新たなる敵
ピピピピッピピピピッ
目覚ましの音が聞こえる。頭の上に手を伸ばす。しかし上にあるのは壁だけだ。そういえば俺は異能学園の寮にいるのだった。目覚まし時計はブライオスが管理しているんだった。
「みんなおはよー。」
眠い体を引き起こし、挨拶する。
「お早うでごわす。」
「お前らはやいなー。」
続けてブライオスと濱口が起きる。濱口の声はとても眠そうだ。
「いや別に早くはないだろ。」
「ん?今昼の7時でしょ?」
濱口が意味のわからないことを言い始める。昼に7時などなかった気がするのだが。
「お前ちゃんと起きろよ。完全に思考がおかしいぞ。」
指摘するが濱口の声がしない。これは寝てしまったな。
「<衝撃>」
ズゥン!!とベッドの下段から衝撃を感じる。
「うおあっ!?敵襲か!?!?」
どうやら起きれたようだ。
「おはよう。」
「何だ水原か。って朝から攻撃してくんじゃねえ!!」
「ごめんごめん。」
「ははは、水原氏は濱口氏の扱いに慣れているでごわすな。」
「それにしても、水原氏は強いですな。ひょっとして異端者だったりするんでごわすか。」
「いや、俺たちは異端者じゃないぞ。ブライオス達はどうなんだ?」
「拙者達も異端者じゃないでごわすよ。」
なるほど。二人とも異端者じゃなくてこの強さとは大したものだ。
「というかなんだよ俺の扱いって!!」
濱口がツッコむ。
そんな中、俺たちは声が一つ少ないことに気づいた。
「む、そういえばレオナルド氏の声がしないでごわすな。」
「おっ寝坊か〜?」
「寝坊しそうだったお前が言うなよ。」
そう言いながら部屋の電気をつける。そして俺たちの目に映ったのは、だらしない格好で寝ているレオナルドだった。
「なあ濱口。」
「ん?なんだ?」
「こいつがバカにしてた電子レンジをやってやろうぜ。」
「名案だな。」
俺たちは何かを企むような顔でレオナルドに近づく。
「むむ、お主ら何をするでごわすか。」
「まあ見てなってブライオス。」
ブライオスと一緒にレオナルドの服がはだけた腹の部分に手を伸ばす濱口を眺める。
ジュゥゥゥゥ。そう聞こえたと同時にレオナルドが叫んだ。
「うおおおおおおあああああっっつ!!!!!!なんだなんだ!?!?!?」
「濱口を超えるおはようだな。」
「濱口お前何した!!」
「お前がレート4ってバカにした電子レンジだぜ!!」
「くっそお前!!!」
レオナルドが手に電気を走らせる。
「レオナルド、落ち着くでごわすよ。」
ブライオスが止める。
「まあいい。じゃあもし明日俺よりも濱口が起きるの遅かったら俺が起こすからな!!」
「いいぜ!!」
きっとどちらも自分じゃ起きれないだろう。
そして俺たちは食堂で朝食を食べた後、登校した。
俺とその隣の葵の席にシャロルと葵が、シャロルと濱口の席に見知らぬ少女二人が座っていた。
「あ、おはよう。」
「おはようですわ。」
教室に入った直後に俺に気づいた葵とシャロルがあいさつしてきた。
「あ、おはよう。この二人はルームメイトの…」
ブライオスとレオナルドについて説明をしようとた、その時だった。
「「きゃあああああ!!!水原様あああああ!!!」」
大きな声をあげながらその見知らぬ少女二人が走ってきた。見ない顔だな。おそらく別のクラスから遊びにきた生徒だろう。
「わ、私、雪村恵梨香です!!!!」
「私は田尻美香です!!!!」
二人が言う。
「え、えっとどんなご用件…」
「きゃあああ!!生声聞けたこれ以上聞くと死ぬううう!!!」
「きゃあああああああ!!生声やべええええ!!」
そう言いながら二人の生徒は走り去って行った。
「何だ今の…」
「え、えっと今のは私たちのルームメイトの二人よ。なんかごめんなさいね。」
葵とシャロルも部屋が同じだったのか。どうやら同じチームだと同じ部屋になりやすい傾向があるのだろうか。
「お前ら大変そうだな…」
「ところでそちらの二人は誰かしら。」
「ああ、この二人はルームメイトのレオナルドとブライオスだ。」
「よろしくな!!」
「よろしくでごわす!」
「ええ。よろしく。」
俺とシャロルと濱口と葵が席に座り、俺の隣にレオナルドとブライオスが立つ。
「それにしてもあいつらすげえテンションだったな!!」
