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さいかい

「さあ、ここからだ。綾香の話に戻す。大丈夫か?」

ジャンは、私に確認する。

「ああ。」

私は気を引き締めた。ジャンは、自ら姿を現した、もの神だ。そこには必ず意図がある。

「俺には、自分ではどうする事も出来ない術師の呪いがかけられている。仲間食いの呪いだ。最近、それが強くなってきている。綾香があの物語を完結させようとしているんだ。」

黒い(かたまり)になったジャンは、私の方にのり出して、その重要さを理解させようとした。


「物語と、いうと、あのスイカ農園の?」

私は話を必死に思い出す。

「緊張感の無い奴だな。わざとか?そうだ、殺人花嫁の殺戮の話だ。それは、俺が食らった偽のジル・ド・レの呪いがかけられている。いや、正確には、当時の不安定な綾香の友人に対しての憎悪、嫌悪で呪われている。それに反応して、最後の大物が姿をあらわす予感がするんだ。」

ジャンの目が怪しく輝いた。

「最後の大物?」

私は聞き返した。なんだか知らないが、とてつもなく面倒な事に引き込まれて行く気がする…

「ジル・ド・レ男爵だ。」

「ジル・ド・レ男爵?」

私は聞き返した。ジャンは、不思議そうな私に微笑みかけ、そして、ゆっくりと体の自由を奪っていった。


「悪いが、少し体を借りるぞ。世の中に戻る時がきたようだ。依代の本は好きにするが良い。十分に百話会のネタにはなるだろう。」


私はジャンのこの台詞を聞きながら、意識を失った。

気がつくと、私は土蔵の床に倒れていた。


日はすっかりくれて、外には大きな月が輝いていた。


綺麗な月だな…


混乱する意識の中で、私は蒸し暑い風のなかに、一筋の秋のそら寒さを感じていた。


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