Sクラス
教師主催の自己紹介を終え、俺たちは4人かたまった席についていた。
「ほうほうシャロルさぁん、どこの馬の骨かもわからない奴に決闘で負けたらしいねぇ。」
あからさまにうざい煽り口調で後ろから話しかけて来る。
きっと彼も貴族なのだろうどうやら知り合いのようだ。
「なによ!私の戦いも見てないくせに!貴方だったら一捻りよ!」
「レート170程度がよくそんな口をきけたものだな!俺はレート260だ。」
「貴方に私が劣ると…!?」
「ああ、お前のような雑魚は雑魚の下についているのがふさわしい!」
ん?それ俺まで雑魚じゃね?まあいいか。
「おいお前、俺とシャロルのことを雑魚と言ったな。」
「ん?なんだよ庶民、雑魚を雑魚を言って何が悪い。」
「たしかマルク・リボルグと言ったな。」
「そうさ!リボルグ家が誇るエリートのマルクだ!!」
態度が太陽並みにでかいな。
「どこの貴族だか知らんが俺らに喧嘩を売るということは相応の覚悟があるんだろうな。」
「もちろん!いつどんな戦いをする覚悟もできている!!」
こいつの目には覚悟がない。シャロルの目とは大違いだ。権力に溺れたか。
「そうか。」
呆れた口調でマルクに言い残し、席に戻った。
「この俺にそんな口を聞いたこと、覚えておけよ!」
マルクも席に戻った。
この学園にはどうやら外国人が多く存在するようだ。他の国の学校では受けられなかった分の生徒がこちらに来ているのだろうか。だとすると先生に外国人がいるのは外国人が疎外感を得ないようにするためだろう。
休み時間が終わり、教師がまた教室に入って来る。
「はい、みなさん。まずはこの学園の行事である”模擬戦”について説明します!」
先生が話し始める。
「まずチームとはご存知ですね。異能者をつき従えるものをリーダーとし、従う側をメンバーとしたグループのことです。」
「模擬戦とは4人以上の生徒を従えているリーダーが他のチームに宣戦布告し、戦うというものです!」
「<決闘>とは違い、何も賭けないで模擬戦を終わることもできるだけでなく、勝利条件はどちらかのリーダーが降参を認めるか戦闘不能になるか、また、どちらかのメンバー全員が降参を認めるか、戦闘不能になるかと決まっています。<決闘>と同じで、模擬戦中に死者が出ても神の力で元どおりです。」
なるほど。てっきり<決闘>とかで死んだら本当に死ぬのかと思っていた。死んだら死んじゃうのは確かに不便だからな。
「模擬戦は週に1度、月曜日に行われ、模擬戦用フィールドが用いられます。」
「みなさん、何か質問はありますか。」
「はーーーい!!!!」
濱口が勢い良く手を上げる。
「なんでしょう。」
「あるチームのメンバーがチームを作ることってできるんですかー?」
なるほど。鋭い質問だな。これができれば大規模なチームを小部隊に分けることもできる。
「できまーす!」
なるほど可能か。今後チームが大きくなったらやってみるか。
「Sクラスにはもう何人も付き従えている人が多いので、今日もう模擬戦やっちゃいまーす!!」
軽いな。濱口と同じ匂いを感じる。
「じゃあ模擬戦やりたい人挙手!!」
そう先生が発言するのと同時にマルクが手を挙げた。
「おっ、マルク君。誰に決闘を申し込みますか?」
先生がそうたずねると、案の定俺の方を指差して来た。
「こいつです。かけるものはシャロル・セイクリッドを従わせる権利です。」
「えっと、水原凱斗くんだよね!受け入れますか?」
なるほど。しかしここで受け入れないと今後嫌がらせをしてくる可能性が高い。受けない手はないだろう。
「もちろんだ。ただ、ここで負けたら二度とシャロルに関わるな。」
「ああ、吠え面かかせてやるぜ!!」
マルクが言っている。
「模擬戦は放課後となりますので、ひとまず授業に入ります!」
