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第二回 「御供と上洛し申し候」

(ナレーション)「さてあまりざっくりとした大殿の命ではるばる京都まで行かねばならなくなった桃太郎でございましたが、桃から生まれたと言う触れ込み以外はぱっとしないと言うか、むしろオーラがないと言われるタイプなので、箔をつけるために御供を募ったのでございます…」


(桃の旗印ののぼりを掲げて、往来で御供を募る桃太郎。しかし御供は集まらず、長机にどっさり参加特典の吉備団子の袋が余っている)

キャンペーンガール(時給)「あの桃太郎、ついに上洛しまーす!吉備団子無料プレゼントやってまーす!お供について行かなくてもお話聞くだけでプレゼントですよおー!御供説明会、あと十五分で締め切りで~す☆」

桃太郎「(ちょっとヤケクソ)いいよもうッ!ほとんど誰も来てないから!!」

雉田家老(きじたかろう)「そのようでござりまするな。おうい、いいぞ!どうせ集まらんし、もう帰ってええぞう」

「はーい☆でもいいんですかあ、まだ誰も…」

「うん、ええからええから!」

(派遣のキャンペーンガールにポチ袋を渡して帰ってもらう)

桃太郎「おっおい…(がっくり落ち込む)帰れって言ったからって、本当に帰すなよ。ますます寂しくなるじゃないか…」

雉田「致し方ありませぬ。恐れながら若殿(わかどの)は桃から生まれたと言う触れ込み以外はどうもぴりっとしないし、まあその桃から生まれたと言う話も嘘でござるゆえ…いまいち人が集まらないのは必定と言うか」

桃太郎「余計なお世話だよ!てゆうか雉田、家老の癖に主君がキャラ弱いってダメ出し出来る立場かよ!?それになあ、私は桃から生まれたことになってんの!…(小声)本当は違うけど、そう言う設定だから。ずっとこれ一本でやらしてもらってるんだよ。まずさあ、そこ否定しちゃダメだろ!」

雉田「いやしかし恐れながら、若殿が別に桃から生まれてないって言うのは、みいんな知ってることでござるから」

桃太郎「知ってんの!?なんで知ってんの!?なぜ!!?」

雉田「いや、恐れながら!大殿、酔うと必ず話すから」

桃太郎「ええっ(;゜Д゜)いつからよ!?」

雉田「若い頃から」

桃太郎「あんのジジイ( :゜皿゜)秘密でもなんでもないじゃないか!」

雉田「領民はみな知っておりまする。だもんで不肖雉田、下手に若殿の守役なんか申し付けられちゃったりして、家督継ぐわけでもないのに、恐れながら迷惑だな~とか、恐れながらあちゃーこれで出世コースから外れたな~とか思っておりました」

桃太郎「下手にとか言うな!傷つくだろ!真面目に仕えてないならもっと早目に言えよ!てゆうかお前恐れながらとか言いつつ、言っちゃいけないこと皆ぶちまけちゃってるよ!?」

雉田「…恐れながら」

桃太郎「恐れてないだろ!?むしろお前、今恐いものなにもないだろ!?」

雉田「いえこの雉田、恐いものはござりまする。まさか老い先短い身で若殿の御供で上洛させられる、自分の将来が一番恐いでござる(かすかにドヤ顔)」

桃太郎「上手くねえよ!?何ドヤ顔してんだよ!つかオチてるオチてないとかじゃなくて真剣な話だからな!雉田、お前はちゃんとついてくるんだよな!」

雉田「(がたがた震えながら)おっ、恐れッ…恐れながら!」

桃太郎「そんな自分の将来恐いか!私と一緒じゃそーんなに不安かあっ!?」

雉田「(ついに開き直る)いやーだってえ!殿は別に人から抜きん出たキャラじゃないからあ。てゆうかあ、桃から生まれた程度じゃ戦国時代生きられないでしょう!?せめて『身の丈六尺』とか、『槍で吊るした永楽銭の穴を突き通せる』とか『五尺八寸の大太刀をぶんぶん振り回せる』とかじゃなきゃさあ!」

桃太郎「お前ついに、恐れながらって言わなくなったな…」

(絶望にうちひしがれる桃太郎、その前に朱塗りの胴丸に黒髪ロング、薙刀を携えた美少女が現れる!)

美少女「桃元桃太郎(もももとのももたろう)ッ!我が不倶戴天の(かたき)ぃッ!」(びしゅっ!と薙刀が降り下ろされ、危うく桃太郎尻餅ついて回避)

桃太郎「わあっ!まだ何もしてないのに暗殺されかけたあ!?…って何だよ敵って!?私、君の幼馴染みで許嫁だったじゃないかあ!?」

雉田「そうじゃ、お主はご先公の代よりのご家門、名家犬山家の姫御ッ」

(その瞬間、がしゃりと薙刀を投げ出して泣き崩れる美少女)

