第四回 「この人が秀吉に候」
(ナレーション)「『おけww』と言うやたらちゃらい返事を頂いて、桃太郎とその御供たちはあの羽柴秀吉が待つ堺屋敷を訪れたのでございます…」
(秀吉、LINE中。一度に五人くらいの女性を口説いている)
秀吉「ほんまじゃって。わし嘘つかんよ。だから今度デートしてちょおよ…ってああっ、一度に三人ふられた」
桃太郎「あの、私たちが眼中にないとこすいません。桃太郎です…」
秀「ん?なんじゃ、お前ら」
(かくかくしかじかを話す桃太郎。秀吉、まっちろい視線)
秀「まぢで?…ちっ、官兵衛の奴、飛び込みはダメだってあれほど言っておいたのに」
桃「不肖桃太郎、信長公にぜひともご拝謁たまわりまく!」
秀「いやだから、無理じゃって!…どーも困るんだよなあ。わしが草履とりから出世したって話、ほうぼうで広まってるせいか、お前みたいなの山ほど来んの。でもねえ、大抵ボツだから!お断りだからね」
桃「いや、そこを何とか」
秀「ひつこいなあ。…大体お前、持ってそうにない顔してるなあ( ˘•ω•˘ )なんつーこー目に引っかかるところがまったくない!するりだね。出会って五分したら、わしお前の情報すべて忘れるわあ…言っとくけどわし以上にハードル高いからね、お館さまくらいになると」
雉「それは…どれくらいなのでしょうか?」
秀「そうさなあ、今ならM1優勝クラスでぎりぎりかな…」
桃「そんなにハードル高いんですか!やっぱり、笑いは必要ですか!?リズム芸一発芸とか必須ですか?」
秀「あっ、そうだ下手な一発ギャグとかはねえ、むしろやらない方がいいよ。もうリアルに命に係わるよ?」
桃「ダメですか。せっかく桃から生まれたので、『桃太郎あるある』とか考えてたんですが…」
秀「そんなんあるの!?興味はあるな。ちょっと聞いてみたい気がするが…甘い甘い!信長さまのハードルはもっと高いぞう!大体お前、桃から生まれたとか言ってるとなあ、本当に桃の中に入るかどうか確かめたりされるからなあ!」
犬「(めっちゃ媚びる)でもお、羽柴さまだったらあ、どうすればいいかご存じ…ですよねえ…?」
秀「おっ、おお!?いるじゃん綺麗どこが!(ころっと態度変わる)いやー君なら絶対大丈夫!…もうこのわしがねえ、すーぐ信長さまに会わしてあげる。…てゆうかさあ、何ならわしの側室にならない!?」
犬「(笑顔で首を振る犬千穂)あ、それは結構です。わたしの狙い、織田家のイケメン枠ですから」
桃「あの、で、私はどうすればいいんでしょうか?」
秀「えっ、まだいたの?悪いこと言わないから地元帰んなよ。ぶっちゃけ君じゃあねえ、無理。あっ、じいさんはもっと無理だわ。悪いこと言わないから、帰りな」
桃「そっ、そこを何とか!こうしている間にも、鬼ヶ島の連中が!我が桃元の城を侵略しているやも知れないのです!」
雉「(ぼそっと余計な一言)いや、よそはともかくうちは大丈夫でしょう。何しろ泣きたくなるほど貧乏だから」
桃「うるさいな!黙ってろよ!…あっ、とにかくピンチなんです!私が織田の軍勢を連れていかないと、ダメなのです!本当、無理を承知で!」
秀「君も粘るねえ。だからね、そう言うのお宅のところだけじゃないの!信長さま、そのネタ聞きあきてるから」
桃「聞きあきてる聞きあきてないの問題ではござらぬ!そ、そうだ桃太郎あるある、いっ、今からでも!」
秀「(ーдー)…試しに一個言ってみん?」
桃「もっ、桃!桃からっ…生まれてない!」
雉「それ殿だけ…ってゆうか『こんな桃太郎は嫌だ』ってネタの方ではありませぬか?」
桃「あっ…(今さら気づく)」
秀「てゆうか君、いたら嫌な方の桃太郎なの?うん、なら尚更ダメだね。桃から生まれてないし。じゃそう言うことで」
桃「お待ちを!お待ちください!そうだ私、官兵衛殿と同じ播磨出身なんです!今、やってるでしょ播磨攻め!」
秀「そりゃそうだけど…別に足りてるよ。官兵衛がいればさあ」
(そのとき、秀吉のスマホ鳴る。見たことない着信だと思ったら、鉄道警察)
秀「…ええっ、官兵衛捕まったの(;゜Д゜)…え、播磨城じゃなくて!?…ちょっと…電車の音がして聞き取れない!…なにしたの、チカン!?」
犬「(すかさず)羽柴さま!官兵衛殿は、戻ってはきませんよ!播磨の代表者はどうなるのです?」
秀「いやっ…(動揺から覚めてない)どうしよう今から!困るなあ…困る困る(;-Д-)えっ、ちょっとどうしよう。来週信長さまんとこ行くんだよ。代役?」
(桃太郎、進み出る)
桃「播磨のことなら、何でも任せて桃太郎」
秀「えっ、君、官兵衛の代わりやるっての?ちょっと…本当に!?」
桃「心・配・御・無・用!」
秀「ええええっ…それわしのネタじゃなーい?( ; ゜Д゜)いやっ、でも本当に大丈夫なのかな君で…」
(ナレーション)「かくして持ってないくせに勢いだけで乗り切った桃太郎は、官兵衛殿の代役として、信長さまに会える運びにあいなったのでございます…」