授業では、普通の高校生と同じ授業をしていたが、1日2限だけ「異能研究」という授業になっていた。
その授業では、異能がなんのためにあるのか、どんなものがあるのかを解説していた。
「まず異能とは、神が我々人に渡した力で、全ての異能を持つ人を異能者が支配することで、神の次世代になれるというものです。」
ほうほう、それが目標とやらか。それにしても神になれるとはすごいな。
「異能には炎や水、風や大地など、その人が好きなものや触れて来たもの、その人と相性のいいものが選ばれます。」
なるほど、濱口とか結構イメージ通りだったな。
「異能の効果は実際に使って見ないとわからないため、実は自分が思っていた異能とは違ったという場合も存在します。」
自分にもわからないのか。とすると自分の力を知っている俺は有利だな。
「また、先週以前に異能に目覚めていた”異端者”もおり、その人たちは強力な異能を持っている傾向にあります。」
シャロルやマルクのことだろう。
「神の姿は様々な伝承がありますが、現在はこの女神の姿というのが最も有力な…」
「それは違うな。」
あ、また心の声が出てしまった。
「ではどんな姿だというのですか。」
「姿は80代程度の男性のおじいちゃんの姿で、ヒゲが長い印象があります。」
「それはありえませんね。そのような説は聞いたことがありません。」
あれ。おかしいな。
「お前変な夢でもみたんじゃねえの!」
マルクが言ってくる。まあ仕方ないか。きっと神を見たのは俺だけなのだろう。
とうとう放課後になり、模擬戦をやることになった。
「雑魚どもが、一掃してやる!!」
マルクが言い、その後ろの部下達が蔑むような目でこちらを見てくる。
「雑魚どもはお前らの方だ!!!」
突然濱口が言う。どう考えてもお前が一番弱いだろ。
ー模擬戦がまもなく開始します。武器を手に取り、所定の位置に着いてください。ー
腕輪が言う。
濱口とマルクが剣を取る。
模擬戦のフィールドには森や砂漠、市街地や草原など様々なエリアがあり、2km四方程度だった。
俺たちのチームは森エリアからのスタートになった。
「まずは索敵からだ。模擬戦ではおそらく先に敵を見つけた方が有利だからな。」
とはいえどう索敵をすればいいのだろうか。空を堂々と飛んでいてはこっちの方が見つかってしまうだろう。
「それなら誰かが敵をおびき寄せて<会話>で位置を伝えると言うのがいいんじゃないかしら。」シャロルが提案する。
確かにそれなら手っ取り早いだろう。
「じゃあ俺が囮になって敵の位置を探る。俺がおそらく一番レートが高いからな。」
「気をつけてね?」葵が心配そうにこちらを見る。
「大丈夫だよ。」皆に言う。
「じゃあお前がいない間二人は俺が守っとくぜ!」
「じゃあシャロル、俺がいない間二人を守っといてくれ。」
「ええ、もちろんよ。」
「俺の話を無視するなぁーー!!」
こいつらならきっと大丈夫だろう。
「<身体強化>」
前に日常生活を異能で送っていた時の応用技だ。体を異能で動かすことにより通常以上の力が出る。
「じゃ、行ってくる。」
さて、敵がどこにいるかだが、この森地帯に隣接しているエリアは後ろに草原、右に市街地、前に砂漠だ。
模擬戦が隣接したエリアから始まることはないため、最初は市街地エリアに向かうべきだろう。
その後、市街地エリアのビルの上からマルクたちを観察する。
よし、市街地エリアのビルに着いた。
「<望遠>」
昨日ちょうど覚えたばかりの光を屈折させて遠くを見る技だ。
「マルク達は…」
湿地帯に何人かの影を見つける。
「よし、あれだな。」
ここは一気に畳みかけよう。
「<身体防護>」
これも昨日習得した、圧縮空気を体にまとわせて耐久力を増す技だ。
「<加速>」
「おりゃぁ!」
ビルからものすごい爆音が聞こえ、一つの影が湿地帯に降ってくる。
ドゴォォォォォォン!!
