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現実世界と異世界で不定期LIFE  作者: まぐろたん
1/1

01 異世界転移!?

 磯崎翔太(いそざきしょうた)。中学3年。15歳。

 東京生まれで、東京住みである。

 今まで部活に入った事がない、そのため体力には自身がないし、やる気も出ない。


 とは言っても、太りにくい体質なので体は痩せている。

 両親のおかげで身長はクラスの中でも高い方で、

 女子からはそこそこ好印象を持たれているが彼女は一回もできた事がない。


 会話が続かないのだ。


 現在、冬休み中で、毎日ゲーム三昧である。

 会話が苦手で、仲の良い友達が出来ない。

 なので家に引きこもってゲームに夢中になっている。

 元々、頭は良いため、家庭学習は全くしない。

 成績が良いので不登校までには至らない。


 両親はいつも仕事で夜遅くに帰ってくるので、夜飯はいつも自分で支度している。


 俺には小学6年生の妹がいるので、3人分の夜飯を毎日作っているのだ。

 たまに妹も手伝ってくれる。


 唯一の話相手になってくれる妹は、穏やかで、いつも俺に優しく話しかけてくれる、

 お陰で会話が止まることなく楽しい。


 今日は、大晦日だ。

 あと数時間で年が明ける。

 珍しく両親と妹と一緒に年越しそばを(すす)っている。


 家族みんなでご飯を食べるのは何ヶ月ぶりだろうか。


 今年、最後の夜飯は妹がとても喜んでいて、会話がとても楽しい。

 その隣で両親はお金の話をコソコソと話しながら食べていて、俺はなるべく聞かないようにした。


 なんだかんだしていると年が明けた。

 俺は小さな声でぼそっと呟いた。


「あけましておめでとう……」


 しかし両親はソファで寝ていた。


「あけましておめでとう、今年もよろしく!

  ふぁー眠くなっちゃた、 もう寝るね、 おやすみお兄ちゃん」


 妹は応えてくれた。その時俺は思った。

 妹だけいてくれればそれでいいやと。

 両親は俺と妹に対して愛がないのではと。


「もう寝るんだぞ」


「はーい」


 俺は妹の頭をポンポンとしてから、妹は自分の部屋に戻っていた。


 俺はまだ眠くないので、コンビニに行くことにした。

 年明けということもあるか、夜中であるのにレジに列が出来ている。

 俺はゲームに課金するためのプリペイドカードとコーラと漫画を持ちレジに並んだ。


 その時だった。


「うぅ…………」


 急に体にだるさのようなものを感じて、翔太はその場に立っているのが辛いが我慢しながらも列に並ぶ。


 会計が終わり家に帰る道の途中で、重たい眠気に晒される。


「なんだ? …………眠い…………眠い……眠い」


 呟きながら、壁沿いを歩く、いつ倒れるかわからない、左手で顔を覆い、右手で壁のくぼみに手を掛けながらも進んで行き、やっとの思いで家の玄関まで辿り着いた。


 玄関に手を掛けたその時だった。


「なんだ…………これ? もう……限界……………」

 どたっ。


 翔太は玄関前で仰向けの状態で倒れた。



 痛みは感じなかった……いや、何かおかしい。

 倒れた時、俺の下にはすごく柔らかいものがあった気がしたーーーー



 って…………ん?


 我に振り返ったような感覚、気づけば眠気なんて全くない。むしろ脳は活発に起きている、倒れた衝撃で頭を打ってしまったのか?


 いや、それよりも………………


「玄関前って……こんなにもふかふかだっけ?」


 翔太の状態は倒れている。身体の下にはふかふかな感触がある。まるで、ベッドの上にいるようだ………掛け布団もふかふかで気持ちぃ…………え……?