濱口が言う。濱口もなかなかにうるさいと思うが。
「昨日からずっとこうなんだよねー。」
葵が言う。
「あいつら昨日からってまさか寝てないのか!?」
「寝たには寝たけれど1時間程度ね。」
「お前らそれでよく生きていけるな!!!」
「お前は寝すぎだ。」
「そういえば明日は俺が起こしてやるからな!!」
俺がツッコんだ後、レオナルドが言う。
「レオナルド氏もかなりよく寝坊するでごわすよ。」
レオナルドの寝坊癖を知らないシャロルと葵に説明するかのようにブライオスが言う。
「それでも明日こそは濱口に勝ってやる!!」
「いや、また俺が勝つな!!」
「いいや、俺だ!!!」
「俺だね!!!」
「オレだよオレオレ!!」
「カフェオーレ!!」
「俺はバナナオレ派だ!!」
「何言ってんだよいちごオレが一番だろ!!!髪だけじゃなくて好きな飲み物も黄色いのかよ!!」
もはや趣旨が変わり始めている。
「ん、机の中に何か入ってるわね。」
シャロルが机の中から変な赤い模様が描かれた紙を出す。
「ん、何だそれ。」
そう言いながらよく目を凝らす。すると赤い模様が光りだし、その光はだんだんと強くなっていく。
おそらく普通の紙ではこの光は出せない。ではどうやって……
異能か!!
「今すぐ離せ!!<念力>!!」
念力でシャロルの手から無理やり赤く光る紙を引き剥がす。すると勢い余って教室後方に向けて飛んだ紙が余った椅子が重ねられてストックされている所へ飛んでゆき、一つの椅子に張り付いた。
その直後。赤い光が一瞬強まったと思うと、黒い煙のようなものに椅子がみるみる包まれてゆく。
「なんだなんだ!?」
バナナオレについて熱演していたレオナルドが驚きの声を上げる。
次第に黒い煙は晴れてゆくが、煙の中にあったはずの椅子が消えている。
「椅子が…消えましたわ…」
シャロルが驚愕する。
誰の目にも椅子が消えたように映っていたらしく、それに反論する者はいなかった。
「まさか誰かがシャロルちゃんを消そうとしてたのか!?」
濱口が言う。
「いや、恐らくどこかへ転送されたんだと思う。きっとシャロルを手に入れようとする者がやったんだ。」
また”クロニクル”か。一体この教室に何人いるんだ。
「”模擬戦に行く時にもう教室に戻らないから鍵かけますね”と先生は言ってた。鍵がかかっている教室は神の力で守られているから、模擬戦の後に教室に入れる人はいない。模擬戦に行く最後にシャロルは机の中を確認していたからその紙は朝入れられたんだ。」
俺がみんなに向けて言う。
「確かに最後に私机の中見てたけど…まさかそれ見てたんですの?」
シャロルが問う。
「ああ。お前のことはいつも見てるぞ。」
いつクロニクルが襲ってくるかわからないからな。彼女のことは注意しておく必要がある。
「な、なんでよ!ばか!!」
なぜか怒られた。なぜだ。
「あ、私そういえば今日一番早くこの教室に来たよ。私が鍵開けたの。」
葵が言う。
「そういえば空色さんはお財布を教室で落としたから早くみつけなきゃと言ってかなり早くに寮を出てましたわ。」
財布を落としたか。葵らしいな。
「結局お財布は引き出しに教材と一緒にいれちゃってたんだけどね。でも私シャロルちゃん達を待ってたからずっと入ってくる人を見てたけど、シャロルちゃん達が来るまでSクラス以外の人は来なかったみたい。」
「私たちが話してる時もSクラスの人しか来てませんでしたわね。」
「きっと俺たちが入り口で話してる時に入れたんだ。となるとこの教室にいる人にしかできないから、Sクラスの中にこれを仕掛けた人がいるね。」
マルクを見て仕掛けてくる奴はいないだろうと願望程度に思ってはいたが、やはりSクラスにまだ”クロニクル”と繋がってる奴がいたのか。
「ってことはあの異能を手掛かりに犯人をつきとめる必要がありそうだな。それでも俺はSクラスのほとんどの人の異能を知らない上、あの異能を持っている人と協力してやったという可能性もあるからな…」
そう言う俺にレオナルドが言う。
「あ、それなら俺いい異能を知ってるぞ。」
「ん?どんなだ?」
「おれの友達のオカルト研究部の部長が持ってる異能なんだがな…」
