8
「俺も一般高校生してた、元日本人…だ」
ぅよっしゃぁ!!
…って、ん??
お、俺?
「…ちょ、ちょっと待って…お、俺って…」
え、嘘でしょ?やめて、可愛いエルを壊さないで…
「ああ、もともと一人称は俺だから、人前以外だと、こっちの口調に」
「いやーーーー!!!」
ヤダヤダヤダ!
エルの一人称は僕。あざと可愛い天使の男の子なのに!!
「なんで!?エルの姿で俺って言うのやめてくれる!?エルは僕っ子なの!人前だとその口調になるんだったら今はならないで!!私がいるから!!」
ゼーハーゼーハーと、エルに向かって叫ぶ。
エルは呆然としながら、目をパチクリさせ、やがて口を開いた。
「いや、気が抜けてつい…ってかそんな怒ることでもねーだろ」
「はい、ダウト!怒るところでもないでしょ?だ!リピートアフターミー!」
「…なんで言わなきゃいけな」
「リピート!!」
「…怒るところじゃないでしょ」
まぁ若干棒読みだけとエルの可愛さに免じてOK!
とりあえず、
「可愛い!」
満面の笑みで私はそう言った。
エルはというと、呆れた表情で私を見ていた。
…ん?あれ?そういえば…
「…そういえば、前世も男なんですか?」
ふと、私は疑問に思ったことを口にした。
「ん?ああ、そうだけど」
……へぇ。
「私BのLには耐性がある方なので、どうぞ思う存分」
「違うわ!」
「エルはそんな顔でそんな言葉言わない!」
「お前のそのエルラブなところがこえーわ!」
「それ以上その口調で喋り続けるなら、男好きって言いふらしてやるから!」
「だからちげー……違うよー」
ギロリと睨むと、エルはニコッと笑いながら、そう言い直した。
うむ、よし。
「俺……僕の姉貴……姉さんがゲーム会社に勤めてて、それで試験みたいな感じで半ば強引にやらされたんだ、よー」
…ちょっと崩れてるけどまぁエルらしくはギリギリなってるかな…って
「え!?ゲーム会社!?」
ウソ!!
「ってことは…あの、大手の有名会社…?」
私でも1度は入社したいと夢見たあの会社に…
「あね…姉さんも乙女ゲームが好きだったから楽しんで作ってたよ。…まさかそのゲームに転生するとは思わなかったけど…」
渋い顔でエルはそう言う。
「へぇ…じゃあ、この世界の事は詳しいの?」
「いや、別に…?そんなやってたわけじゃないし……てか、一応聞くけど、俺…てか僕っていうかエルのこと好きなの……?」
ふっふっふっ……
「愚問ですね!!エルの事は、日本、いや世界一……宇宙一好きですとも!!愛しているといっても過言ではない!!ですが、誤解しないでいただきたい!私はあなたが好きですが、あなたが好きではありません!…つまり、エルは好きだけど、あなたという人格が好きではありません!というか、私の前でキャラを壊さないでくださいまし!!」
はぁはぁ……
「お前……キャラ壊れてきてるぞ」
「ほっといてくださいまし!!」
「いや、言葉遣い直せよ」
「あなたが直してくださいます!?」
キッと睨んでそう言えば、エルの可愛らしい笑顔を私に向けてきた。
こ、これは、
「かわいすぎる…!!」
「お前…チョロいな」
「うるさい、言葉を直せ!!」
半ば暴言を吐く私に、エルのキャラを壊して、呆れ顔をしている彼。
なんだろう、カオスだ。
「……ってそうじゃなくて、俺、エルのキャラしかしたことないけど……あいつ怖すぎだろ」
……まったく……
「わかってないなぁ……エルの表情ちゃんと見てますか?その目は飾りですか?あの、笑顔が愛らしいエルの顔がヤンデレ時、歪んだ美しい笑顔になるんですよ?ああ全く、エルを最初にプレイしたことを誇りに思って!エルに転生できたことに感謝して!」
ビシッと指をさし、私は言った。
「お前…いや、もういいわ……ってか今何時だ?」
「違う!!今って何時かな?、だ!」
「イマッテナンジカナ」
「私もわからないけど…」
多少棒読みなところをスルーし、私はそう言って…気づいた。
「入学式は?」
「……」
ちょい待てちょい待て…え、本気で今何時だ?入学式は?会場は?
「…あっ、思い出した!俺…ってお前今睨むな!急いでんだぞ!!とりあえず、この学院の地図を姉貴に見せてもらったことがある……ってだから睨むな!行くぞ!」
と、私の腕を引くエル。
「っわ、」
急に引かれたため、よろけてしまうが、何とか持ち直す。…そんな事もおかまいなしにぐいぐいエルは腕を引いているけど。
と、ぐるぐる色んなところを進んでいくと、大きな体育館のようなところの前に来た。
「おお!着いた!」
へぇー、すっごいでかいなぁ!!
画面越しで見るよりはるかに大きい。まぁ、当然だけど。
私の感動もおかまいなしにエルは入り口までどんどん突き進む。
入り口には、先生がいた。
「おはようございます。新入生ですね。名前をお伺いしてもよろしいですか?」
手には名簿のようなものが握られており、新入生に確認しているようだった。
「エル・カトリーヌです」
パッと私の腕を掴んでいた手を離し、笑顔でそう言うエル。
こ、これは猫をかぶってたのか…!!
「私はマリーナ・アディソンです」
とりあえず、私も笑顔でそう言う。
「カトリーヌ君とアディソンさんですね…はい、オッケーです。どうぞお入りください。席は右から順につめてお入りください。クラスは式の終了後、発表されます」
私は、ぎこちなく頷き、エルは笑顔ではい、と答えていた。
そうして、私達は体育館(?)の中へ入っていった。
体育館だと思っていたここは、ホールだそうだ。体育館と言ったらエルに失笑され、嘲笑いながら教えてくれた。
結構よかっ……いや、はい。