「!?」


 俺は勢いよく起き上がり周りを見渡した。

 玄関前ではなく、見たことない部屋である。


 目の前には大きな扉があり、扉の両サイドには大きくて高価そうな花瓶が置いてある。左右を見渡すと、縦長の窓ガラスが一定の間合いで、太陽の日差しが入り込んでおり部屋はとても明るい。


 俺は意識が完全に戻っていないせいか、今、何が起きているのか思考が追いつかない。夢でも見ているような感覚である。

 それよりも暑い、暑すぎる。太陽がもう出ているから年が明けた正月なはずだが、暖房が効きすぎているのか?この部屋。

 見渡した限り、照明や暖房器具といった機械的なものは一切見当たらない。


 俺はそのベッドから離れて、窓側まで歩いて外を眺めようとした時、窓に写る俺?の姿に驚いた。


 窓に写っていた人は、黒髪から赤い毛が所々に固まって生えている。目も赤い。顔立ちは、シュッとした顔立ちだ。寝起きであるためか髪は少しボサボサだ。

 口を大きく開けて驚いた。翔太は一歩後ずさり、右手を前に出した。すると窓に写る人も俺と同じ行動をとる。

 翔太はやっと気づいた、これは窓で反射した自分の姿だということを。


「えっ……ええ!? どうゆうこと? 俺は確か玄関で寝落ちしたはずだったがーー」

 しっかりと記憶はある。俺はパニック状態に至る。


 妙に体が軽い。手のひらを見ると俺のいつもの手ではない、小さくて違和感がある。身長も縮んでいるようだ。

 翔太は自分の身体を見渡すと、白いシャツ1枚に軽い半ズボンを履いている。裸足である。

 こんな姿であるのに暑すぎる。汗が湧き出てくる。

「暑い、暑い、暑い」


 翔太は思い切って、大きな扉を開けて部屋を出る。

 そこにはとてつもなく長い廊下があった。天井もかなり高い、無数の窓から入る日差しが廊下を照らしている。奥まで見渡すと、いつくもの扉がある。

「屋敷……? 誰かいるのかな?」

 やっとここがどんな場所か大体把握した。外の景色を見た時も東京ではないなとすぐ理解した。なぜなら広大な草原が目に入ったからである、山も綺麗に見えた。日本にこんな場所はない。


 部屋を出ても暑さは変わらない。

 この暑さを何とかしたいと思い、ひとまず人がいるかどうか歩き回ることにした。


「誰か居ませんかー?」

 大声で叫ぶと、屋敷中に響き渡った。

 するとどこからか物音がした。それは足跡とかではなく、ガサガサとした音だ。

「え…………何かいるの?」

 恐る恐る物音が聞こえてきた廊下の曲がり角まで行き右を見た、何もない。今度は左を見るとそこにはいた。


 女の人が倒れている。


 翔太は驚いて、叫びそえになったがひいっ……と情けない声が漏れてしまった。

 倒れている女の人の横には、黄緑色の首輪を着けている、毛がふさふさな白猫がその女の人の頬を舐めていた。さっきの物音の原因もこの猫の仕業だろう。

 翔太と白猫は目があった、しばらく目を合わせていると白猫は目をそらす。

 その場でしゃがみ女の人の顔を眺めた。息はしている、眠っているだけのようだ。


「綺麗な人……」

 思わず翔太は声に出してしまった。

 さらさらのロングヘアで、鮮やかな銀髪だ。貴族のような服装を着ており、短いスカートを履いている。そこからは白い長い足が綺麗に伸びていた。細い足だ。痩せている足ではなく、アスリートのような肉付きをしている。俺と年が同じかそれ以上であるように見えるが、大人ではない、少女である。