美少女「仰る通りにござりまするうっ(号泣)…わたくし、桃元に嫁ぐために育てられた身、この名家犬山の名をお恨み申し上げまするうっ!」

桃太郎「いや、そんなにエキサイトしなくても。てゆうか敵じゃないでしょ、仲良くしてたでしょ」

姫「いえ、敵にござりまする!わたくし、せーかっく若に嫁いで名家の権勢を思うままにし、若が稼いだお金でさんざ贅沢して若の子を産んでゆくゆくは北条政子みたいに主家を乗っ取って暮らそうとか将来計画してたのに、まさかのご廃嫡の上、国外追放とはっ」

桃太郎「いや、国外追放じゃないからね。誰から聞いたの?そもそも家督継いでないけど廃嫡でもないから。てゆうか顔の割りに欲望げっついなあ(;゜Д゜)…あのさ、うち貧乏だし、そんな贅沢出来ないからね。でもいいんだよ、別にもっとお金持ちの他家に嫁いでも」

姫「出来たらやってますう!このっ、この犬の名さえなければ…」

桃太郎「いやワケわかんないから」

雉田「恐れながら、姫は若殿に匹敵するくらい、変な名前なのでござる。それゆえ、古来より犬山の嫁は桃元の殿にしか嫁げず」

桃太郎「えーっそうなんだ!犬山の方とか姫とかしか聞いてないから、下の名前とか知らなかったんだよな。そう言われると逆に気になるよ…姫の名とかって、普通あんまり呼ばないからなあ。(なにげに史実)ちなみに本名は?」

雉田「その名も…犬山犬千穂殿(いぬやまいぬちほどの)、にござりまする!」

犬千穂「いやーっ!言わないでえ(/o\)」

桃太郎「(爆笑)えーっ、変な名前!犬二回入ってるし、名前の方の犬、絶対余計だし!!」

犬千穂「ふっ、ふん!たかだか桃太郎に、言われたくありません(*`ω´*)」

雉田「まー桃太郎もどっこいでござるがなあ。その昔、かの天文鬼ヶ島合戦において、功を立てし犬山の先代、桃元の殿より『忠義第一』その子孫の名前にも必ず『犬』の一字を入れるよう、命じられまして」

桃太郎「えっ、うちの大殿がっ!?」

雉田「いえ、その先代でござる。いやーその頃の桃太郎様は連戦先勝いくさ上手の器用の仁の大英雄!言われた犬山どのももー涙流して喜んだのです。かなり酒入ってましたけどね。あーあっ!あの時代はよかったなあ。大酒飲みでスケベーでテキトーな大殿の今とは、えらい違いですよおっ( ノД`)…」

桃太郎「うち没落したの親父のせいじゃん!」

犬千穂「そっ、そんなことはどうでもよいのです!つまりそのあなたのお祖父さんのせいで、わたしは入れなくてもいいところに、とんでもないもの入れられて迷惑してるんじゃないですか!?」

桃太郎「いっいや、そのっ、声が大きいよ犬ちゃん!…てゆうか今の、聞きようによってはとんでもないこと言ってるからね!?」

犬千穂「だってえ…ううっ(泣)この名に犬の一字さえなければ、わたくし、もっといけめんで石高も官位もあって、頼もしい若殿さまに嫁げますのにい…( ノД`)…」

桃太郎「ああー(ドン引き)なんてゆうか、げっぷが出そうな野望をありがとう。ちょっと私お腹一杯だから…あっ、そうだ犬ちゃん!犬ちゃんも一緒に旅に出ればいいんだよ!私たちねえ、織田信長さんに会いに行くんだよ!そしたら会えると思うなあ…家柄が良くて、信長さんに十万石くらいもらってて…そのう、変な名前じゃない殿様?」

犬千穂「(顔を上げて)わたくし、いけめんと言ったのですよ?」

桃太郎「あっ、うんイケメンイケメン!…てゆうかさあ、そう言うとこ嫁いで名前変えちゃえばいいじゃん!犬のない普通の名前!」

犬千穂「わたくし生まれ変われるのですね?『信長公記』とかにキラキラネームで載っちゃうのですね!?」

桃太郎「うんうん~(テキトー)だからさあ、いい名前考えときなよう。…ところでさあ、行く?」

犬千穂「行く!行きます!わたくし、若殿にご一命捧げちゃいます!いけめん大名に、会えるその日まで!」

桃太郎「そうだその意気だ!」

雉田「(こっそり)許嫁じゃなかったのですかな…?」

桃太郎「(すっかりげんなり)いや、いいわあ。こーんなに戦国乱世えげつない姫君」


(ナレーション)「かくして桃太郎の上洛行が始まったのでございます…」


(旅途中、街道周辺)

雉田「若殿!旅に出るからには、気を引き締めてもらわねば困りますぞ!ちゃあんと信長公に、会えるつてはあるんでしょうなあ!?」

桃太郎「大丈夫だ。大殿に紹介状書いてもらったから」

雉田「ほっほう!あの大殿が!いやあ、さーすがは親心ですなあ。…(顔をしかめる)しかし、大殿って織田どののどんな知り合いなんでしょうな…?」

(不安になって紹介状を開ける桃太郎。そこには殴り書きの筆でシンプルな一言)


「励め」(がんばれ)


桃太郎「おっ、親父にたばかられたッ…!!」


(ナレーション)「さっそく戦国乱世の洗礼を受ける桃太郎でございました…」










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