爆音が鳴り響く。
「な、なんだ!?」
「皆無事か!?」
部下達の声が聞こえる。
おそらく防護系の異能が使える人が異能で防護していたのだろう。
「敵だ!!」
さて、敵はどんな異能を使うのだろうか。少し遊んでやろう。
「<重力加速>!!」
これは驚いたな。俺と同じ技か。
「<反重力>」
技を相殺してやる。
「何!?俺の奥義が!!」
「<重力加速>」
「ぐああぁぁぁぁぁ!!!」俺が使った重力加速に俺に重力加速を使った敵が潰される。
これが奥義とは可哀想だな。それにしても奥義…みんなそのようなものがあるのだろうか。
また新たな敵がこちらを向く。
「<風刃>!!」
空気の防護で風を弾く。どうやらこいつらでは俺の防護を超えられなさそうだ。
「<風刃>」
風を無理やり吹き飛ばす程度なら俺にもできる。
「がはぁ!!」敵が倒れる。
「ほほう、あいつの攻撃も耐えた上に同じ力をさらに強く放って倒すとは…だが!!」
解説乙。俺が言う手間が省けた。
「<攻撃強化>!!」
「喰らえ、俺の<鉄拳>を!!」
直接攻撃か。しかし。
「<反射>」
ガキュゥゥン!!すごい音とともにパンチを繰り出した人が回転しながら吹き飛ぶ。
物理法則を操れる俺にそんなもろ物理な攻撃、効くはずがないのだ。
「<氷の槍>!!」
後ろから氷の槍が飛んでくる。これでは身体防護では防げないだろう。しかし。
「<反射>」
ガキュゥゥン!!すごい音とともに飛んできた槍がどこかへ飛んでゆく。
正直反射できるものは全部これで防げるのである。
「反射…強い力だな…」
パンチをしてきた人がまだ生きている。
「それならこれでどうだ!!おいデルア!」
聞いたことない名前だな。おそらくDクラス辺りの生徒だろう。
「おうよ!!」
「「<氷の鉄拳>!!!!」」
連携技か。俺も今度仲間とやってみたいものだな。
というかこいつらはアホなのか。
「<反射>」
ガキュゥゥン!!すごい音とともにパンチを繰り出した人が回転しながら吹き飛ぶ。
「くそっ、これなら…!!」
タフだな。
「「<氷の鉄拳氷の槍と共に>!!!!」」
もはやどこかの高級レストランの料理名である。
「<反射>」
ガキュゥゥン!!すごい音とともにパンチを繰り出した人が回転しながら吹き飛ぶ。
ガキュゥゥン!!すごい音とともに飛んできた槍がどこかへ飛んでゆく。
「くそう、それなら!!」
こいつらもうだめだ。
「はいはい<重力加速>。」
脳筋野郎とデルアとかいう奴が地面にめり込んでゆく。
「くそう、まだまだ…!!」
こいつタフすぎるだろ。軽く10Gはかかってるぞ。
「じゃあ<超重力加速>。」
ドゴォォォン!!!すごい音と共に彼らがぺちゃんこになる。
100Gだ。そりゃ耐えられまい。
「これで終わりか…」
ん!?そういえばマルクの姿が見えない。最初はここにいたのが5人だったのに気付いたら4人になっている…!!