 俺は思わず少女の足に触れてしまった。すると触れた瞬間に目がパッと全開に開き、一瞬にして高く跳び上がった、倒れた状態から2メートル以上は跳んだだろうか。

「うわぁぁ!? い……痛ってぇぇぇぇ!!」

 翔太の触れていた手が跳ねた時に変な方向に曲がってしまった。折れているだろうか、痛くて動かせない。

 翔太は地面にうずくまり、もがいている。


「あたしに触れた無礼者!!…………大丈夫?」

 少女は翔太に怒鳴りつけたが、痛そうにしていた翔太を見て申し訳なさそうに心配してくれている。

 美女の前でいつまでもうずくまっていてもカッコ悪い。痛みに堪えて応えた。

「あ、あぁ。 大丈夫、大丈夫」


 少女が俺の手をじっくり見ている。

「折れてるじゃない! ちょっとその手あたしに出して、今すぐ治癒魔法かけてあげるから」

 え……今この人なんて言った?…………魔法??

 翔太はこの少女に疑問に思いながらも手を差し出した。すごく痛いはずなのに、魔法が本当に使えるのかどうか知りたいという気持ちでいっぱいだ。


 少女が俺の折れた手を支える。

「痛い! 強く握りすぎぃぃ!!」

「ちょっと動かないでよ、集中出来ないじゃない、もう少しだけ我慢してて」

 少女はもう片方の手を、翔太の手を上に被せて詠唱を始めた。

「日光より、光の(みなもと)から目覚める粒子を閃光せよ、サンヒーリング!」

 少女の手の甲に、手のひらサイズの黄色い光の中に魔法陣が現れた。俺の手がぬくぬくと暖かくなっていく。


 痛みが綺麗さっぱり無くなった。

「うん! これでよーし!」

「今の本当に魔法なの?」

「もっちろん! ……ここにいるってことは、もしかして…………現実世界の方?」

 少女は口ごもりながらも、首を傾げて聞いてきた。

「え?」

 俺は薄々気付いていたがまさかとは思っていた。

 窓に写る俺の姿を見た時、もしかしたら異世界にでも来たのか?ちゃんと家に帰れるのだろうか?

 この人なら何か知ってるかも知れないと思い、聞いてみた。

「あの…………ここって日本……じゃないですよね?」

 人と滅多に話さないせいか、言葉が所々切れてしまう。

 少女は目を丸くして少し驚いている。

「あーやっぱり君もかー」

 ん?この人なんなんだ?

「気が付いたら、ベッドの上で寝ていたし、俺の姿も全くの別人だし、もしかして、ここ…………異世界?」

 俺は頬を指でかきながら言った。

「あたし以外に異世界(ここ)へ来た人初めてだよ……あたしが知らないだけかもしれないけど」


 やっぱりかーーーー

 異世界に飛ばされたんだ、と改めて思った。今の話だと、この人も元々現実世界から来た人だ。

「あの……もう元の世界に戻ることはできないんですか?」

 戻れなかったらもう妹と楽しい夜飯を過ごせなくなってしまう。それは嫌だ。


「戻れるよ……でも、戻り方がわからない、いつ飛ばされるかわからないの……今もいきなり現実世界から飛ばされたんだ」


 どうゆう事だ? 翔太は混乱している。話を聞いた感じだと、異世界には長くいるようであるが、現実世界にも戻れるには戻れるらしい。そして今この人は異世界にやってきたばかりらしい。

「つまり…… この世界と現実世界を行き来しているってことですか?」

「そうよ。まぁ、戻りたくても自力では戻れないんだけどね」

 少女は微笑みながら応えてくれる。

 どうやって異世界と現実世界を行き来してるんだろうと思ったが、明確にはわからないようだ。


「今から街まで行くんだけど、どう? 一緒に……」

「行きます!!」

 翔太はバッっと立ち叫んだ。この人に聞きたいことが沢山ある。どうせ行く宛もないし、この世界がどんなところか見てみたい。考えるとワクワクしてきた。


「その前に、着替えないとねー」

「あ……」

 シャツ1枚に半ズボンである。俺はこの姿でも問題ないが、美少女の隣に歩くとなれば別だ。この屋敷に着替えがあるのか?


