表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第5話 修行

「ハァ…ハァ…ふっ…!」


「だいぶ良くなってきたけどまだまだ剣筋が甘いよ〜!」


 アキトとアオイが冒険者登録をしてから2ヶ月、カエデのもとで2人は修行をしていた。


 カエデはSランク冒険者なだけあって剣も魔法も超一流であり、2人は手加減した彼女に未だに一撃も与えられないでいた。


 俺は木剣を渡され、カエデと打ち合い。

 最初の頃は基礎体力を上げる為に素振り等の基礎練もしていたが、あまり型にハマりすぎの動きも良く無い、という事で早々にカエデとの打ち合い訓練に移行した。


 そして正直侮っていた。いくら冒険者としての実力の基準を知らないとは言え、素人から見ても明らかに常軌を逸した実力を持つ事ということを、身を以て実感したのだ。


 型破りな剣技。しかしどれも正確に、速く、鋭く打ち込まれてくる。

獣人ならではの強くしなやかな身体を活かしながら、攻撃を受けきるのではなく、受け流す。それも受け流した直後に攻撃を確実に入れられる様に、防がれない様に、狙って受け流すのだ。

 剣を持っていると忘れがちだが、殴る蹴ると言った格闘技も織り交ぜてくる。


 アキトがやられた中で半分トラウマと化したものもあった。その時は、なんとか受け流させずに鍔迫り合いまで持っていった時に、カエデがわざと一瞬力を抜いて身体を引いたのだ。それとは逆に押し返す様に力を込めていたアキトは前のめりに態勢を崩した。かなりの力で競り合っていた為に、勢いよく前のめりになったところに思い切り膝蹴りをかまされた。腹に、というより鳩尾に。

「ふぐぅっ…!?」という声を出しながら一発KOで完全ダウンした為、その日の訓練はそれで終了した。


 という感じで、カエデはほんわりした雰囲気に似合わずかなりのスパルタ教師であったが、強い人と戦える、訓練できるという事に対し、正に『血湧き肉躍る』といった心境のアキトは日がな一日カエデと訓練に明け暮れる日もあった。


 また、打ち合い訓練の他にも実は能力制御の訓練も行なっている。

 カエデに俺には魔力がない事や、能力の事を話した結果、その能力は強力な武器になる、魔法の代わりになるかも知れないという事で能力制御の訓練も始めたのだ。


カエデ曰く、

「生命エネルギーを生産し続けて、他のエネルギーにも変えられるって事は、生命エネルギーのまま純粋に身体能力を補強する事も、魔法みたいに電気とか光とかのエネルギーにも変えられるはずだよ〜」

とのこと。


 地球じゃそんな事試した事も無かったので出来るのか不安だったが、エネルギーの変換は案外簡単に出来た。

 生命エネルギーから電気エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー、核エネルギーの変換に成功した。 他にも様々なエネルギーに変換できた。

 だが、核エネルギーだけは変換効率が悪かった。


 通常アキトの能力のエネルギー変換は等価交換であり、例えば10の生命エネルギーを10の電気エネルギーに変換する事が出来る。これは光も熱も同様だった。

 しかし核エネルギーだけは、生命エネルギー100でようやく1の核エネルギーに変換することができるのだ。

 最初は何故ここまで変換効率に差が出たのか不思議だったが、核エネルギーの変換修行中に2つ気づいた事があった。

 1つ目は、核エネルギーは変換した後、更にいくつかの性質に変化させる事が可能であること。

 2つ目は、核エネルギーが他のエネルギーと比べて遥かにパワーのあるエネルギーだということ。


 1つ目のいくつかの性質に変化させる事が可能と言うのは、核エネルギーを更に変化させて放射線に変えたり、通常より更に強力な熱エネルギーに変えたりする事が可能なのだ。前者は危険すぎて扱えないが、後者はうまく扱えば膨大な熱エネルギーを生み出す事が出来るので何か役に立つかも知れない。


 2つ目の他のエネルギーより遥かにパワーがあるというのは、100に対し1しか核エネルギーに変換出来ないのにもかかわらず、1の核エネルギーの威力は凄まじく強力だった。

 エネルギーの変質さえしなければただただ単純に、とんでもなく強力なエネルギーだったのだ。


 やっとの思いで生み出した核エネルギーを手で握り込み拳に薄く纏う様にする。しゃがみこみ、そのまま軽く地面をコツンッと叩いたら、衝撃と共に地面にヒビが入ったのだ。これにはカエデと顔を合わせて驚いた。

 一回の変換コストは重い代わりに高威力と、正にハイリスクハイリターンなエネルギーだった。



 アオイの方はというと、最初はひたすらカエデの家の魔導書を読み漁り勉強していた。

 俺とカエデが打ち合いしてる側で魔力制御の練習をしていたり、魔法の詠唱の練習などをしていた。

 魔法はどうやら発動させる時に込める魔力の量で同じ級の魔法でも威力に差が出るそうだ。


 お試しで初級魔法までしか扱えない風魔法を唱えた時は、どれだけの魔力を込めたか分からないが森の一部が禿げ散らかったとのこと。

 本によると本来の初級風魔法は木を1〜2本スパッと切るレベルの威力らしいが、星渡りの恩恵を受けたアオイに常識は通用しなかった。


「はぁぁっ!《炎の矢"フレイムアロー"》!」


「まだまだぁ!《風刃"ウィンドブレード"》!」


 途中からはアキトとの訓練と交代交代でカエデがアオイの魔法訓練に付き合っていた。

 アキトとの打ち合いもこなしながら休まずにアオイに魔法も教えてるあたり、無尽蔵スタミナお化けか?と思わざるを得なかった。

 また、どれだけ魔法修行をしても魔力が底を尽きないアオイにも驚かされた。


 こちらで言う打ち合いを魔法訓練でも行なっており、側から見たら凄まじい迫力で見てる分には楽しかった。

 が、こんな鬼気迫る勢いでやってるのは、訓練で怪我をしたならそれはそれでアオイの治癒魔法の練習にもなるからと、どこまでもカエデがスパルタだからである。


 こんな可愛らしい見た目してるのに苛烈だ、なんて言ったらカエデに殺されてしまうかも知れない…。


「ん〜?なんかアキト君失礼な事考えてない〜?」


(鋭いっ!!怖いっ!心でも読んでんのか!?

そのジト目で見るのをやめて下さいッ!!)


「イエイエソンナ、キノセイデスヨー」


「ふーん?まぁいいや、今日の修行はこのくらいにしよっか!夜ご飯食べよ〜!」


そんなこんなで3人の修行の日々は過ぎていった。


 そうして半年経った頃には、アキトは自分の能力をある程度コントロール出来るようになっていた。平常時の能力制限などのデメリットは残っているが、一応対策は考えている。

 アオイの方も魔法訓練をほとんど終了しており、上級までなら無詠唱で発動可能、込める魔力量で細かく魔法の規模を調整できる様になっていた。

 最上級魔法も使えるようになっていたが、こちらは詠唱が必要で、威力調整も難しいらしく苦戦していた。


 Dランク昇格試験に受かる為にはどの程度修行すれば良いのだろうか。この時は皆目検討が付かなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