「クソッ!!これが狙いか!!<加速>!!」
そう言いながら超速で森に戻る。
その頃森では。
「かいとくん大丈夫かな…」
「あいつなら大丈夫だろ!!」
「おそらくマルク達は二つ以上先のエリアにいるわ。ここにいればきっと安全よ。」
「それはどうかなぁ?」後ろからマルクの声が聞こえる。
「何!?あなたどうやって!!」
「お前と違ってぇ、そんな簡単に人に能力バラすようなことしないんですよねぇ。」
煽り口調でマルクがシャロルに言う。
「<地獄の炎>!」
マルクに向けて炎が飛んでゆく。しかし。
「こっちだよお!!」
マルクが持っていた剣を振りかざす。
「危ないっ!!」
葵がシャロルに手をかざし、シャロルの頭上の空間を切り取る。
切り取られた空間は一瞬で埋まったが、マルクの剣を防ぐことに成功した。
「助かったわ。」
「私だって毎日鍛えてるんですよ。」
葵が言う。
「隙あり!!おりゃああああああ!!」
濱口が剣で斬りかかる。
「甘い。」
マルクが剣を避け、濱口を蹴り飛ばす。その瞬間、濱口の姿が見えなくなった。
「マルク!彼に何を!?」
シャロルが消えた濱口を見て驚きの声を上げる。
「何、少し退場してもらっただけだ。」
「<双龍業火>!!」
シャロルが再びマルクに炎を放つ。
するとマルクはシャロルの後ろに居た。
「また後ろに…!!」
シャロルが驚きの声を上げる。
「危ない!!」
葵が再びシャロルの後ろの空間を切り取る。
しかし。
「二度同じ技は喰らわねえよ!!」
マルクが今度は葵の後ろに居た。
「きゃああああ!!」
葵が背中を斬られる。
「空色さんっ!!」
「ほら、お前のせいでまた友達が一人死んじゃったぁ。」
「うるさいっ!!」
「<撃滅地獄超火>!!」
今度は体の周囲に炎を纏った上、マルクに攻撃した。
「少しは学ぶじゃないか。」
マルクは炎の範囲外へ逃げる。
「これでそこに倒れてる奴の死を無駄にしたら今度こそ友達いなくなっちゃうかもな。ぎゃはははは!!」
マルクが笑い声を上げる。
「そんな…私はまた…」
シャロルの顔が絶望に染まる。
「だいたいお前は目障りなんだよ!!何が”器”だ!!俺の方が強えじゃねえか!!なのにあの方は…」
「あの方…?」
「おっと、少々口が滑りすぎた。じゃあな。」
マルクがちょうど炎が消えた直後、シャロルの背後へ移動し、シャロルに斬りかかる。
「きゃぁああああ!!」
刃がシャロルの背中にとどこうとしたその時。
ガキュゥゥン!
一瞬黒い障壁のようなものが現れ、刃が防がれる。
「最後の抵抗か。じゃあな!!」
再びマルクが剣をシャロルにふりかざす。
しかし、剣は進もうとしない。
「何!?!?」
「どうやらギリギリ間に合ったようだな。」
メンバーが全員戦闘不能になれば俺たちの負けとなっていた。どうやら俺がマルクの下っ端を倒しても勝負が続いたのはどこかにもう一人、下っ端を隠して居たのだろう。
「水原…!!」
「待たせたな、シャロル。」
「もう来ないかと思ったんだから。ばか。」
「でも来れたぞ。」
「見ればわかるわよ!」
「よくも邪魔しやがって!!」
背後にマルクがとんでくる。
「なるほど、お前の能力は瞬間移動だな。」
「<反射>」
マルクの剣が弾かれる。
「ああそうだよ!このクソ女め!仲間に戦わせて自分はただ眺めてるのかよ!!」
「別に俺はシャロルに戦わされているわけじゃない。ただこいつの目に灯る覚悟が本物だったから協力してるだけだ。」
「それなら俺にだって覚悟くらいは!!」
「お前に覚悟はない。俺は人を見る目があるからわかるんだよ。」
「クソッ!!俺を怒らせたことを後悔しろよ!!」
マルクが地面の石を拾い上げる。
「<物体移動>!!」
ガギュン!という音と共に俺の腹の横に石が出現する。
「何!?」
マルクが驚きの声を上げる。
おそらく俺の体内にでも石を移動させたのだろう。
「残念だったな。俺の体は俺の力で常に外傷を受けないよう保たれている。そこに石を転移させてもはじき出されるのは当然だ。」
「クソッ!!」
俺を倒すことを諦め、地面に座っているシャロルの横に移動する。
「ほらみろ、お前には覚悟がない。」
「<念力>」
転移したマルクをこちらへ引き寄せる。
「次勝手に転移したら命はないと思え。どうせ転移できる範囲は限られているのだろう。遠くに転移してもすぐお前を捕まえに行く。」
マルクの顔が恐怖に染まる。
「さっき俺を怒らせたことを後悔しろと言ったな。それはこっちの台詞だ。」
「早く殺せ!!」
マルクが言う。
「そんな簡単に死ねると思うなよ。今の俺は優しくないんだ。」
そう言いマルクに手をかざす。
「ヒィッ!!」
マルクの悲鳴が森に響く。
マルクくんは一体どうなってしまうのでしょうか…




