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二つの地獄

何本もの真っ白な槍が膝を着いたシャロルに飛んでゆく。


誰もがみてもシャロルの負けだと断言できるような状況で、シャロルが不気味な笑みを浮かぶ。


「ふふっ、全くあいつの言った通りじゃない。」


シャロルが小声で言うと、真っ白な槍に向けて手をかざす。


「<地獄(ヘル)業火(フレイム)>」


ゴォォォォッッ!!と凄まじい音が鳴ったかと思うと、真っ白な槍は空中で黒い炎に包まれ、消滅した。


「貴方に切り札があるように、私にも切り札はあるわ。」


むくっとシャロルが立ち上がる。


「まだそんな力が残ってたのね。<超冷氷弾(フリージングアイスバレット)>。」


真っ白な氷が空中にいくつも創り出され、シャロルに向けて飛んでいく。


「<地獄(ヘル)業火(フレイム)>」


真っ白な氷が黒い炎に包まれ、消える。


「絶対零度の氷をここまで容易く消すなんて…」


女が驚く。


「どんなに物を冷やしたって絶対零度が限界。でも温める方に限界はない…!<地獄龍炎(ヘルドラゴンフレイム)>!!」


暗黒龍とも呼べる真っ黒な炎でできた龍が女に向けて飛んでゆく。


「<超冷氷盾(フリージングアイスシールド)>!!」


真っ白な氷の盾が貼られるが、それは一瞬で砕かれた。


「こうなったら…!<極度凍結(エクストリームフリーズ)>!!!」


女が唱えると、暗黒龍は炎でできているのにも関わらず凍結され、消滅した。


「私が奥義とする3つの技の内の一つを使わせるなんてやるわね。」


女が言う。


「へぇ。やっぱり貴方にも奥義はあるのね。奇遇なことに私も3つ、奥義を編み出したのよ。」


シャロルが言う。


「是非見せてもらいたいものね。<超冷氷弾(フリージングアイスバレット)>。」


真っ白な氷の弾が宙に浮かぶが、シャロルの方に飛んでこない。


「<超冷氷槍(フリージングアイススピア)>」


真っ白な槍が宙に浮かぶ。


「<超冷氷剣(フリージングアイスソード)>」


真っ白な剣が宙に浮かぶ。


「攻撃してこないならこっちから行くわ!<地獄業火弾(ヘルフレイムバレット)>!!」


シャロルが真っ黒な炎の弾をいくつも凄い速度で女に飛ばす。


「<極度凍結(エクストリームフリーズ)>」


しかしその黒い弾は一瞬で凍結され、消滅する。


「せっかく二つ目の奥義を使おうとしているのだから待ちなさい。防ぎたいなら奥義で防ぐといいわ。」


女が言う。


「…わかったわよ。」


シャロルは大人しくする。


実践ならばとっくに奥義で攻撃しているところだが、防御の奥義が氷使いに通じるのかを試したいという気持ちがシャロルの攻撃をやめさせていた。


「<超冷氷爆弾(フリージングアイスボム)>」


何やら不安定な氷の塊が女の周りに浮かび始める。


そして小さな氷、槍の形をした氷、剣の形をした氷、大きな不安定な氷、合わせて100を超える真っ白な氷が女の周りを漂う。


「奥義、<極冷強化加護(エクストリームアイシクルエンハンス)>!!」


直後、すべての真っ白な氷の塊の周り十数センチに吹雪のようなものが纏い、すべての氷が回転を始める。


「この奥義を受けた氷は貴方の地獄の炎でも溶かせない。この技を人に対して使うのは貴方が初めてよ。」


女が言う。


「いいわ。全部防いでみせるわよ。」


シャロルが言う。


「はぁっ!」


女が両手を前に出すと、すべての氷が今までにないほどの速度でシャロルに向けて飛んでゆく。


「奥義、<神封地獄業火壁(グランドヘルフレイムバリア)>!!!!」


直後、シャロルの目の前にブラックホールより黒いと錯覚させるような真っ黒の壁が出現し、凄まじい熱を放つ。


ポウッっと、黒い壁に入った氷の塊がすべて綺麗に消えてゆく。


すべての氷が消えきった数秒後、黒い炎の壁が消える。


「…まさか本当に防ぐとはね…」


女が驚き、呆れる。


「ここ最近地獄の特訓とも言える鍛錬を積み重ねてきたからよ。それでもこの技は結構堪えるけれどね。」


シャロルが言う。


「私も鍛錬はしていたつもりなのだけれど…まあいいわ。」


女が言う。


「それじゃあ次は私から行かせてもらうわ!」


シャロルが言う。


「<超撃滅地獄超火(グランドジェノサイドヘルグランドフレイム)>!!!!」


学園に来た初日にシャロルが出した炎とは比べものにならないくらい黒く、そして整った球状の炎をシャロルは両手を上げ、頭上に創り出す。


「なんて熱量…」


女が驚くが、シャロルはまだ撃たない。


キュゥゥゥゥゥゥンという音が鳴りながら、シャロルの頭上の黒い球体はどんどん膨れ上がってゆく。


「くらいなさい。」


シャロルがぽん、と巨大な黒い球体を前に投げたかと思うと、女に向けて球体から真っ黒の光線、いや、炎が飛び出した。


