ジャンヌダルク
「そう、あの登場は忘れられないね…。なんてのかな?初めてブラウン管で白いビキニ姿のアグネス・ラムを見たような…」
と、そこで、ジャンは、私のノリがイマイチなのを知ると、
「オニャンコクラブがぁ…」
と、言い換え、まだ、私がイマイチ理解できてないのを感じて、これで最後だ、と言わんばかりにAKBを例えに使ってきたので、もう、こちらも明るいノリで頷くしかなかった。
全く、祖父や父はもの神と何を話していたのやら。
「ほんと、お前らは凄い時代を生きてるんだぞ。俺らが人間の頃は、成人の女性のふくらはぎですら、なかなかお目にかかれなかったんだからな!物心がついたら、戦場をかけずりまわって、むっさいオヤジ相手に生きるか死ぬかで戦って…そんな中で、白馬に股がった白く美しい脚線美が目の前に現れたら、お前、興奮しないわけないだろ?」
ジャンは、そのときの事を懐かしく思い出していた。
それは、とても良い思い出らしく、部屋の重々しい雰囲気を一転させた。
「もうね、美人とか、そうゆうの関係ないの。うら若き乙女が、脚線美も露に男装して現れるんだぜ。シュチュエーション萌えって奴?お前だって、彼女が自分のカッターシャツを来て微笑んでくれたら、そんだけで胸がギュッとするだろ?俺らなんて、野獣の巣窟にいるようなもんだから、パンツ姿の乙女の足ってだけで、100倍はキュンキュンするわけよ。」
宿所に帰りつくと、不穏なくらい仲間がざわついていた。混乱しているジャンに、仲間の一人が声をかけた。
「おい、なんか、今日は慰問があるらしいぞ。お前も早く集会所に来いよ。」
はじめは言葉の意味も理解できなかったジャンだが、集会場の熱気に、何か、素敵なイベントが待ってることはわかった。
しばらくすると、華奢で小さな少年が台の上に立った。
が、次に声を発した瞬間、それが、紛れもなく女性だと認識した。
そうなると、少し、ゆったりとした上着が揺れる度に、形を想像させる胸のラインや、彼女が興奮して上下に動く度に太股の辺りでヒラヒラと舞う上着の裾に、高なる心臓を落ち着かせることも、ついついそこにたどり着く視線をどうにかするなんて、出来ようもない。
彼女は言った。
「シャルル7世の元にフランスを取り戻そう。」と、
初めは、何かのイベントの女優かと、猥雑な目で見ていた。
仕方ない。
天使が耳元で囁くなんて、そんな事、信じられるような平穏な生活は、ここにはない。
でも、17、18才だろうか、小さな体いっぱいに力をいれて、足を開き、必死に大声をあげる、そんな健気な姿に、初めは数人…その熱気に飲まれるように、やがて全体が、彼女の号令のもと、
「フランス我が手に!」
と、シュプレキコールをあげ始める。
男達の大半は思った。神の真実は、良く分からないが、この娘が世間も、男の怖さも知らない、純粋な娘である事は確かだと。
そして、明日の命をかけるなら、日や状況でフランスとイングランドを天秤にかけるような、狸オヤジより、この娘、ジャンヌと共に戦った方が気分が良い。
何より、彼女を信じていれば、明日もこうして、元気に彼女がエールをおくってくれるのだと。
勿論、これに反対する者もいたし、ジャンヌによからぬ思いを抱く男もいる。
演説の終盤になる頃、口では、とっても言えないような、恥ずかしい言葉を口走りながら、一人の兵士がジャンヌに近づく。
それを一刀両断でぶったぎったのが、後のジャンヌの側近のジル・ド・レ男爵だ。(ジャンの話で史実にはない。)
ジャン達男からみたら、ジルの行いは、あきらかに行き過ぎだった。が、相手の返り血を浴び、立ち尽くすジルの顔についた血液を、ジャンヌは自分のハンカチでぬぐい、
「神の祝福を」
と、心のこもった優しい声をかけた。
ジルは、この時点から、戦い方に必要以上の執着と残忍さを噂されていた。
ここで男を殺したのも、ジャンヌを助けるというより、ただ殺したかっただけだと、ジャンは思った。
しかし、床に飛び散る肉片をものともせず、残虐性を丸出しにしたジルを、純真な瞳で見つめ、受け入れた乙女の細い指が、彼の頬に触れた瞬間、ジルの中で、何かが変わったのかもしれない。
それからと言うもの、ジルは、ジャンヌの崇拝者として、彼女に降りかかる全ての敵をなぎ倒した。
ジャンヌは、フランス軍の士気を高めた。
それは当然だ。
いままで、士気を乱していた問題児を仲間に率いれる魅力を彼女は持っていたのだから。




