武器の性能と修理の認識
鞘代わりに布を巻いてリュックの横に背負った。出来れば街に着くまでには試し切りと、街に着いたら整備で鍛冶場を借りられないかな?
テントを畳み、ペグを回収してからリュックにしまい、寝ぼけ眼をこすりながら地図を頼りに先に進んでいった。
しばらく進むと小川に着いた。丁度お昼だったので少しそこで仮眠をとろうとほとりに座った。
小川は魚が普通に泳ぎ、飲めそうなほどきれいだ。地図によると・・・川沿いに真っ直ぐ登っていけば街道に着くな。飲むのを我慢して先に進もう。
それからは目の前のペットボトルの水を飲みながら先に進むと、若草色の毛並みのウサギが水を飲みに草むらから出てきた。
試し切りに丁度いいと弱牙咬強を取りだして構える。ウサギは布と剣が擦れる音で耳をそばだてて水を飲むのを止めてこっちを見つめて鼻を小さく動かして臭いを嗅ぐ。
そして何を思ったのか歯をむき出しにして笑い、前脚を少し引き、いつでも動ける体勢をとった。
俺は静かに武器を構えていたが、体の奥で何かがこう動けといっている気がするのでそれに従うことにした。
俺は体から力を抜いて剣先を後ろに構えて、後ろを向いて歩き出した。
俺の行動にチャンスと思ったのかウサギは小さく泣いてから後ろ脚で地面を叩き、駆け出し、何故か横回転をしながら飛んできて、まるでどこかの格闘ゲームみたいだ。
体が自然と動き、直ぐにしゃがみながら体を反時計回りに動かした反動で剣を上から振り下ろした。
振り下ろした剣は回転しているウサギの首を正確にとらえて、ベキベキ、ボキボキという鈍い音がして首がへし折れた。なんだか剣じゃなくて鈍器を振り回しているような感覚だ。
案の定ウサギも短い首があらぬ方向を向いている。よし!今日の夕飯獲れた!ウサギは結構うまいからな。解体もお手の物だ。
俺は直ぐのその場で処理をする。近くの川に行き首を切り、血を水で洗いながら血抜きをする。
そしてある程度血が抜けたところでマルチナイフを使い、皮を剥いで、首を切り取る。
この首、というかなんだかこの歯と目が使えそうな気がするので、空のペットボトルに川の水を入れてその中に浸ける。なんかマッドサイエンティストのラボにあるそうないやな見た目だけど我慢しよう。
さすがに内臓は使い物にならなさそうな気がするので、マルチナイフのシャベルを使って穴を開けて内臓をそこに放り込む。
皮を軽く洗ってラップをする。これで大体の下処理は完了だ。
俺は生肉をラップしておいてリュックに背負いなおして剣の血を拭おうとしたんだが、ちょっとおかしいことがあった。血が一滴も付いておらず流れ落ちていたのだ。
さらにさっきウサギを殴った部分が欠けていて刃になっている。元々は刃のようなものが付いているだけだったから驚きだ。
試しに近くの枝を持ってウサギを殴った場所を使って思いっきり振ってみるとへし折れずにきれいに切り落とせた。さっき草むらで振るったときはへし折れるだけだったが、もしかしてこの武器って使えば使うほど成長の余地がある?
その辺の検証は後でにするとして再び先に進もうかなどんどんと先に行くとようやく人が作った橋の形跡があった。形跡と言ったのは石の柱のようなものが川の中にあったのと、砕けた石畳が乱雑に置かれている事だ。それが数メートルおきに数個あった。奇妙な光景だ。整備とかしないのかな?こんな石橋なんて定期的に整備すれば滅茶苦茶持つような気がするんだけど?
そんなことを考えながら歩いているとその石の柱が新しくなっていくのを見て、材質も荒い石からきれいに切り揃えられた石のレンガになっていく。もうちょっとだ!
ようやく未だに健在の橋を見つけた。これまでにまだ使えそうなというか改修工事すればまだまだ使えそうな感じの橋をいくつも見かけたが、どうして改修しないのかな?直ぐに出来そうだけど。なんてことを考えながら橋を渡り終えると草をなぎ倒し、土がむき出しの道の端で立ち往生している馬車を見つけた。どうやら車軸が歪んだのか動けない様子だ。
面倒ごとは御免ですが、さすがに進行方向に馬車が止められているので、防げないと判断した俺は、絡まれるのを覚悟で馬車に近づいた。
「あ!誰か来た!だけど歩きかぁ」
なんか肩を落とされた。何でだろうか?あんなの近くの樹を切り出して軸にすれば近くの街までは持つんじゃないのか?おそらくすぐに直せると思うんだけど。何で直さないんだ?
「あ、こっち見てるよ?もしかしたら街に助けを呼びに行ってくれるかも!ねぇあなた声かけてみましょうよ!」
「だ、だがなぁ万が一彼が金を持ち逃げされたら溜まったもんじゃない!」
「ですが言ってみるだけ言ってみませんか?」
「そ、そうだなぁ」
と遠くで見ている話しを聞いてみると。、どうやら一家で商人でもしているようだ。チャップリンみたいなクルリと回る髭が特徴的な細身の男性が渋っている。まぁこのまま話しかけてこないならいいか。
と思ってそのまま先に歩いているとしびれを切らしたらしく奥さんがこちらに近づいてきた。トラブルの匂いが強いなぁ。
「あの。そちらの旅のお方。少々お願いがあります」
としおらしく話しかけてきた。仕方がない。
「何ですか?俺急ぐんですが」
よかったーさっき川で体を洗っておいて臭いはしないかな?
「いえ。実は馬車が動かなくなってしまい、申し訳ないのですが、街で助けを呼んでいただけませんか?この馬車の紋章が着けてある場所に行けばすぐに手配していただけるかと存じますので」
と言うが、どうもおかしいな。
「あのー、あの馬車の様子を遠巻きで見たのですが、修理されないのですか?おそらく応急処置すれば近くの街までなら持つかと思いますが」
と言った途端に何故か塩らしい態度だったご婦人が鬼のような形相に変わった。
「なっ!あなたは私たちがそのような貧乏な真似をすると本気でお思いなのですか!!」
え?ええぇええええ!!なんで?こんなこと普通の事だろ?!!
「え?俺の地元では多少壊れたら修理して使うんですが。何かおかしいですか?」
「はっ!あなたのいた国がどのような国は存じ上げませんが、恥をかかないように親切な私が教えて差し上げます。この国では壊れたものは買い替えるのが当たり前で修理するのは貧乏人が使う事ですのよ?!あなたは私たちに恥を書けと言いたいんですの?!」
ごめんなさい。だからそんな鬼気迫るような表情で言わないで。怖いです!
「わかりました!じゃあこれお借りしてもいいですか?連れてきますので!」
と言うと多少溜飲が下がったようで、紋章を渡してきた。
「では頼みましたわよ?!もし逃げたならばあなたは二度と買い物ができないものと思いなさい!私たちリュース家を敵に回したいのならば構いませんが」
と不敵に笑いその場を去って馬車に戻っていった。うん。特大のフラグだな。じゃあサクッとやりましょうか!街に向かって!
とまぁ弱牙咬強は現在は切れるというよりも剣の形をした鈍器に近い印象ですね。一応育つ可能性のある剣というイメージで書いてあるので、今回みたいな感じですね。
それと、この世界ではリサイクル自体はまぁ苦い顔をされますが、認められています。しかし主人公みたいにカスタムや修理はかなり敬遠されて軽蔑されます。