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 “君は誰?”


 その言葉は私の頭に再度、ガツンと衝撃を与えた。



「誰……って……わ、たしは……マリーナ、アディソンで……ただの……庶民で、私は……」


 呆然としながら、私はそう言う。頭の痛みは強くなるのに、気にならない。


 私、私は、本当にマリーナ・アディソンなの……?


 そんな疑問さえ私はそうだと答えられない。


「わたし……わたしは……」



「記憶の抹消魔法がかかってるから、思いだすのが難しいんだろうね、でも、その時本来の……いや、《転生してきたもう1人のマリーナ》と君が入れ替わってしまった。だから君に中途半端な抹消魔法がかかり、本来のゲームのストーリーさえも進めなくなっていた。……ごめんね、抹消魔法を消してあげたいんだけど、かけた本人の魔力が強すぎて……というか精霊使いにただの魔法使いは敵わないから、自力で吹き飛ばすしかないんだ」


 申し訳なさそうにそういうエル様を横目にエル様の言葉を反芻していく。


 抹消魔法……? もう1人の私……? ゲーム? ストーリー?


 何を言っているのか、全然分からない。


 私は1人だし、魔法をかけられた覚えもない。ゲームのストーリーなんて不可解なこと言われても私には分からない。


「もし……私に、魔法がかけられているとして、その魔法を吹き飛ばす、なんて、出来るわけ……」


 エル様の言葉でかろうじて分かりそうなところから反論してみると、エル様は即答で


「吹き飛ばせるよ」


と返した。


「魔法ってね、弱い魔法は魔法で相殺出来るけど、かかりやすいんだ。そして、強い魔法は相殺するのは困難でも、自分の精神力とか、気持ちとかそういうので吹き飛ばせることもある。これ習った……ことないね、本で読んだことあるだけだったや。まぁとりあえず吹き飛ばせるんだよ……精神力が馬鹿みたいに強かったらだけど」


 最後の言葉をぼそりと言っていたけど、私には聞こえた。

 残念だが、私の精神力はそんなに強いほうじゃないはずだ、吹き飛ばせるとは思えない。


「そんなの、無理ですよ」


 そう断言するも、エル様は出来るの一点張りだ。


 そんなに言われても具体的にどう吹き飛ばせばいいのか分からないのに、出来るわけがない。


 どうしたものか、と考えていると、だんだん頭の痛みが戻ってきた。


「っうう……」


 顔を歪ませ、頭を抑えるが、痛みが消えることはなく、むしろどんどん強くなっている。


「マリーナ!! 思いだすんだ、君の過去を! 自分自身を!!」


 私を、思いだす……。


 そんなこと言われても分からないものは分からない。


 そう断言しようとした。


 その時、よぎるのは何かの記憶。


 誰かが“制服”を着て、“学校”に行き、“授業”を受け、第好きな“恋人”と楽しくおしゃべりをする。


 そして、恋人の家は尋ねればお姉さんとゲームをする。


 主人公は“マリーナ・アディソン”で、それはヤンデレ乙女ゲームだった。


 お姉さんは“レイン”推しで、よく2人でアニメやゲームについて熱く語っていた。


 恋人は呆れていたが、楽しそうだった。


 そんな幸せな日々に終わりが訪れたのは、唐突だった。







「私……事故で、死亡したんだ。それで……この乙女ゲームの世界に、転生……した……」


 震える声でそう言えば、エル様はニンマリと笑って「上出来」と言った。


 そしてエル様は……といい出そうとしたその時、パリィンと大きな割れる音が周りから聞こえる。


 ハッと見渡せば、ガラスが割れているわけではなく、なにか……この、空間が割れている。


 それは止まることなく、パラパラと崩れており、世界が真っ暗になりそうだ。


「ど、どういう……!?」


 私が困惑しながらそう口に出せば、エル様が答えてくれた。


「マリーナが魔法を吹き飛ばし、全てを思い出したことで、空間にかかっていたまほうも解けたんだ」


「く、空間にかかった魔法!? なんですかそれ!?」


「マリーナを自分のものにするための魔法? みたいな? 僕に聞かれてもかけてないんだからよく知らないよ」


 と当然のように言われる。


 そ、そうか、たしかに。と納得しかけるが、今はそんな場合ではないことを思いだす。


「こ、この状況どうすれば!?」


 そう尋ねるが、エル様はうーんと唸ってとりあえず、と言葉を続ける。


「意識を飛ばしちゃおっか!」


 笑顔でそう言うエル様を見て、そのまま私は意識が飛んでしまった。


 

多分盛り上がってるのでテンションあがって誤字とか脱字があるかと思われます!!!ごめんなさい!!

もしここおかしいだろ!とかあればお知らせいただければ幸いです!!


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