オカルト研究部の部長…?俺はそんな部活すら知らなかったぞ。レオナルドは人と仲良くなりやすそうだとは思っていたが、そんなところまで縁があるなんて…
「記憶検索の異能だ。」
記憶検索というと名前からして対象の記憶を探る能力か。確かにそれならあの能力についての記憶があるかないかで白黒つけられるな。
「あの能力は条件つきだが直接対面していなくても任意の人物の記憶を探れるんだ。」
実際に会わなくても探れるのか!!かなりいい異能だな。
「そいつに会うことはできるか?」
「多分放課後なら部室に行けば会えるはずだぜ!」
「決まりだな!」
そうして俺たちは放課後にオカルト研究部へ行くこととなった。
授業中には特に目立ったようなことはなく、すぐに放課後が訪れた。
「よし!じゃあオカルト研究部行くか!!」
レオナルドが言い、俺たちはレオナルドについていく。
「怖い置物とか置いてないといいな…」
「あんま置物とか見ないようにすれば大丈夫だよ。」
「そうよ空色さん。怖がる必要はないわ!」
「オカルトでごわすか。どんな研究がされているんでごわすかね。」
「おもしれえ研究があるといいなあ!!」
「シャロル、意外とお前が一番怖がりだったりするんじゃないの?」
ちょっと煽ってみる。
「そんなわけないでしょ!!!べつにお化けとか怖くないわよ!!!!」
めっちゃ否定してきた。怖がりだと思われるのが嫌なのだろうか。
そんないつものような会話をしながら階段を降り、歩いていると、
Sクラスがある3階の一つ下の階、2階の廊下の突き当たりが見えて来た。
「ここがオカルト部だぜ。」
レオナルドが突き当たりの扉を指差す。扉はクラスがスライド式なのに対し、手前に開く片開きのドアだった。
「おじゃましまーす。」
レオナルドが扉を開けて入って行くのに続き、俺たちも入ってゆく。入ってすぐのところは左右が黒いカーテンとなっていて、少し進むと右と左に道が分かれている。どうやら右が倉庫で、左が活動場所のようだ。
「うぎゃあああああっっっっ!!!!」
真後ろから突然シャロル悲鳴が聞こえる。
「大丈夫か!!!」
すぐ振り向くがシャロルに特に異常はない。
「む、虫におどろいただけよ…」
恥ずかしそうに言う。どうやら本当に怖がりだったようだ。
そして活動場所の方へ進み、開けた場所に出ると、奥にある横に長い机に人が一人座っていた。
「あれが部長の山田太郎くんだよ。」
そう言い指さされたオカルト部部長は超絶普通な名前とは裏腹に、目にはくまができ丸メガネをかけていて前髪がメガネにかかりそうなくらい伸びているという明らかに普通じゃない外見をしていた。
皆彼をみてどんな反応をしているのだろうと思い、後ろを見てみる。
「おお、意外といい造りをしているでごわすな。」
「へぇー、こここうなってんだー。」
濱口とブライオスは部屋に飾っている置物に夢中だった。
「大丈夫、怖くないよ。怖くない怖くない。」
シャロルは自分に言い聞かせるように置物を不気味に思う葵に言っていた。
どうやらレオナルドと俺しか彼のことをまともに見ていないようだ。
「あ、山田くんですか、今日はちょっと調べて欲しいことがあって来たんですけど…」
「全然いいよ。僕暇だからね。」
暗めな声で返事が返ってくる。やはりオカルト部は暇なのか。
「紙とかに仕掛けて、それに触れたりすると起動して椅子とか人とかを転送させたりとかをできる能力について知ってる人がいないか調べられるか?」
レオナルドが聞く。
「ああ、それなら異能のレートと顔と名前がわかってる人たちの記憶からなら調べられるよ。」
山田くんが答える。どうやらその人の顔と名前とレートを知ると特定のことがらに関する記憶が調べられる、といった感じの能力のようだ。
「オッケー。」
そう言い、レオナルドは懐から顔写真付き名簿のようなものを出す。一体何故そんなものをもっているのだ。
5分程度レオナルドと山田くんのやりとりを待つと、二人の作業が終わった。そしてレオナルドが話しかけてくる。
「俺がレートを知らない6人の生徒以外はみんな調べたんだが、引っかかった奴が一人もいなかった。」
と、言うことは…
俺とレオナルドは声を揃える。
「「その6人の中に犯人がいる!!」」
さて、一体どんな6人なんでしょうか。




