3話 スライムとの生活
ギルドへ戻ると視線が集まる。どうして…あ、スライムだ。そりゃスライム抱えてたら注目されるよね。すると受付の人が走ってきた。
「すみません、そちらのスライムはテイムモンスターですか?」
多分、テイムしているかということだろう。
「はい、さっき自分がテイムしました。 連れてても大丈夫ですよね?」
「テイム登録すれば問題ありません。 登録しますか? 登録料は銀貨1枚になりますが」
「はい! します」
金貨1枚で大銀貨10枚、大銀貨1枚で銀貨10枚、銀貨1枚で大銅貨10枚、大銅貨1枚で銅貨10枚。
ちなみに銅貨1枚で10円ほどの価値。銀貨1枚だと1000円になる。え?円って何かって?どこかの国の通貨らしいよ。
すると周りからがやがやと声が聞こえる。
「あいつスライムを登録するらしいぜ」
「まじかよ、スライムテイムしても何の役にもたたねぇだろ」
「よせよ、テイム自体役に立たないの間違いだろ」
「違いねぇ! ガハハハハ」
そんな声は無視して受付に行く。
「ではまず、そのスライムの鑑定をします」
そう言って鑑定石をスライムに当てる
種族:スライム
名前:なし
スキル:<合体>
「テイム登録には名前が必要です。 スライムに名前を付けてもらえませんか?」
名前か…スライムだからスラ助、スラ太、スラ子。…スライムから拒絶された気がする。
じゃあ見た目からゼリーとかプリンとか、美味しそうな名前だな。…今度はなんか怖がってる気がする。やめておこう。
うーん…丸いしマルルなんてどう?するとスライムが揺れた。オーケーらしい。
「マルルでお願いします」
「ではこちらに登録者名、登録魔物の種族名と付ける固体名をお願いします」
紙に記入してるとスライムがぷるぷる揺れてくる。なんとなくうれしそうだ。
「書きました」
「では最後に魔物の血を1滴なのですが…スライムですから体液ですかね?」
するとマルルの1部が変形し、ビー玉ほどの小さな玉ができた。
「これでいいですか?」
「はい、自分から差し出すなんていいスライムですね」
よく考えてみればスライムには知性はないはずだ。なんで最初の名前を嫌がったりしたのだろう。
「では、契約魔法を使いますので契約師を呼んできます」
契約師とは契約魔法の使い手である。契約魔法は商人同士の契約や馬などのレンタル契約から、国同士の条約まで、様々な約束事に使われる。今回は魔物の主従契約だ。主人を裏切れないようにする。正確には裏切ろうとすると激痛がしたり、死んだりするらしい。
そんなことを考えてると契約師のお爺さんがやってきた。
「今回はスライムの契約か、珍しいな」
「はい、かわいいし、結構頼りになるんです」
「そうかい。 わしは契約するだけだから仲良くなるかは君次第だ。 ”契約”」
すると僕とマルルが光る。マルルは契約できたのがうれしいみたいだ。
「今回は軽い主従契約にしておいた。 ”命令”をすれば必ず言うことを聞く。 あと、痛めつけようと念じれば、痛みを与えられる。 仲良くするんだよ」
「ありがとうございます」
そう言ってお爺さんは戻っていった。すると受付のお姉さんは
「ではこれで契約完了となります。 何かご質問はありますか?」
「ゴブリンを狩って来たのですが、耳を渡せばいいですか?」
「はい、1匹で4枚ですので、3匹で銅貨12となります。 他にご質問は?」
これからマルルはうちのペットだ。しばらく王都に居るなら、スライムが一緒でも良い宿が必要だ。
「魔物と一緒に泊まれる宿ってありますか?」
「冒険者ギルドでは宿の貸し出しも行っております。 そこでは魔物の宿泊も許可しております。 10歳から15歳までは格安となっておりますが、そちらにお泊りになられますか? 食事付きで大銅貨3枚とペット代1枚の4枚です」
「お願いします」
「では、ついて来て下さい」
案内され、部屋に着くとそこはベッドと机が置いてあるだけの簡素な部屋だった。
「こちらになります。 この魔石が鍵となりますので、なくさないようにお願いします。 もうすく晩ご飯の時間ですが、食堂とお部屋どちらで食べます?」
「部屋でお願いします」
「では後ほどお持ちしますので、それまでごゆっくり」
そう言って部屋を出て行った。
「あいつら今頃どうしてるのかな」
イリトとソフィスはスキルがよかったし、今頃訓練受けてたりするのかもな。正直言うと一緒に兵士になりたかったが、このスキルじゃどうしようもない。一応15歳になれば好きなスキルを選べる。距離拡張もあるし、魔法のスキルがあれば強くなれるかもしれない。だけど、そのころ、あの2人はどこまで遠くに行ってしまうのだろう。3つすべて良いスキルなんて滅多に無い。きっと強い兵士たちの訓練を受けてどんどん強くなってくだろう。そこに僕は5年も空けて追いつけるのか?そもそも今スキルを選べても追いつけないのではないか?心配な心がどんどん大きくなる。
するとマルルが飛びついてきた。
「そうか、励ましてくれてるのか。 ありがとな」
するとマルルが揺れた。
「お前も付いてるもんな、きっとなんとかなるよ」
コンコン
「晩ご飯をお持ちしました」
晩ご飯の時間のようだ。マルルを床におろし受け取りに行く
「シチューとパンです。 食器は置いといてもらって結構です。 明日うかがいますので」
料理を受け取り、机に置くと、食事を持ってきてくれた女性がまだ居た。
「どうされました?」
「あの、スライムの食事はいかがいたしましょう? 料金をいただいてるので、なしというのはどうかと思いまして」
マルルを見るとシチューを食べたそうに見ていた。
「具の無いシチューお願いできますか?」
「はい、すぐに持ってまいります」
そう言ってあわただしくシチューを取りに行った。でも注文したもののマルルはどうやって食べるのだろう。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
具なしシチューを受け取ると、マルルが足元をくるくる回ってる。
「危ないから回らないで、シチューこぼれちゃうよ」
そう言うと急に大人しくなり、ベッドの上に上った。ベッドの上に具なしシチューを置いてみるとマルルがその隣にやってくる。
「それじゃあ食べようか。 いただきます」
僕がシチューを食べてもパンを食べても、マルルが食べ始める気配は無い。
「食べないの?」
すると頭の中にイメージが流れてくる。これは…マルルの上にシチューをかけるのか?
「いいのか?」
そう言うとマルルがぷるぷる揺れる。スプーンでマルルのシチューを取り、上からかけるとこぼれるかと思ったが、すぐに表面から吸収してなくなる。
「マルルはどこからでも食べられるのか。 便利だな」
そんなことを言いながら2人で食べる。
食べ終えて、そろそろ寝ようかとベッドに入るとマルルも一緒に入ってきた。
「一緒に寝るのか?」
そう言うといつものように揺れた気がする。
僕はマルルを抱きながら眠りに付いた。