開戦前夜
ある日、俺 水原凱斗は1年に一度行われる祭りの「十万灯祭り」に行っていた。
外に出るのが嫌いで体力がなく、まだ幼かった俺はすぐに飽きて帰ろうとしてしまったのかその時の記憶があまりない。
いや、忘れてしまったのだろうか。
そんな中何故か覚えていることがある。
あの時突然俺に話しかけ、「がんばるんじゃぞ」と声を掛け、俺の左手の甲にキスをしてどこかへ行ったおじいちゃんだ。
相当印象的だったのか、何故か覚えている。
「ねえ、明日祭り行こうよ!高校生になったらあの時より絶対楽しいって!!」
俺の幼馴染の空色葵が俺に話しかける。
「いいなそれ!せっかくの夏休みなんだしパウリィピィしようぜ!!!」
今日もテンションのおかしい濱口俊がはしゃぐ。
俺が最後に祭りに行ったのは10年くらい前のことだろうか。ちょうど葵と出会った数日後に祭りに行ったんだっけ。
確かにあれ以来祭りなどの行事には行っていなかったな。行ってみるのもいいか。
「じゃあ行こっかな。パウリィピィ?はしないけど。」
そうして俺たちは祭りに行くことになった。
俺は楽しいことには目がないからな。
祭りの日。
「屋台がいっぱいあるよ!たこ焼き食べようよ!!」葵が言う。
「俺あの水風船のやつやってくる!!!」
濱口がどこかへ行く。
「たこ焼きか、いいね。祭りで物を食べるのも10年ぶりくらいか。」
「かいとくん、あの時よりもずっと成長したよね!」
「それに比べて葵はあんま変わってないな。」
「むう!私だって色々成長したもん!!」
「でも祭り始まった瞬間にこんなはしゃぐ人はめったにいないぞ。」
「濱口の方が騒いでたじゃん!」
「あいつは例外だ。」
「またかいとくんと祭り来れて嬉しくて…」
「俺も葵が居て嬉しいぞ」
「えっ、その…」
何故急にもじもじしているんだろう。トイレにでも行きたいのだろうか。
「お二人さーん熱々だねえ!!」
濱口が大量に水風船を抱えて戻って来た。
「いやお前何回やったんだよ。」
「ん?1回だけど」
どうやら恐ろしい才能の持ち主のようだ。
「あ、満月だ!!」葵が言った。
空に丸い月が浮かんでいる。
前祭りに来た時もこんな月が浮かんでたかな。
「お、ほんとだ。」
左手を空にかざす。
次の瞬間、左手の甲が青く光った。
目がさめるとそこは白い空間だった。
ただ白い虚無のような空間が広がっている。
目の前には老人が一人。どこかで見たことがあるような。
「あの…」
話しかけると老人が返事をする。
「急にすまなかったな。」
「儂は神じゃ。」
急になにを言っているのだろうか。いや、でも神でもないとこんなことはできないのか。
「あ、神さんですか。」
「お主神を見ても驚かないのか…」
「いや驚きを越して驚けないです。」
「でもお主心なしか楽しそうじゃな。」
無意識に口角が上がっていた。そういえばこんなに自分の好奇心が刺激されたのは何年ぶりだろうか。
「そうですか。確かに心が燃えるような面白いことが起きたのは今日まで全然なかった気がします。」
「ふぉっふぉっふぉ。そうかそうか。」
「ところで、何故僕を呼び出したんですか?」
「お主は”器”を持っておる。」
「”器”ですか。」
「お主を10年前に見た時に何かすごいものを感じたんじゃ。」
「すごいもの…」
「今までに見たことがないくらいのすごい魂がお主には宿って居た。」
「あ、ありがとうございます。」
「だからお主に儂の力を授けたんじゃ。直に儂の力を授かっても爆裂四散しないのはこの世界でお主くらいじゃろう。」
爆裂四散!?なにそれこわい
「その力って一体なんですか?」
「選ばれし者のみ使える力じゃ。ただその力を持つ者を儂自らが選んだのはお主だけじゃな。」
「どうやったらその力は使えるんですか?」
「明日の午前0時、選ばれし者の戦いが始まるんじゃ。」
「戦い…?」
「その時からお主は力を使えるようになるぞ。」
「一体どんな力なんですか?」
「儂がお主に授けた力は儂と同じ物じゃ。」
「私は世界を統べる法則をつくった者。それを操るのが儂の力であり、お主の力じゃ。」
「法則…物理法則とかですか?」
「よくわかったな。そうじゃ。それじゃあ御機嫌よう。」
次の瞬間、さっきまでいた祭りの屋台に戻って来た。
夢でもなさそうだし本当なんだろう。それにしても物理法則を操る力…。
かなり強そうだけど使いこなすのは難しそうだ。
「どうしたの?かいとくん。」葵が心配そうにこちらを見ている。
「あ、いや、なんでもないよ!たこ焼き食べよ!」
とりあえず今日は祭りを楽しむとするか。
神さま流石です。