「こっちに護衛達の衣服があるからついてきて」

 俺の方を見ながら、着替えのある方向へと歩いていった。俺は迷うことなくついて行く。その後ろから、そばにいた白猫もついて来た。


「ところで君の名前聞いてもいいかな?」

「え……えっと……磯崎翔太です……」

 唐突に聞かれたので声が小さくなってしまった。

「なに? こうたくん?」

「翔太ですぅ!!」

 翔太は顔が真っ赤になりながらはっきりっと応えた。


「あっはは、ごめんごめん。 あたしは……レイル」

 女の人は名前を応える時何か迷っていたように見えたが気のせいだろうか。

「レイルさん、しばらくの間よろしくお願いします」

「そんなに固くならなくてもいいのにー、 レイルで大丈夫だよ、あと敬語で話されるの嫌い」

 どう見ても年上にしか見えないので敬語になってしまう、元々人と話をしないせいでもあるが。

「わ、わかった……レイル」


 お互い名前がわかったところで、翔太の着替えがある部屋に着いた。それにしてもこの屋敷は大きい、大きな扉がいくつもある。

 しかしどうしてレイルはこの屋敷内を知っているのか、なぜ廊下で無防備で寝ていたのか、わからない事が多い、聞きたい事が山程あるが何から聞けばいいんだ、むしろ聞いたところでこの人はどこまで知っているのだろうか、まだ出会って数分しか経っていないのにレイルはよく俺と街まで一緒に行こうと思ったものだ。

 今は聞く気になれない、この数分の間に信じられない事が連続で起きすぎていて思考が追いつかない。


 レイルが扉を開けると、そこには数千着はあるだろうか、俺がさっきまで寝ていた部屋よりもさらに広くて奥まで様々な種類の服が並んでいる。

「どれでも好きな服を選んでね。そうだ、あたしが選んであげようか?」

「え…… あ、どうぞ」

 現実世界でも、服を買いに行く時はいつも妹に選んでもらっていて、自分で自分の服を選ぶって事をあまりした事が無かったので、レイルに選んでもらう方が助かる。それに、レイルが俺に服を着せたがっていたからである。


 レイルはご機嫌で服選びに夢中である、俺もこの部屋の服がどんなものなのか見て回ることにした。

 現実世界のように、化学繊維で作られたものは見当たらず、全て手縫いされた服のみである。それにしては精密に作られており、どれもデザインが良いものばかりだ。


「翔太、決まったからこっち来てー」

「は、はーい!」

 翔太は服と服の隙間をすり抜けてレイルの方にすぐに向かう、レイルは服とズボンと靴まで用意してくれていた。

「靴のサイズわかんなかったからサイズ合わなかったら変えてくるから言ってね」

「あ、ありがとう」

 レイルは翔太に全て渡して扉を出た。翔太が着替えるからだ。


 翔太は服を両手で広げて見ると、レイルと同じ柄で男用の服であった。白が中心に紫と赤いラインの入った柄である。貴族が着る服だ。俺はゲームでこのような服の形や柄をよく見る、今の姿の俺にすごく似合う。


 着てみると驚くことにサイズがピッタリである。靴も完璧だ。肩や足など動かしずらいが仕方がない、この世界では産業技術が発展していないようで、その代わりに魔法があるということだろう。

 着替え終わった翔太はすぐに扉を出た。

「レイルすごい! 全てサイズがピッタリだよ!」

 さっきまでの翔太と違い、大きな声を出せるようになった。自然にレイルと呼び捨てで言えるようになっている。

「似合う! 似合う! やっぱりあたしの好きなデザインは誰が着ても似合うなぁ」

 レイルと翔太、二人揃って並ぶとペアルックをしたカップルのようである。


「よし行くよ、 翔太」

「うん!」

 俺はワクワクが止まらない。カッコイイ服を着れて、異世界の街をレイルという美少女と一緒に……って


 これってデートじゃないか!?

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