。これに手を乗せてくれるかい?」
と言って出してきたのは小箱で、上半分の水晶玉が埋め込まれてある不思議なものだ。
俺はおとなしく手を置くと、何も起こらなかった。何でだろうか?しばらくこのままなのかな?とそのままで五分ほどすると。ようやく何かカードが出て来ました。
『■■■■■』
は?
「ちょっと見せて?え?名前が表示されてない?」
「いやちょっと待て!下の乱のスキルだけは表示されとる!」
確かにほとんどが黒塗りで潰されていて読めないが、下の方に書かれてある物だけは読める。そこにはこう書かれてあった。
『スキル:既存品合成 調整改造 私物流用 don't give don'tmake』
とあった。それを見たシモンさんは俺に軽く許可を取って一つ一つスキルの名前をタッチした。
既存品合成・・・既存の商品に別の物を掛け合わせることにより強力なものが出来上がる。
調整改良・・・・物のバランスを整えて武器を強力にする。
私的流用・・・・自分が手を加えたものならば誰よりもよりうまく使える。
don'tgive・・・・他者の施しを受けない!という呪いの様なスキルバフや回復魔法の効果や、魔道具の効果が激減する。
don'tmake・・・・自分で一から物を作ることができない。
「なっ!」「こ、これは」「ちょっとかわいそう」
やめて。ここにいる人たちで俺を憐れむような眼で見ないで!
簡単に解説するとポーションを包帯に着けて沁み込ませるという調整をすることで、普通以上に効果が見られたというわけです。
私的流用について・・・ゲーム風に言えば製作者の欄か、改造者の欄に名前があれば使えるというわけですね。
don'tgiveについて・・・ゲーム風に言えば大幅なマイナス補正が加えられるという意味ですね。十分の一か百分の一か見たいな減少率に関しては秘密。