5話 マルルのスキル検証
今、部屋に戻り、この最重要案件について話し合うところだ。
つまり、マルルのスキルだ。これを言ってしまえばマルルはその力を自覚するだろう。自覚すれば、知識のあるマルルは力を使える。そうなったらマルルは最強のスライムに1歩近付く。それはうれしい半面、危険なことだ。
でも、マルルを信じると決めた。だから教えよう。
「マルル」
『はい』
「実は…マルルの…」
『マルルの?』
「マルルのスキルが増えてた」
マルルが揺れる。
『強くなれたならうれしい! ご主人様の役に立ちたい!』
どうやらスキルが増えてる異常性が分かってないらしい。でも敵意は無いどころか、ご主人様なんて…いつの間にそんな呼び方に!?
「ご主人様ってなんだい?」
『ご主人様はご主人様』
答えになってない。
「なんでご主人様って呼ぶの?」
『主従契約結んだから立場はご主人様』
まさかのしっかりと理由があった。たしかに主従契約を結んだけど、ペットにご主人様って呼ばれるのはどうなのだろう。でも、本人がそれを望むなら良いか。
気を取り直してスキルの説明をしよう。鑑定結果が書いてある複写用紙を出し、マルルに見せる。
「マルル、これが今のマルルのスキルだよ」
『いっぱいある!』
やっぱり危ないとか気付いてないようだ。そういえば僕の考え読んでたらわかるはずだけど、今は読んでないのかな?
「今僕の考え読んだりしてる?」
『してない。 ご主人様が嫌がってたから』
読んでも良いと言ったけど、確かに読まれたくないという気持ちもあった。それに気付いたのだろう。
この際、しっかり危ないと説明してあげないと。
「スキルがいっぱいあるってことはそれだけ強いんだよ」
『うん』
「強いってことは危ないんだよ」
『うん』
「人間に怖がられるよ」
『ご主人様もマルル怖い?』
たしかにマルルは仲間だ。でも怖くないって言ったらうそになる。力を持つ者は怖い。
「僕もちょっとだけマルルが怖いよ」
『じゃあ弱くなったほうがいい?』
「そんなことは無いよ。 ただ、僕の言うことはちゃんと聞いてね」
『わかった!』
そうだこれでいい。仲間を信じると決めたんだから。
「じゃあスキルのことを考えようか!」
『うん』
今のマルルのスキルはこうだ
スキル
<合体><分裂><変形><変質>
<意思伝達><情報共有><距離拡張>
<剣術><槍術><斧術><盾術><弓術><双剣術>
<火魔法><水魔法><風魔法><土魔法><光魔法><治癒魔法>
<身体能力強化><魔力強化>
「合体はくっつくやつだよね。 分裂が別れたやつだと思う。 変形は形が変わるのかな? やってみて」
『わかった』
するとスライムはむにょーんと平らになって、四角くなり、最後に小さな人形になった。
「マルルは人型にもなれるのか。 そのまま動ける?」
マルルが歩こうとするが、一歩歩くたびに関節が変な方向へ曲がったり、腕や足がぐにゃりと曲がったりと、明らかに普通の人間ではない。大きくすれば人間として町を歩けるかと思ったが、そんな簡単ではないらしい。
マルルが元のスライムの形に戻り次の実験を始める。
「次は変質だね、使ってみてくれるか?」
『わかった』
そう言うと、マルルの表面の質が変わる。フサフサの毛が生えたり、鱗状になったりと、様々な質感に変わる。これと変形をあわせれば見た目は完全な人間になれるだろう。動きは難しいが…。
「じゃあ次は意思伝達だね」
マルルが意思伝達を使うと頭の中に話しかけてくる。
『こう?』
うーん、いつもと変わらない気がするが…いや、少し声が滑らか?
そもそもこの念話どうやってるんだろう?僕も出来るのかな?
『マルル聞こえる?』
『聞こえる!』
意外と簡単に出来た。これはかなり便利だ。今のスキルの話なんて他人に聞かれたら大変だからね。
『マルル、これからは念話で話そう』
『わかった!』
次に情報共有だが、これは僕も持ってるし、よく使ってるから飛ばそう。
距離拡張は僕も持ってるが、使ったこと無いな…。でも、もしかしたらこれは情報共有と組み合わせて長距離念話が出来るんじゃないか?
『マルル、ちょっと部屋を出るから、念話出来るか試してみて』
『わかった』
部屋を出て、廊下を少し行ってから、マルルに頭の中で話しかける。
『マルル聞こえるか?』
『聞こえるよ!』
成功だ。これを使えば遠くから会話が出来る。スキルは魔力の消費が無く、それが何倍になっても消費は0だ。これは戦場での連絡などにも使えるかもしれない。
次は剣術や弓術など、武器を使ったスキルだが、マルルはスライムだ。武器は使えない。
そこは飛ばすと魔法だな。
『次は魔法だけど、部屋の中で使うわけには行かないよね』
『じゃあ森で使う』
『そうだね、今度森に行ったときにためそうか』
『違う』
違う?何が違うのだろう?
『違うって?』
『今森に居るマルルが使う』
『ここから使えるの?』
『だって、全部マルルだもん』
たしかにそうだ、ここに居るのが本体ってわけじゃない。森に居るのも全部マルルの本体だ。魔法を使えない道理はない。そんなことを考えていると
『魔法使えた』
もう試していたらしい。そもそも魔法の使い方なんてどこで習ったんだ。まあ、情報共有に決まってるけど、魔法はスキルほど簡単じゃない。使いたい魔法のスキルを発動し、体内で魔力を操作して一箇所に集め、放出する。その集めた魔力量によって威力が変化する。
普通魔力を操作できるようになるまで1ヶ月はかかる。完全に魔法が使えるには3ヶ月かかる。高い威力の魔法を使うには何年も修行が必要なはずだ。それをマルルはいとも簡単にやってしまったらしい。
『マルル、本当か? どんな魔法使ったんだ?』
『風の魔法使ったら風がビューンって吹いた』
『魔法ってそんな簡単じゃないぞ、魔力を操作するのは難しいはずだよ』
『でもできたもん。 動けー!って思ったら魔力動いた』
このスライムは天才らしい。
『次は身体能力強化だね』
身体能力強化は身体能力向上の下位スキルだ。強化は元からの身体能力を上げるのにたいして、向上は元からの能力に追加して能力を上げる。
マルルが身体能力強化を使うが、見た目では変化したのか分からない。
『どうだ? 変わったか?』
『なんか体が軽くなった気がする』
本人が変わった気がするのなら変わったのだろう。
『魔力強化も試してみて』
魔力強化も向上の下位スキルだ。
『なんか魔力が増えた気がする』
こっちもなんとなく分かるらしい。
これで試せるスキルは試したはずだ。
「よし! マルル。 今日は遅いし晩ご飯食べたら寝ようか!」
『わかった!』
しばらくして晩ご飯が来たので、今回も2人で食べた。
食べ終わったら今日も2人、いや1人と1匹は仲良く眠った。