「<極度凍結(エクストリームフリーズ)>!!」


女が唱えるが、真っ黒の炎が消えることはない。


「<極冷強化加護(エクストリームアイシクルエンハンス)>!!」


炎に当たる直前、自らに奥義をかける。


炎が女に当たる直前、女が纏う吹雪に炎が割られ、いくつもの細い線となって女のうしろにとんでゆく。


しかし、炎の光線が途絶えることはない。


「くっ…!!」


女が纏う吹雪が消えかける。


「<極度凍結(エクストリームフリーズ)>!!」


「<極冷強化加護(エクストリームアイシクルエンハンス)>!!」


女が必死に防ごうとするが、炎の光線はどんどん威力を増し、女の防御を突破した。


「ぎゃあああっ!!!」


女が地獄の業火に焼かれ、倒れる。


「どう?これが私の本気よ。」


シャロルが言う。


「まだ…まだ私の奥義は残っているわ…」


地獄の業火に焼かれた女が、ボロボロになりながらも立ち上がる。


「まさかあれで生きてるとはね…」


シャロルが感嘆する。


「最後の奥義に全てをかけるわ。」


女がふらふらとしながらも立ち、シャロルを見る。


「それなら私も最後の奥義を使うわ。」


シャロルが答える。


「私のすべての力を振りしぼり、大陸全土の時を止められるほどの冷気でこのエリアを凍結させてみせるわ。」


女が言う。


「それなら私は大陸全土をマグマの海にできるほどの熱気でこのエリアを溶かしてみせるわよ。」


シャロルが言い返す。


「最終奥義、<永久凍結超冷雪(デッドロックブリザード)>!!!」


女がすべての力を振り絞り、真っ白な猛吹雪をシャロルに飛ばす。


「最終奥義、<天変地獄超熱火(フォールンダウンプロミネンス)>!!!」


シャロルもすべての力を振り絞り、真っ黒ながら紅く燃える、太陽をもはるかに凌駕する熱量を持った炎を女に飛ばす。


白と黒、二つの相反する色が二人の中間で混じり合い、凄まじい光を放つ。


ゴオオオンともドオオオンともビュウウウンともパキパキとも言える凄まじい音を放ちながら光はだんだんと収まってゆく。


光が収まった時、草原エリアはもはや二つの地獄となっていた。


一つはどんな物も永久に凍結され、何も動くことのない永遠に時の止まった世界。


もう一方は紅く光り、地獄を思わせるような溶岩が常に流動し続け、どんな生物でも一瞬にして死を迎える、初期の地球どころか太陽と表現しても足りないほどの地獄の世界。


そんな二つの地獄の内、炎の地獄にはたった一つ、生命が残っていた。


「ふぅ…なんとか勝てたわね…本当にあいつの言った通りになっちゃったわ…」


シャロルだ。


「試…試合終了!!勝者、シャロルセイクリッドです!!」


シリル先生の声が元草原エリアに響く。


「あら…私負けたのね…」


眠りについていた氷の魔女が、目を覚ます。


「最後の技、かなりすごかったわよ。」


シャロルが二つの地獄の境界線に歩み寄りながら女に言う。


「貴方の方がずっと凄いわ。前とは比べものにならないくらい力がついているじゃない。」


女も境界線に歩み寄る。


「ほら。」


シャロルが何かを要求するように言う。


「ええ。まずは私のレート、860よ。」


女が言う。


「そして、これよね。」


続けて女が言ったかと思うと、何かをシャロルに渡した。


「あ、ありがと。」


シャロルはなんだかぎこちなく受け取った。




「お前すげえじゃん!!!!!めっちゃかっこよかったぞ!!」


濱口が観客席でシャロルを出迎える。


「凄いと言うか恐ろしいぜ…」


レオナルドが言う。


「よくあそこまで上達したな!」


俺も出迎える。


「もう、貴方の特訓を受けてれば嫌でもできるようになるわよ。」


シャロルが少し呆れた声で答える。


「いやいや、約1ヶ月でレート600くらいは上がったじゃないか。すごい才能だと思うぞ。」


シャロルに言う。


「もうっ、貴方に言われるとただの皮肉よ!」


シャロルが言う。


「…前まで貴方達のレートって200辺りだったんですか…?」


シズが聞いてくる。


「ああ。」


「ええ。」


俺とシャロルが答える。


「…すごいです…」


シズが言う。


「よっしゃ!これで俺たちの目的達成だな!」


レオナルドが言う。


「ああ。なあシャロル、ちゃんと3人のレート覚えてるか?」


シャロルに聞く。


「もちろんよ!なめないでほしいわ!」


シャロルが言う。


とうとう俺たちを襲った黒幕が分かるな。


「…」


俺はシズを見る。


「なんですか?」


シズが反応する。


「いや、なんでもない。」


流石に黒幕じゃないよな。

もう1つの小説の方に書く時間を当ててたらこっちに当てる時間が全然取れなくてすみません…

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